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異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました  作者: かんあずき


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27【サイド】ガルーダ 1

「なんかいつもと違うんだよな。」


討伐隊に参加する聖女を一目見てそう思っていた。

そして、今回の討伐で初めて自分が今まで思わなかったような感情が自分の中にあった。

今までだってずっとその感情はあったはずだった。

それなのに、そうあるものなのだと思っていて、疑問にすら感じなかった。


◇◇◇


「今回も聖女様をお運びする馬車の準備は抜かりないように」

俺は空を見上げて、朝が来るのを待った。

朝が来るのは今日で何日目だろう?

少しずつ、夜が終わり空が明るくなってくるとホッとした。


「やっぱり日は出ている方がいい」

いいのだが、夜になると眠りが深くなったし、朝がやってきたときの空気もおいしかった。

今まで生きてきた中で体験したことがない感覚……

「悪くないな」

自分を奮い立たせるしかない。

今日の討伐が安全なものであればいいが、という不安は正直ある。元々魔獣の多い北部の森林に行くのに、夜が来たことで生態系が崩れてなければいいのだが。


「やっぱり聖女様は馬車じゃないとダメだよな」

「カラドリウス様からの伝統ですからね」

「北までだと、馬の負担も大きいだろう。海も渡らないといけないし、距離も長い。それに空を飛ぶときも安定性が悪い」

俺がため息をつくと、馬の準備をしていた兵士たちが目を丸くした。

「ガルーダ様がそんなことを言うなんて珍しいですね。」

「そうか?」

「ええ、聖女様の希望と安全を第一にと言われてましたから。それだけ今回の討伐は大変なのですが?」

「夜が来て初めての討伐だからな。昼に活動する魔獣は減るかもしれないが、普段遭遇しない魔獣と会う可能性は高い。それだけに、早く着きたいが今日はどこまで行くことができるか?馬では限界がある」


聖女たちに来てもらって、安全性が高くなるならその価値もあるが……


そう思いハッと、俺は今何を思った?と手を口に当てる。

なんで不敬なことを思ったのだろうか?

カラドリウス様の時代から、いつも我々を見守ってきてくださっていたというのに


そう思いながら自分が一瞬でも聖女の才能を疑ってしまったことを恥じながら、自身が代々先祖から継いできたソラリクス様や聖女、そして民を守る役割を忘れるなと心に念じた。


ーーー


「聖女様の準備が整いました」

兵にそう言われて視線を向けると、

「なんか、いつもと様子が違わないか?」

聖女の服がまず地味だ。この間、飛鳥が着ていた時渡りの服のようなグレーの変哲もないワンピース、そしてあれはなんだ?目しか出ていないヴェールを被っているんだが?

「ああ、今回の聖女様、すごく気合が入っていて、まだ出発もしてないのに祈祷を捧げておられるんです。ジズ様から伝言がありまして『カラドリウス様が夢枕に立たれてあのような姿で祈祷をせよ』とお告げがあったそうですよ」

そう兵から言われて、様子が違うことに納得した。

「ああ、それで雰囲気が違うのか。さすがカラドリウス様だな。我々の夜に対しての不安や恐れを見抜いておられたのだな」


聖女様に少しでも疑いを持つなんてとんでもない。

「俺が、聖女様の守りに入るので、先導を頼む」

ガルーダは聖女様のいる横をお守りすると決めた。

今日はかなり急ぎになるから、聖女の不満も高いだろう。

なんとかなだめながら行きたいがどこまで行けるだろうか?


とりあえず北の地に今日中に辿り着かなければいけない。

前回は一時間走ったら30分は休んだな。

接待要員は準備したが、機嫌を損ねずになんとか辿り着きたいものだ。

野営なんてとんでもないしな......


だが、何かおかしい。

聖女のいる馬車のキャビンからは激しい嘔吐の音が聞こえるのに、止めてくれと言ってこない。


もしかして、俺たちの抱えている不安を感じ取って我慢しているのだろうか?


「聖女様、お疲れではありませんか?すみません、強行日程なもので」


そう言って声を何度もかけてみる。

声をかけたところで、自分達に気を回さなかっただろうと言われる結果は一緒だが、外から見ていても馬車のキャビンは上下に激しく揺れて、自分たちと一緒に空中バイクに乗る方が明らかに楽だと思う。

とはいえ、バイクの後ろに座れとは聖女様に言えるわけもないが。

すでにほとんど休憩をせずに進めているのだから、少しペースを落としてもいいかもしれない。


だが、そう思って声をかけようと見ると、聖女が指を合わせて、手を組んでいる。


こんな状況になっても祈りを捧げるなんてーーー


俺は今までにない衝撃を受けた。

聖女を誤解していた。これが聖女なのか。

苦しい時を共に分かち合おうとする清らかな心の表れ。


「ありがたい。みんなの士気も高まります。今日は夜が来て初めての巡回ですからみんなの不安もピークなのです。聖女様のいつになく気合いを感じて身が引き締まる思いです」


俺は感動して、聖女に声をかける。


そして、今日の夜が終わるまでに着けばいいと思っていたのに、まさかの第一祈祷予定地に昼前についてしまった。


気の毒なほどよろよろしている聖女は、飲まず食わずでそのまま祈祷に入る。


おいおい、休まないのかよ!!

なんか今回の聖女様すごくないか??

鬼気迫るってこういうことをいうのか?


俺は目を丸くする。

でも聖女様の動きを止めることなんて出来ないよな。

少しぐらい休めばいいのに...


「すごくハイペースについてしまいました。今日一日走らせる予定にしていたのですが、距離を走りましたので、馬をこの街で変える予定です。」

兵の報告を聞いて、うなずいた。

「馬もよく走ってくれた。正直、もっと聖女様に止められるかと思っていたから、休みをあえて取っていなかったんだが最後まで耐えられて、しかも、すぐ祈祷に入るとは思わなかった」


俺は、あんな聖女が今までいただろうかと首をかしげた。カラドリウス様が枕元に立ったからといって、真面目にやるような人種にはみえなかったのだが...


「今回の聖女様がいつも担当だといいのにね。馬が疲れているだろうと労って撫でておられましたよ」

「は??」


変だな?


なんともいえない疑問が心の中をざわりと掠めるような気持ちになった。

どの聖女も今までは自分たちが馬車を要求しておきながら、馬くさいと言っていたし、馬が糞でもしようものなら怒り狂う聖女もいて、視線を逸らしたり、臭いが行かないように風を起こさせたりして気を遣っていたのに?


更に、聖女が祈り始めると曇っていた空から日差しが差し込み始め、温かさを感じるようになった。

周囲から感嘆の声があがる。


やっぱりおかしい......


普段、これでもかと激しく踊ったり、声を上げる聖女が全く何も言葉を発しなければ、動かない。


「ガルーダ様、相当時間がありますが、明日行く予定だった討伐地域まで行かれますか?馬も替えるのでしっかり走れますが…」

「そうだな。いつもなら二時間ほど討伐したら終わるし、まだ昼の間に終わるな。それなら行くか?」



本来なら明日森で、魔獣を討伐予定だ。

自分の担当は、地面を暴れ回る魔獣が増えすぎないようにコントロールする仕事だ。


「昼の間なら仮に暗闇で活動する魔獣が出ても何とか対応は可能だろう。それに森に変化があるなら、偵察にもなる。その時は、今日は討伐はせずに戻って、再度明日討伐に行き直したらいい」

「わかりました。では準備します。しかし、今回の聖女様、全くお菓子にもジュースにも手をつけられないんです。たくさん余ってしまうな」

「馬車に酔ったみたいだから食欲がないのかもしれないな」


俺がそう言うと納得したように兵は移動準備を始めた。

だが、一方で俺の中でそこまで体調が悪いのに、文句ひとつ言わない聖女を見たことがなく違和感だけが残っていった。


◆◆◆


「いつも以上に森が暗く感じます」

俺はみんなのやや後ろに下がり、兵の動きを見ながら森の変化を感じ取ろうとしていた」

人一倍耳がよく、ソラリクス様の神獣を飼い慣らし、腕が立つ。

「確かに、昼なのに暗いな。何か光を遮るものがあるのか?」

俺は、耳を澄ます。

魔獣がいるのは間違いない。

ただ、方向がどこから来ているのか??


右...は、いない。左...もいない。

木々の間から光が漏れ出ていて、景色もしっかり見えた。


前...は...いる感じはあるが近づいている感じがない。

上か?


「上に何かがいる。羽を持っている魔獣系かもしれない。みんな武器を離すな。道が狭くて入り組んでいるから広いところに出るまでは固まって行動しろ」

「了解です。」

「暗いので、光球は出してもいいですか?」


悩ましい。

まだ昼なので、光に強い魔獣ならむしろ興奮してしまう。

だが、森が暗いんだよな。

光に弱くて、むしろ影を作ろうとしているなら光球を飛ばして追っ払うのも手か?


「一つでいいが、光度が強いものを一発打ち上げてくれ」

「了解」


だが、打ち上げた瞬間、半端ない大量のアンデッドヴェノムバットが出るとは予想もしていなかった。


アンデッドヴェノムバットは空を飛び回る。

自分も空を飛ぶ討伐はもちろん行うが、兵たちは陸を得意とするものが多い。

どちらかというと自分よりは空帝のフェニックスの方が、飛び回りながら焼却するのが得意だし、兵たちは空中戦に長けた兵で構成されていた。


「数が多すぎる。森に入って暗くなればなるほど不利だ。先ほどの入り口まで光を飛ばしながら撤収せよ」

みんな一斉に光球で砲撃しながら、なんとか森の外まで出ようとする。

普通なら、そこでアンデッドヴェノムバットは力尽きるはずだった。

だが、夜を経験して力を蓄えていたのだろうか?

日の光の下でも全く動じず、攻撃してくる。

煙幕や、毒ガス、火、光、雷などありとあらゆる攻撃を展開するが、予想外のアンデッドヴェノムバットの多さに、劣勢になり、兵の統率も乱れる。


「みんな、自分の身を守れ!アンデッドヴェノムバットは凶暴な上に毒を持っている。一通りの攻撃は全て通るはずだ。噛みつかれる前に、攻撃して倒せ!強くはない!」


みんなを鼓舞しながら、どんどん倒していくが、とにかく次から次にどうしてこんなにいたのかというくらい、空が暗闇を作るぐらいのアンデッドヴェノムバットが空を覆い尽くした。


これは......ヤバイ

しまった!聖女様に向かっている!!


俺は距離的に助けられないと、焦る。

だがその時、聖女の周辺に黄金の小さなシールドが、光を大きく放ち発生したのだ。

光ももちろんだが、攻撃が全く効かなくなる。


「あそこなら安全だ!」

目の前に死の危険を感じたからだろう。

兵の数人が助けを求めて持ち場を離れ出すと、一気に他の兵も聖女に向かって助けを求めてしまった。


「持ち場を離れるな!」


その瞬間、俺は兵たちに気を取られ、不覚にもアンデッドヴェノムバットに首筋を食い破られる。


ヤバイ!!

助からないと瞬時に感じる。

自分の血が飛び散るのが見える。

遠ざかる意識の中で、向かってくるものがぼんやり見える。

聖女だ。

ダメだ!逃げてくれ!!


だが、近づくにつれてどこかで聞いた声がする


「ガルーダっ!! あんたたち!何やってるの?逃げて戦いが終わるわけないでしょ!ガルーダ!ガルーダ!!」


兵を怒鳴りつけながら飛び込んでくる。

これは!聖女ではない。飛鳥だ!!

何やってるんだ!飛鳥!

なんで、ここに...


そう思ったがもう意識がない。

アンデッドヴェノムバットは二度目の攻撃に入っていた。

俺は、自分から流れ出る血を感じながら、このまま死ぬのだと思い意識を手放した。





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