第8話 オーガと博打その3
待たせて悪かったな。さぁ勝負再開と行こうか?」
「威勢だけじゃ勝負は勝てないぜ。お前のチップは残り30枚ってのを忘れんなよ」
オーガはすでに勝ち誇ったような顔をしている。
確かに、これ以上チップは減らせない。
もう1~2回様子を見たかったが、ここが勝負どころだ。
俺は 残りチップ30枚を全て賭けた。
「お前正気か!」
予想外だったのか、オーガが狼狽する。
ルール上は問題無いはずだ。それじゃあ、ダイスを振らせてもらおう
俺はダイスを皿にめがけて投げた。
結果は 2️⃣・1️⃣・7️⃣、合計10。
「ハッ、結局大した数字じゃねえじゃねえか。一発逆転を狙ったみたいだが、どうやら最後まで流れは来なかったみたいだな」
オーガが安堵の溜息を漏らす。
「じゃあ俺も振らせてもらうぜ。無駄だろうが、せいぜい神に祈るんだな」
「待て。確か先行は上乗せできるんだったな」
「確かにそうだが、お前はもう持ち金がねぇじゃねえか」
俺の“相棒”の分がある
そう言って、俺は荷物から アリスの全財産を取り出して上乗せした。
銅貨、銀貨、混ざりものの袋――全部だ。
「おいおい、どういう事だ」
「見たままだ。アリスは非道を続けるあんたに愛想を尽かして、俺に乗るって事だ」
「ふん、どうせ明日にも売られる身だ。どうでも良い。その量だと……おおまけにまけて、金貨3枚分ってとこだな」
じゃあ、俺のチップ30枚とアリスの全財産。合わせて金貨6枚分の勝負ってわけだな。これが最後の勝負だ
「そういう事だ。それじゃあ振らせてもらうぜ――」
オーガがダイスに手を伸ばした瞬間。
待った!
俺は叫んだ。
「どうした?今更“無し”にしてくれって言っても遅いぜ」
そうじゃない。これは最後の大一番だ。皿とダイスを少し“改めさせてもらう”のは構わないな?
「ハッ!好きにしろよ。悪あがきはみっともねぇぜ」
俺は皿とダイスを調べる。
特に怪しい点は無い。
悪いが、あんたの手の平も見せてもらおうか。そのデカい手の中でダイスをすり替えられないとも限らない。もしダイスが出てきたら、イカサマで俺たちの勝ちで文句ねぇな?
オーガは一瞬だけ俺を睨みつけたが――
「ああ、いいぜ。好きなだけ見りゃあいいさ」
余裕の表情。
どういう事だ?
すり替えじゃなかったのか?
俺はオーガの両手を丹念に確かめる。
やはり、何も無い。
「それじゃあ、最後のダイスを振らせてもらうぜ」
オーガはダイスを手に取り、勝ち誇ったように語り始めた。
「お前は、俺がダイスをすり替えたと思ったんだろう?いい線いってたぜ。俺のダイスにいつも8️⃣が入ってるからな」
「だがな――俺はすり替えなんて使っちゃいねぇ」
オーガの目が細くなる。
「言っただろ。“腕一本で”稼いできたってよ。3つ全部は無理でも、1つなら好きな目を出すぐらい、朝飯前だ」
皿の中でダイスが激しく回る。
そのうちの一つの軌道だけが……僅かに違う。
「もう一度言ってやる。お前とじゃ“年季”が違うんだよ」
ダイスが止まった。
皿の中には 5️⃣・5️⃣。
そして――皿の外へ転がった1つのダイスが、床の上でゆっくりと止まり、
8️⃣ の面をこちらに向けていた。




