#04 青き悪魔
「見つけたぞ」
「ええ、見つけたわね」
ボニーとクライドは顔を見合わせて、にやりと笑った。起伏の少ない魔界だが、山もあれば谷もある。谷底を悪魔の群れが歩いていた。
ボニーとクライドは丘の上で悪魔の群れを舌なめずりしながら見つめていた。
魔界に湧いて出た二人は、生れ落ちると直ぐに周囲の悪魔を喰らい始めた。喰らって、喰らって、喰らい続けている。悪魔は悪魔を喰らえば喰らうほど強くなる。ボニーとクライドは魔界で頂点を目指して悪魔を喰らい続けているのだ。
悪魔の群れの中心に、ライムとミリがいた。
「雑魚どもがたんまりといやがる」
「うふ。あいつらも一緒に喰らってやりましょう」
「当然だ。一匹たりとも逃さないぞ」
ボニーが谷へ駆け下りようとした瞬間、「待て!」とクライドが止めた。
悪魔の群れの行く手を遮るように、青い制服で統一された悪魔の軍団が現れた。どこから手に入れたのか、手には武器らしきものを持っている。
「全て生け捕りにしろ! ハイタウンに連れて行け。エスカル様に献上するのだ」
帽子を被った、青い軍団のトップらしき悪魔が怒鳴った。
エスカル? 何者だ? こいつら、エスカルの手下のようだ。青き悪魔たちは縄のようで鞭のようなもので、悪魔たちを捕縛して行った。檻のついた車のようなものを持っていて、そこに捕縛した悪魔たちを収容して行く。
人の形をしているが、悪魔に実体などない。一種のエネルギー体なのだ。縄や檻など、すり抜けてしまえるはずなのに、次々に捕まって檻に入れられて行く。
能力だ。恐らくエスカルという悪魔が持っている能力なのだ。その能力により作り出された特別な縄であり、檻であるのだ。
「あいつ、大丈夫?」ボニーが聞く。
「ここで喰らわれるようなら、それまでだ。俺たちが相手をするレベルじゃないってことだ。雑魚を喰らっても、腹の足しにならない。俺は能力が欲しい」
悪魔は悪魔を喰らうことでしか、能力を高められない。最も能力が上がるのは、人間世界にいる人の魂なのだが、そこにたどり着くまでに、悪魔を喰らい続けるしかないのだ。それも、より上等な強い悪魔を。
ボニーとクライドが見守る中、青き悪魔たちはライムとミリに目を付けた。
青き悪魔が鞭をしならせる。鞭がミリを庇ったライムの足首にからみついた。青き悪魔がずるずるとライムを引きずった。檻に入れようとしていた。
だが、次の瞬間、青き悪魔の動きが止まった。
「へえ~変わった武器だね。武器を使う悪魔がいるんだ」と言って、ライムが足に絡まった鞭をほどいて立ち上がる。
ライムの能力は一度、受けた能力をそっくりそのままコピーしてしまえることだ。一度、鞭を受けると、鞭を操ることができるようになる。
その間、青き悪魔は固まったまま動けなかった。これはフリーズから得た相手の動きを止める能力だ。
「ねえ、ハイタウンって何のこと?」とライムが青き悪魔に尋ねる。
「ハイタウンは・・・エスカル様が・・・つくった・・・街だ」
「魔界に街がある?」
「そうだ」
「そこに行ってみたい」とライムが言った時、いつの間にか隣に来ていたミリが、がぶりと青き悪魔を飲み込んでしまった。
「あっ!」とライムが声を上げた時には遅かった。青き悪魔はミリに喰らわれてしまった。
「ごめんなさい。何だか美味しそうに見えたから」とミリが申し訳なさそうに言う。
「しょうがないな。まだ残っているから」とライムは残りの青き悪魔たちに目を向けると、隊長らしき帽子を被った悪魔が「退け! こいつらに構うな」と怒鳴った。
青き悪魔軍団は檻を引いて逃げ去った。
一部始終を丘の上から監視したボニーが言った。「街があるみたいね」
「先回りしよう。乗れ!」
ボニーがクライドの背中に飛び乗る。
「喰らいがいのありそうなやつね」
「あの能力が欲しい」ライムの相手の動きを止める能力だ。
「女は私のものよ」
「ふふ。街へ急ぐぞ」
クライドが猛スピードで駆け出した。