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「君にはもう知られているから隠さないが、僕の母親は貴族でも王族でもない。……だからこそ、他人から認められる、確固たる何かが欲しかったんだ」
眼鏡のブリッジを押し上げながら、オクトール様は言う。
認められる何か。それが、魔法道具というわけか。
彼の努力は実を結び、確かに、魔法道具という分野でオクトール様の名前を見ないことは絶対にない。専門的な、一般人は使わないようなものから、平民でも愛用する日常的なものまで、幅広い魔法道具を開発している。
でも、本当に嫌いだったら、ここまではとてもじゃないけどできないと思う。……現に、わたしは全ての魔法道具の知識を身に着けるのを諦めるつもりでいるし。自分で魔法道具の開発なんて、たった一つでさえ無理だと断言できる。既存の魔法道具の改造にすらたどり着けないことだろう。
「……変じゃないか?」
「え? 何がでしょうか」
「他人に認められるための手段を好きになってしまうなんて」
どこが変なんだろう? 純粋に、魔法に憧れ、魔法道具が好きだから、魔法道具の開発に手を出したわけじゃないことに、罪悪感とか、後ろめたさみたいなものを感じている……ということか?
でも――……。
「変じゃありませんわよ」
わたしはきっぱりと言い切る。
「確かに、最初は他人に認められるものなら何でもよくて、魔法道具の開発じゃなくても問題なかったのかもしれません。……でも、不純な動機で始めたものでも、好きになることはなんらおかしくないですわ」
というか、魔法道具の開発って、上手くいけば凄いお金になるのだ。一発当てられるだけで一生食うに困らない、と言われる世界。もちろん、物によっては開発しつづけないといけない場合もあるが。
そんな夢のある仕事なので、給料目当てで魔法道具の開発や改造に関わる仕事を選ぶ人が多いと聞いている。
皆が皆、純粋に魔法道具のことだけを考えて魔法道具に関わっているわけじゃない。
むしろ、オクトール様の方がよっぽど純粋に楽しんで魔法道具の開発をしているように思う。
「そう――かな」
わたしの説明に、それでも少しばかり納得がいかない表情が消えないオクトール様。
わたしは「仕方ありませんわねえ」と息をはいた。
「文句を言う方がいらしたら、わたくしに教えてくださいませ。わたくしの方が言い負かしてやりますわ」
こんなことで何か言ってくるような奴はいないと思うが。ましてや今年新発売の魔法道具の九割がオクトール様原案のもの。誰も文句なんぞ言えるわけがない。
わたしがそう思いながらオクトール様に向かって言うと、彼はようやく、納得したように口角を緩めたのだった。




