ep.2 - 導かれた再会 -
あれから三日後。
仕事が休みだったので、私は同じ道を歩いて通っていた。
あの日とは打って変わって六月らしい曇り空。
そして、いつ雨が降ってもおかしくない生ぬるい風が
頬を撫でていく。
あの日の男の子の顔を思い出しながら歩く。
田舎らしい国道沿いに並ぶ飲食店の前を歩き、
もうすぐあの子が立っていた場所…と思った時、
歩道の脇に座っていた初老のまるでホームレスのような
恰好の男性がいた。
怖いのであまり関わりたくはない、だが彼は何故か
じーっとどこかを見つめている。
普段なら絶対に話しかけたり、関わったりしないはずの
私が何故か口を開き話しかけていた。
「そこに何か見えるんですか?」
そう聞くと男性は自販機とリサイクルボックスを指さす。
腕を上げた瞬間、男性の少し泥の付いた上着のポケットに、
古びたミニカーが入っているのが見えた。
塗装は剝げ落ちていたが、幼い子供が大切にしていたような
愛着を感じさせた。
そして、彼の眼は感情を読み取れないほどに虚ろで、
しかし何かを強く訴えかけるように、私と指の先を
交互に見やった。
何かはわからない、だけど胸がザワザワする。
見なきゃいけない気がする。
恐る恐る自販機に近づき、辺りを見回すと自販機と
リサイクルボックスの隙間に何か紙のような物が見える。
一般的な薄茶色の封筒だ。
ゴクリを固唾を飲む、喉がカラカラだ。
普段なら自分で落としたもの意外、絶対に落ちているものを拾うなんて事は
気持ちが悪くてできない。
ましてやごみ箱の脇だなんて…。
しかし、何故か気になって仕方がない。
ゆっくりと親指と人差し指でつまみながら封筒を持ち上げた。
特に糊付けもされていない封筒の中身を取り出す。
普通の白い便せんに
「あの時の助けてくれた女性の方、ありがとうございました。
お礼がしたいので是非お越しください。
栄ヶ浜市沖浦1-2-3 小林」と書かれている。
市内にあるかなり山奥のほう、用事がなければ行かないような場所だ。
直感であの男の子の事だと思った。
無事に帰れたんだ!本当に良かった…!
と、胸を撫でおろす…が、大人の綺麗な字。
親御さんが書かれたのだろうか…。
あの時の男の子の恐怖を感じたような顔を思い出すと
また不安になってきた。
しかし、こうして世話になった人間に対して感謝の
手紙を書くような人だ、多分常識ある普通の親御さんなんだろう。
大丈夫…きっと大丈夫…!
とにかく、行ってみよう。
会いに行ってみよう!
そう思い後ろを振り向くともう先ほどの初老の男性はいなかった。
【 ep.2 完 】
※この物語は作者の想像に基づいており、登場する設定や人物はすべて架空のものです。現実の世界とは切り離してお楽しみください。