ep.3 - 導かれし家路 -
国道であの手紙を拾ってから普通の生活を送るが、あの非日常的な感覚はずっと忘れられない。
そして、あれから1週間後…。
手土産に地元で有名なプリンを持参し書かれていた住所に向かう。
「元気かな?私の事覚えてるかな?」と会える嬉しさと一抹の不安。
私の推測だが多分…男の子は家で何かあったのだろう。
虐待…か何かはわからない。
けど、家には帰りたくない理由があった。
本当に助けて良かったのか…。
そうこう考えてる間に住所の場所に着いた。
入り口?には石の柱が2本立っていてその周りを緑の垣根が何処までも続いている。
柱と柱の間を通り砂利の直線を進むと右側に家らしき物が見えてきた。
表札には「小林」と名字が書かれてる。
伝統的な日本家屋だ。
瓦屋根や出桁造りが古風な印象。
二階建てで正面には大きな掃き出し窓がある。
呼び鈴を押したが壊れているのか、反応がない。
申し訳ないが恐る恐る窓を覗く、誰も見当たらず生活感がない。
広い畳の室内には缶チューハイやビールの空き缶が散乱し、真ん中に低い机がある。
子供の物が何も無い。
家を間違えたのではないかと不安になる。
勇気を出し大きな声で「ごめんください!」と2度ほど叫んだ。
反応は無い…あれは、あの手紙は見当違いだったのか…。
そもそも落ちていた手紙だし…。
それとも…まさか…虐待している父親に事情がバレて更に酷い事をされたのでは?!
そしてまた逃げてるのでは?!
私は警察官に引き渡して良かったの?
他にできることはあったのでは?
…と色んな思いがグルグルと頭を巡っていると、道の奥の方から女性が歩いてきた。
顔の整った女性、多分40代くらい。
髪型は肩より少し長くサラサラとした茶色のストレート。
服装は細身のデニムに、デコルテが広めに開いたデザインのトップス、足元はデザイン性のあるスニーカー。
自分のことを良く分かっているんだろう。
とても似合っている。
ジャッジャッと砂利の上をモデルさんの様に歩きながら笑顔で「こんにちは~」と甘い声を出しながらこちらに近づいてくる。
「は、はじめまして!
先日国道で男の子を助けた…」
と話している最中に
「はいはーい、こっちこっちー!」と
食い気味に私の言葉は遮られ、彼女は踵を返し来た道を戻る。
「えっ?あ、はい!」
焦りながらも慌てて私はついて行った。
その道を進むと更に高い木が増えてきた。
周りを見回すと、さっきの家があった場所から更に奥に左に曲がる道がある。
入り口からだととても見えにくい。
私よりも前を歩く女性の方が足が長いからか早くて中々追いつけない。
靴に小石が入ったが気にしてる余裕はなかった。
女性の後ろを歩いているからかフワッと風乗ってかすかに甘い香水の匂いがしてくる。
「う、うわぁ~!!ここお家ですか!?」
曲がった先には大きなツリーハウス。
まるで映画の中の景色みたい…!
ひんやりとした朝の空気が頬を撫で、土と湿った葉の深い森の匂いが漂う。
生まれて初めて見る素敵な家に興奮が止まらない。
大きな複数の木の下から階段が螺旋状に続き、少し上のログハウスの様な家に繋がっている
女性は返事はせず嬉しそうにニコリと笑うと「上へどうぞ~!」と階段へ案内し、先に女性が登り私が後に続いた。
【 ep.3 end】
※この物語は作者の想像に基づいており、登場する設定や人物はすべて架空のものです。現実の世界とは切り離してお楽しみください。