12話 ブリング国王
なんて大きさだ……。
それに、外の世界とまるで違う。大理石の床、黄金の柱、天井まで届く豪奢な装飾。
そして、壁際をびっしりと囲む衛兵たち。
「宮」と名がつくからには立派だろうとは思っていたが、まさかここまでとは。
これはまるで――
「キョウスケ、さすがに驚いたろ?」
アリスが得意げに笑う。
「これがブリング国王の住む王宮――別名《賭博宮》だよ」
……ちょっと待て。
王宮=賭博宮だと?
「あれ?言ってなかったっけ?ごめんごめん、いつも“賭博宮”って呼び慣れてるから、つい。」
聞いてないぞ。
それに入場するために稼いだ金貨、全部参加料で取られたけど大丈夫か?
俺たち、もう一文無しなんだが。
俺は空っぽの布袋を見せながら言った。
「平気平気。ここでの勝負は全員チップを同じだけ貸し出される。
金のある奴だけが有利になる――そんなつまらないゲーム、王は許さないさ。
もちろん、負けたらその分“借金”になるけどね。」
なるほど。
あくまで“ギャンブルの腕”だけで決まる世界ってわけか。
……ん?
でもアリス、やけに詳しいな。前にも来たことがあるのか?
アリスは視線を逸らし、少し慌てたように言った。
「い、いやいや、そんなことより――ほら! 王様の挨拶が始まるよ!」
……ふうん。
まあ、言いたくないこともあるだろう。
俺は王座の方へ視線を向けた。
まもなく、賭博宮の主――ブリング国王が姿を現す。
重厚な鐘の音が、ホール全体に響き渡った。
その瞬間、衛兵たちが一斉に剣を構え、静寂が訪れる。
天井のステンドグラスを透かして、赤と金の光が王座を照らした。
玉座に現れたのは、一人の男。
年の頃は俺より少し上くらいだろうか。長い金色の髪に宝石の様な赤い目。全身から自信にあふれている。
「諸君、ようこそ我が賭博宮へ。我が名はレオニス・アンギルド。言わずと知れた、ここブリング国の国王である。」
「ここは富と名誉を求める愚者の遊戯場にあらず。
己の理と胆を賭け、真の“運命”を掴み取る者の闘技殿である。」
参加者たちの間に、かすかなざわめきが走る。
「運は天に、策は己に。左手にダイス、右手にチップを持ち」
「さあ、己の才覚を以て示してみよ――この獅子の王座にふさわしき者であるかを。」
王の言葉に、場内の空気がピンと張りつめる。
ギャンブルに人生を賭ける者たちの手に、自然と力がこもる。
もちろん俺の手にも。
一瞬王がこちらを見た気がした。
「賭博宮――今、開帳する!」
「ここで、全てが始まる……。」




