10話 博打の合間に
宿屋に帰ってからも、アリスは上機嫌だった。
「やったな!キョウスケ。さすが私が見込んだ男だ。」
最初は俺を嵌めようとしていたのに、調子が良いな。
「それは、本当に悪いと思ってるんだ。右も左も分からない盆暗だと思ってたからつい…でもキョウスケは凄い。頼りにしてるよ。」
まぁ、恨みっこ無しとは俺も言ったし、賭博宮に行く方法もアリスが居た方が分かりやすいしな。
「そうだろう。これからよろしく頼むよ。」
アリスは笑顔でそう言った。
「キョウスケも今日は疲れただろう。賭博宮に入るには色々準備もあるし、そもそも期間がまだなんだ。しばらくは、この国に慣れるためにもゆっくりしたら良いよ。」
そうだな、確かに異世界に来てからギャンブルばかりだ。とりあえず今日は休ませてもらおう。
「じゃあ私も自分の部屋に戻るよ。」
俺はベッドに横になると、深い眠りについた。
その夜。俺が眠りについた頃、宿屋の裏手の路地では――
二つの影が立っていた。一人は犬の獣人、もう一人は大柄なオーガ。
二人の会話が、夜気に溶けるように低く響く。
「アリス様、大丈夫ですか?」
オーガが犬の獣人に声をかける。
「体格の割にあなたは心配症ですね。私が叩かれたことですか?それともキョウスケのことですか?」
「両方です。いくら芝居と言っても、あのようなことを…」
「あなたには芝居の才能もあったのですね。心強い限りです。頼りにしていますよ。」
「有難きお言葉。しかし、私は反対です。あのような得体の知れない男と一緒に。見たところ、あの男は…普通の人間ではないように思われます」
「コーダ、私にはあなたの様な頼れる家臣はいます。でも、それだけでは駄目なのです。それでは、お姉さまやお父様に勝ってこの国を手に入れることは出来ない。私に必要なのは、キョウスケの様な人間なのです。」
「アリス様がそこまでおっしゃるなら、このコーダは何も申しません。しかし努々油断なされますな。」
「分かっています。でも私の演技もなかなかのものでしょう?」
その笑顔は夜の闇に溶けていった。




