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前世で理系から文系へと逃げたようにはならない、と決めたからにはもう悩むことはない。
そう思っていたのだが――。
「なんだ、あの時、話についていけてなかったのか?」
――そんなオクトール様の、心底不思議そうな表情で言われた言葉には、流石に驚いて、持っていたティーカップをひっくり返しそうになった。
体調が回復して、予定をすり合わせて、夜会後初めての勉強会。先に前回の、おルゴンド家でのパーティーの反省もしてしまおう、とお茶を飲んで会話をしていたのだが、まさかそんなことを言われるとは全く思ってもみなかった。
「魔法道具一色の会話で君が面白いと思うだろう話を、一切していなかったことは自覚していたが……」
自分ばかりが楽しんでいた、という発言は、別にわたしが会話についていけてなかった、というわけではなく、話題のチョイスの話だったようだ。
「ロルクもノルテンブデン氏も、おそらく、君が理解していなかったことに気が付いていないと思うが」
「……本当に?」
わたしが聞くと、「それはこちらの言葉だ。本当に分かっていなかったのか?」と返されてしまった。オクトール様の様子は、わたしを励ますための嘘やお世辞を言っているようには到底見えない。
――本当に、ちゃんと会話ができていたんだ。
わたしは心の底から安堵した。よかった。勉強してもなんの成果も出せなかったと勝手に落ち込んでいたけれど、少なくとも自分が思っていた以上の結果はあったようだ。
すごく、報われた気がする。
「……むしろ、僕の方が駄目だったんじゃないか? 帰りに君は随分と疲れていた様子だったし、僕が気が付かないところでかなりフォローさせていたんじゃないのか」
「それは……」
確かに疲れていたけれど、あれは主に拗ねていただけである。勉強したのに思ったようにできなかった、と、子供のように。
すごく言いにくいのだが、オクトール様が真剣な様子で「遠慮せずに改善点を言ってくれ」と言うものだから、言わないわけにはいかない。
「オクトール様は完璧でしたわ。わたしのフォローがいらないくらい。帰りの馬車で大人しかったのは……その、恥ずかしい話、拗ねていただけなのです」
「拗ねていた?」
「……ちゃんと話についていけていないと思っていたんですの」
わたしが言いにくそうに、オクトール様から目線をそらして言えば、「ふはっ」と笑い声が聞こえてくる。
反射でオクトール様の方を見れば、珍しく、大笑いをしていた。




