表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれの悪魔~ライム・ザ・デビル  作者: 西季幽司
アサシン・バトムの章
29/29

#28 泣けなくても悲しい

 エルジェーベトを喰らうと、ヴァンサンはライムに「じゃあな」と手を振ると窓から飛び出して行った。

「あ~行っちゃった。久しぶりだったのに、ゆっくり話も出来なかった」

 後にはライムと床にめり込んだバトムが残された。ヴァンサンに踏みつぶされて、ぺっちゃんこだ。いくら悪魔でも、ここから復活するのは大変だ。

 動けなくなった悪魔は喰らわれてしまう。それが悪魔の定めだ。

「ひ・・・姫様は・・・」

「ヴァンサンが喰っちゃったよ」

「ああ~!」

 バトムが床にめり込んだまま悲鳴を上げた。

「何故、あんな女に仕えていたの?」とライムが聞くと、バトムは「はて、何故でしょう?」と不思議そうな顔をした。

「分からないの?」

「分かりません。あの方の世話をする為に、生まれて来たのだと思っていました」

「ふ~ん。そうか。訳も分からずに、あの女に仕えていたんだね」

「助けてもらえませんか?」

「君はカイアムが僕に差し向けた刺客だろう」

「はい。あの方から力をもらいました。あなたを喰らうことを条件に」

「だったら、僕は喰らわなければならない」

「そんな・・・」

「さあ、終わりにしよう」

 そう言うと、ライムが大口を開けて、ぺろりとバトムを喰らった。



 チェイテ城を出たヴァンサンは、セイレンに追いついた。

「ねえ。ボニーは何処にいったの?」とセイレンが聞く。

「あれは、喰らわれた」

「もういないの?」

「そうだ。悪魔は涙を流さないものだ」

「泣けなくても悲しい」

「そうか・・・」

「寂しいね」

「俺もだ」

「ねえ。ヴァンサン」

「何だ?」

「私を一人にしないでね」

「ここは魔界だ。約束はできない」

「それでも約束して」

「ふむ・・・」とヴァンサンは考え込んだ後、「分かった約束する。お前を一人にはしない」

「ありがとう」とセイレンがヴァンサンに抱き着く。

「止せ! 力の加減を間違えると、お前など、一瞬でひねりつぶしてしまう」

「それでも良い」

「止めろ!」

 二人がじゃれ合うように歩いて行く。

 その様子を上空からレンドが見ていた。



「ライム。無事だったんだね」

 クスコがライムに駆け寄って来た。

「ゴメンね。心配かけちゃったかな」

「心配したよ~ミリ、まだ目を覚まさない。ライムを復活させる為に、力を使い過ぎちゃったみたい」

 ミリは草むらに埋もれるようにして横たわっていた。

「そう。僕の為に・・・」

 ライムはそっと手を伸ばしかけたが、手を止めた。ミリに触れない。触れることができない。もし触れると、ミリは浄化してしまう。

「ライムが死んでいた間、ミリがライムの頭を抱いていたんだぜ。でも、ミリは浄化しなかった」

「本当⁉」

「本当さ。ライム、初めて誰かに触られたんじゃない?」

「うん。そうだよ」

「ミリで良かったね」

「ミリで良かった」

 ライムは正直だ。

「ミリ、ライムにチューをしたよ」

「チュー? チューって何?」

「口づけだよ。恋人同士が口と口をくっつけ合うんだ」

「恋人同士って?」

「好きなやつのことだよ。ライムにはいないの? 好きなやつ」

「クスコにミリ」

「僕はダメだよ~そもそも人の悪魔じゃないからね」

「じゃあ、ミリ」

「うん。ライムの恋人はミリだね」

「僕の恋人はミリだ」

「ねえ、ライム。ミリ、何時、目を覚ますんだろう?」

「何時だろうね。でも、ミリが目を覚ますまで、ここにいよう」

「何処にも行けないね」

 ライムとクスコは草むらに腰を降ろした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ