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異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました  作者: かんあずき


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21 聖女の祈祷

それから数日後ーー

「飛鳥様、言われていたアイロンなるものをソラリクス様が作ってくださいました。アイロンは火の魔石を使ってくれとのことで、また感想を聞きたいそうです。」


エーテリオンさんが、ソラリクスに頼んでくれたアイロンは比較的早く手元に届いた。

「へえ、ソラリクス...さまも、作れるんですね」


あっぶねえ

思わず心の声の通り、ソラリクスを呼び捨てにしちゃうところだったわ

「ソラリクス様も...って、ソラリクス様以外この世に出回ってないもので作れる方はおられませんよ」

「へっ?あ、ああそうね」


そうか、発明もソラリクス一人しか今はできないのか。

500年眠れなくて、自分が言わないと食堂のシステムひとつ変わらなくて、新しいものも、もたらされない。

しんどい神生だなあ。ソラリクスが作ることが当たり前で、自分は誰にも頼れないなんて......

流石にちょっと同情する。


いや、違うか。

500年前にはシームルグが作っていたと言っていた。

ちゃんと愚痴が言える相手がいて頼れる相手がソラリクスにもいたんだ。

だから、彼女がダイエットしようとしてご飯を食べなければ心配するし、外に出て他の人と交流できないことを心配してぬいぐるみやいろんなものを贈ったのだろう。


だけど、シームルグには可哀想だけど、頼れたから、愚痴が言えたから、同じ価値観で動けたからって恋愛に発展するとは限らないし、発展したとしても更なる刺激を求めてしまうこともあるわよね。


なんとなく、パズルの1ピースがハマったような重なったような気がする。


「まあともかく、これで聖女たちの洗いたてしわまみれの制服を綺麗に出来るわ」

私はウキウキしながら聖女課でアイロンがけを始めたのだった。


ーーー


「あら、飛鳥!あなた、また何か始めたの??」

聖女レッドが目ざとく見つける。

「何よ!何始めたのかしら?」

その声を聞いて、すぐに駆けつけ、レッドにごまをするのが聖女ピンク。

「あら、変な鉄の塊を持ってって!あつっ!もう!熱いなら熱いって言ってくれないと困るじゃないの!!」

アイロンの熱くなり始めた部分を触り大騒ぎする。

「すぐ冷やしたほうがいいですよ!これは、服のしわを伸ばして、服の見た目を綺麗にするものなんです」


知らないととんでもない事故が起きてしまう。

ピンクを連れて急いで水で冷やすが、かなり真っ赤になっている。


「ど、どうしよう!!」

「聖女が救護室に行くことは許されないんだからね。痛い!痛いわ!どうしてくれるの!!」

聖女ピンクが涙目で騒ぐ。

「すいません。お医者さんとか?そういう役割の人はいませんか?」

「何よそれ!私たち聖女が祈りで治すに決まってるでしょ」


レッドとピンクが騒ぎ始める。

ゴミ騒動が終わったら、また洗濯絡みでこんなことに...


でも見るからに指先が赤くぷくりと腫れている。

水疱にならなければいいんだけど、痛そう!!


「もう、何の騒ぎよ?」


聖女レッドとピンクの叫び声と共に再び聖女たちが集まってくる。

「飛鳥が訳のわからない道具を持ち出して、私、それで怪我をさせられたんです!」

ピンクが騒ぐ。


えーっ!見慣れないアイロンを使ってたのは確かにわたし。でも、それを勝手に触ったのはピンクじゃん!


怪我をさせたつもりなんてないわよ......だけど、実際に怪我したのは事実。

どうしよう。まさか医療が発展していないとは思わないじゃないの。

「い、祈ってもらえませんか?私、聖女じゃないから治せないし...」

やってきた聖女たちを思わず涙目で見つめる。

だが......妙な沈黙が起きる。


「飛鳥は聖女課の一員よね。」

「はい!わたしは聖女じゃないけど、みなさんのお役に立てるように頑張るつもりです」


そうよ!悪気はなかったの!

助けてくれるのかしら?

もしかして、すごく高いとか?

給料から差し引かれるのかしら?


「まず、飛鳥!あの原因になったものは何なの?」

「あれは、みなさんの服のシワを熱で伸ばす道具です。制服のシワをなくした方が見た目がいいかなと思って、エーテリオンさんを通じてソラリクス様が作ってくださったんです」


恐る恐る、あれはアイロンというもので危険なものではないことと、ソラリクスとエーテリオンの名前を出してみる。


「ソラリクス様が!!!」

聖女たちが一斉に声を上げる。

ソラリクス効果恐るべし。

これは出して正解だった。

許してもらえるパターンか??


「ちょっとどうするのよ」

「厄介ね、ソラリクス様が作ったもので怪我をしたなんて言えないわよ」

「あんた、なんてもので怪我させたのよ」


えーっ!怪我させたところは変わらんのかい!


「あのね、飛鳥!新人であってもあなたは聖女課の一員だからはっきり言ったほうがいいわね。」


ジズは迷ったように考え込んでいたが、じっとわたしを見る。


「病は気からなの。」

「はい」

「信じるものは救われるのよ」

「はい......ん??」

「つまり、つまりね」

「は……い。まさか……」

「聖女は、癒しを与え、傷を癒し、病を治し、心に安寧をもたらすために祈祷をするわ。でも...祈るだけね」

「え??」

「もちろん、カラドリウス様から受け継がれた薬も作るわ。でも、そうね...なんていうのかしら。即効性がないというか、少なくとも目に見えて治らないわ」


わたしは、それを聞いてしまって良かったのか悩む。

この世界に救護室こそあっても、医者もおらず、効き目のない、いや違った、即効性のない効いたか効いてないかもわからないものをこの世界のものは信じている。


そして、それを行っている聖女たちは、祈祷で病や傷は治らないと知っているのだ。

でも知っているのは聖女だけなの?


「祈りの効き目についてジズさんのように感じている人は多いのでしょうか?」

わたしは恐る恐る聖女たちの反応をみてみる。

すると、聖女たちは顔を見合わせた。

「知っているというより、考えたこともないんじゃないかしら。私たちだって今、火傷を祈りですぐ治せるかと言われるまでは考えたこともなかったわ。祈るけど、治らないなら仕方がないとしか思ったことがないもの。」

「そうね、わたしもだわ。祈ることが仕事だし、それで多少治る人たちもいるわ。だけど、即効性はないの。時間をかけてゆっくり治っていったり、祈ることで楽になったという人たちがいるから祈祷して回るだけよ」


重い空気が聖女課に漂う。

どうしよう。

知ってしまった気持ちもあるし、ピンクの火傷も気になるし。


「とりあえず、明日から祈祷の遠征に行く予定だったの。彼女の代理が必要だわ」

ジズの眉が硬く寄る。

「聖女が体調不良とか怪我とかで休むなんてありえないもの」

聖女ブルーが困ったようにみんなを見回す。

「彼女の担当地区は、よりにもよって魔獣討伐地域の兵のための祈祷ね」

聖女イエローが頭を抱える。

「うわぁ、傷も病も絶えないところじゃないですか」

聖女グリーンも腕を組んで打つ手なしという顔をする。

「ちょっと!わたしこんな目に見えるところを包帯巻いた状態で祈祷なんて無理よ!」

聖女ピンクが怒鳴る。

ジズは目を閉じる。そして息を吸って仕方ないとため息をついた。

「飛鳥!こうなったのはあなたに責任があるんだからね。仕方ないわ!あなたが聖女の役をするしかないの!やり方は教えるわ!演じ切りなさい!!」

「え!えーーっ!わたしが、わたしが聖女ですか??」

あまりの展開に目を見開く。

わたしの顔、シームルグの絵とそっくりなんだよ。

どうするのよ。

しかも聖女なんて何の力もないのにーーー


だが、それ以外、聖女を守る方法はないのだと言われては拒否もできない。


「わかりました。演じます...」

正直に真面目に生きていることだけがわたしの取り柄みたいなものなのに、まるで詐欺の片割れを担いだみたいだわ。

しょぼんとわたしは肩を落とすしかないのだった。




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