20【サイド】太陽神ソラリクス 500年前の聖女誕生
500年前ーー
カラドリウスが起こした変化が二つある。
その一つはシームルグに関係したものだ。
それはまた後に語るとして、もう一つ作り出したものが聖女というものだった。
カラドリウスは時渡りでチキュウからやってきた。
そして、
「わたしは聖女よ。みんながわたしを信じてくれるのならば、私は世界に癒しと治癒と浄化を与える力がある」
そう声高らかに訴えた。
「たしかに時渡りには、世界に変化をもたらす力がある。だが、カラドリウスの言う聖女の力は、シームルグがすでに担っていて変化にはならない。その力があると言うなら、シームルグの元で働いて彼女の手と足となってやってほしい」
そう突っぱねていたが、時渡りの力だろうか?
彼女にまるで洗脳させられたかのように、自分の周りやこの世界の民たちが、彼女のシンパになっていった。
そのうち城の中に、カラドリウスのお気に入りの聖女たちで構成された聖女課を作れと言い始めていった。
「みんながそう言うなら仕方がない。」
わたしが渋々聖女たちの集まりの場を認めていくと今度は要求がエスカレートしていく。
「シームルグ様には大きな屋敷が準備されていますよね。同じ働き、いえ、それ以上の働きをする聖女たちがこのような小さな部屋に押し込められているのはおかしいと思いませんか?」
常に癒しのパワーが必要だと室内に森や海を作れと言い、他のものたちとは違う特別待遇を求めてきた。
周りも聖女の力は絶対だ。ぜひ聖女たちが求める部屋を準備すべきだと言って妄信的になっている。
その頃にはもうわたしとシームルグ以外のものはみんなカラドリウスの言いなりだった。
「聖女たちを世話する使用人は、そうね。身分が低く姿形が醜い可哀想なものたちを徴用してあげたいわ。だって、わたしが使ってあげることで、彼らにも働ける場があることがわかる。そんな人たちも下界でも使ってもらえる場所が出来るでしょ」
そういって、ありとあらゆる場面でこき使い始めたのだ。
タライを準備して、聖女のものは別に洗わせろ。
聖女のものはすぐに着用できるように準備しろ。
聖女は食堂ではなく、室内で食べられるようにしろ。
そんなふうにして聖女たちの身の回りをする使用人が多く聖女課で仕えるようになった。
「聖女は他のものとは違うのだ」
「聖女は特別なのだ」
差別化を図ると、そう周りが認識するスピードが加速していく。
《今回の時渡りはおかしい》
そう思い止めようとする。
だが、時渡りが行動を起こした時、神である自分もその変化は止められない。
いつも自分に向けられていたソラリクスがいうならというその世界の理がまるで鏡のように、今度はカラドリウスがいうことは絶対だと、そうみんなが盲信していくように世界が動かし始めていた。
ーーー
カラドリウスが去って500年、絵に描かれたシームルグにそっくりな時渡りがやってきた。
時渡りに警戒はしていた。
絵のシームルグは500年前のシームルグと顔が違う。
だから、過去のシームルグと時渡りの彼女は関係ないことはわかっていた。
時渡りに良い印象はなかったが、取り立てたスキルはなく時渡りという点がカラドリウスと同じなので聖女課に投げ込んでみた。
すると面白い。
今までの時渡りと彼女は違う。
いまだに500年、カラドリウスの作り上げた世界は続いていたが、爽快なまでに壊し始め、それを本人が全く気づいていない。
しかも、周囲もそれに文句なんていうことはない。おかしいことにやっと気づいたという感じだ。
やっと、カラドリウスが作った歪んだ世界に変化が来た。
更にはシームルグの館が500年ぶりに開かれた。
いつも彼女の呪詛のような自分が浮気をしたと抗いたくなる非難の声があった。
でも、そこに彼女はいつもいない。
だが、同じようにいなくても、今回は懐かしいシームルグの香りとシームルグの力を感じるような空間がそこにはあった。
一方で、かつて私が彼女にプレゼントしたクマのぬいぐるみが床に押し込まれ、見る影もなく汚れ破れているのを見て、時が経ってしまったことを痛感する。
それでも、まだ彼女がそこにいる気持ちになり、そのぬいぐるみに口づけをする。
もう会えない。
でも会いたい。
だがその、見る影もなくシームルグに捨て置かれたぬいぐるみすら飛鳥は復活させようとしてくれるのだ。
彼女はカラドリウスと同じ時渡りだが、違う人だ。
どうかわたしでは変えられないこの世界を変えて欲しい。
わたしはそれを感じ彼女にぬいぐるみを託したのだった。




