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パーディー会場につくと、かなりの人数でごった返していた。それも無理はない。普通の貴族の婚約発表パーティーであれば、同じ派閥の貴族しか呼ばないものだが、今日の主役の片方が、王族のオクトール様。国中の貴族が今日、この場にいると言っても過言ではない。
わたしたちがパーティー会場に入場すると、一気に注目の的となる。
しかし、急に全員から話しかけられたりはしない。今日は婚約発表のパーティーで、結婚式の様に格式ばったものではないとはいえ、王族もこの場にいるのに、我先に、と話しかけてくる貴族がいるわけがない。
いるわけが――。
「ごきげんよう、ベルメ様」
ふん、と勝ち誇ったような表情で話しかけてくるのは、『シックス・パレット』のヒロインの一人、ハルシア。典型的な、ツンデレキャラである。元気にアホ毛とツインテールが彼女の動きに合わせて踊っている。
「馬鹿ハルシア……!」
その後ろであたふたしているのは、もう一人のヒロイン、マリローネ。ボーイッシュキャラで、ベリーショートが可愛い子だが、今日は流石にドレスを着ている。彼女のイメージカラーであるオレンジ色のドレスだ。
確かに彼女たちは第一王子の妃となる令嬢だが、せめてアインアルド王子が話しかけてくるまで待てなかったのかなーと思う。まあ、彼女が一番に話しかけたところで、特別罰則があるわけじゃないんだけども。そのあたりは緩い世界だから。
「ごきげんよう、ハルシア」
わたしは誰から話しかけられようと気にしていない、という雰囲気を作って、彼女に笑いかける。実際、わたしは誰から話しかけられたって困らないし、気にしないから。
ハルシアとマリローネの少し後ろに、アインアルド王子がいた。ヒロインが勢ぞろいしていて、アインアルド王子を中心に、かなりカラフルなことになっている。流石、タイトルに『パレット』とつくゲームと似通っているだけある。
「今日は皆様方にも来ていただき、光栄ですわ」
わたしが言うと、アインアルド王子は「弟の婚約祝いだ。兄である俺が出席しないわけがないだろう?」と、こちらをみて笑った。笑った、というか、にやにやしている、というか。ゲームの主人公なだけあって、顔の造形は悪くないのに、表情のせいで全て台無しだ。
「兄上のおかげで結ばれた縁ですから。感謝してもしきれません」
オクトール様の言葉を聞いて、アインアルド王子は一瞬だけ、つまらなそうな表情を見せた。多分、彼的には、わたしたちが納得して婚約したわけではない、という空気を出しているところを見たかったのだろう。
アインアルド王子も、ヒロインたちも、わたしたちを小馬鹿にして見てくるような、一方では可哀想なものを見るような、そんな目で見てきた。その視線に多少の差があるのは、性格の違いからだろうが、一夫一妻であるわたしたちを見て、いい感情を持っていないのはそろって同じようだ。
自分たちの愛するアインアルドに捨てられてざまあみろ、と言いたげだったり、一人の妻しか娶れない甲斐性なしと結婚なんて可哀想とばかりに同情的だったり、その表情は様々である。
――ただ一人、ナノハを除いては。




