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異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました  作者: かんあずき


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11 片付けられない女たち

「聖女様って...もしかして、ううん、もしかしなくても片付けできない女たちなんじゃないの?」


植物園の先には、さらにはまさかの波打つ天然プールが完備されていた。だが、そこでごろっと横になるはずだった椅子、美しく飲むはずだったドリンクの瓶たちがーー


転がっている。


ここでもハエ!

わたしは見慣れ切った風景にくらりと目眩がする。

これは日本の季節が終わった海水浴場状態だわ。


わたしの中の聖女像とのギャップがありすぎて、どうしたものかと思いながら、洗い物、埃まみれの酒瓶、異世界のスナック菓子の袋、使った後のままのストローを仕分けしながら片付ける。


この集団こそ、本当にわたしが必要なんじゃないだろうか。ソラリクスとエーテリオンめ!

おそらくこの惨状を知ってたわね。


聖女軍団が苦手そうな雰囲気の、この場を押し付けて、そそくさと逃げるあのエーテリオンの姿が蘇る。

いい人そうに見えて、絶対エーテリオンも押し付けたでしょ!


「せっかくの植物園の上に、なんで飲み途中のものを投げちゃうんだか?」


ぶつぶつ独り言を言いながら、片付けても、ゴミ拾いだけで半日が過ぎてしまいそうだ。


「ちょっと、新人!早くやらないと、洗濯今日中に片付かないわよ」


早くやれないほどゴミ散らかしているのはあんたたちよ!

くそぉ!

聖女レッドの怒鳴り声が聞こえる。


いや、がまん!ここが、わたしの新しい職場!

そう、下手したら永遠にーー


「はい!ただいま行きます」

私は、心の怒りをぐっと堪えて笑顔で微笑む。

だが、その一方で心のわたしはぶんぶん頭を振った。

嫌だ!こんなところで一生終えたくない。


「ごめんなさいね」

葉っぱの影から、ちらっと覗くおとなしめ聖女。

「いえ、大丈夫ですよ」


いつからいたんだか?

危ない危ない。顔に不満が出るところだったわ。

全く、こんな気の弱そうなおとなしい人ですら、物を片付けられないんだから。


「わたしたち聖女っていって少しだけ浄化したり怪我を治したりできるものな集まりなんだけど、それゆえにチヤホヤされちゃって生まれてこのかた、あなたがやってるようなことをした事がないの」

「へっ?」


やったことがない??


「うん...悪いとは思ってるんだけどね」

葉っぱの裏でモジモジしながら、女子力ゼロで浄化力一人前だけを告白されてもな。

でも、悪いとは思っているけどできないことってあるわよね。

「ちょっとぉ!新人!どこ行ったの!!洗濯!早くしてよ!」


聖女イエローだ。

やばい!そろそろ行かなきゃ!


「みんな洗い物苦手で毎回新品使ってたら、さすがにこれ以上買うのは無理ってエーテリオン様に言われたのよ。すごく溜まってるから先にやった方がいいわ」

あわてて、葉っぱの後ろでおとなしめ聖女が慌てる。

「わかりました。失礼ですが、お名前を伺っても?」

悪い人ではなさそうだから、色々聞いたら教えてくれそうだ。

「私はフリージアよ。分からない事があったら聞いてね」

もじもじしつつも、にっこり微笑むフリージアの周辺にもこっそり聖女たちがいたようだ。

「私もよろしくね。片付けしてもらえて助かっちゃう」

「私もよろしく」

更にその背後や横から、木々に隠れた聖女がいる。

直接私と話したら何か言われるのかもしれない。

だが、ひそかに味方もいそうだ。


「よろしくお願いします。」

こっそり私も笑顔でご挨拶をした。


◇◇◇


「新人がさっさと来ないから、扉が閉まらなくなっちゃったじゃないの!」

聖女ブルーがヒステリックに叫ぶ。


どうやら更衣室だった残骸がそこにある。

汚れた服やタオル、下着がガピガピになって転がって、部屋に入りきらない。

どうやっても、わたしが来ないから扉が閉まらなくなったわけではない。


「洗濯機...本当にないんですよね」


この量は、そんじょそこらの量ではない。

洗濯機もだが、乾燥機も欲しい。


「なによ。洗濯する機械?そんな便利な機械ないわよ!みんなの穢らわしい服と一緒に洗ってもらうか、自分たちで洗うしかないわよ」

「そのみんなの穢らわしい服はどうやって洗ってもらってるんですか」

「洗濯は、若手の兵の水流コントロール訓練に使われるのよ。」

兵が一定の場所に水を溜めたり流したり、水を空に浮かせたり回したりする訓練に、繊細でなおかつ失敗しても被害が少ない洗濯物は練習しやすいらしい。

若い兵に、自分たちの服や下着を洗われるのは嫌という気持ちはわからないでもない。


「城下の一般市民は?」

「魔道具が売ってるらしいけど、大体の一般市民は手洗いじゃないかしら?ソラリクス様のおかげですぐ乾くもの」


電気がないから魔道具か。

おそらく魔力がない普通の人間の私には使えそうにないな。

ええっ!じゃあ、冷蔵庫や電子レンジもないってこと!


「とにかくあなたは新人なんだから、楽を覚えずちゃんと一つのことに取り組んだらどうかしら?新人のくせに魔道具はないかとか、ちょっとその発言どうかと思うわ」


どこかの会社のお局がいいそうな言葉を吐いてるけど、手洗いではどうにならないほどの洗濯物を、こんなに溜め込んだのはあんたたちだからな。

そろそろ、こめかみがピクピク勝手に動き始めた。


「わかりました。洗います。洗いますけどこれだけの量になると干す場所が必要です。それは、どちらで?」

「城の裏の洗い場は聖女以外は誰も使ってないの。自由に使って。服を干すところも大量にあるわ。かつて大聖女カラドリウス様がソラリクス様に頼んで作ってくださったのよ」

「わかりました。」


なんだか、ソラリクスが浮気相手のために作った洗濯場というのが、いらっとくるというか心がもやるというか。

でも、聖女たちからすれば、そんな浮気相手でも伝説の大聖女様なのだろう。


聖女が去ってから再び頭を抱える。

「タオルと服と下着に分別からかしら?どれから洗う?」

洗濯かごでは間に合わない。

わたしは、分別用のごみ袋に洗い物のタオルだけをまず詰め込み、更衣室の部屋の半分を解体させていく。

すると、床に青いボトルが――


「あっこれ、もしかして洗剤!」

途中まで開封しては忘れ去られたと思われる使いかけの洗剤が、ゴミのように洗濯物と共に何個も見つかったのだった。


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