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落ちこぼれの悪魔~ライム・ザ・デビル  作者: 西季幽司
アサシン・バトムの章
27/29

#26 復活

「あらら、行っちゃったよ」とクスコが言う。

「そうね」ヴァンサンも気になったが、やはりライムだ。毒イチゴを食べたライムは死んでしまったのか。

「ライム、死んじゃったの」

「私が死なせない。悪魔はね。喰らわれない限り、殺すことは出来ない」

 ミリがライムの傍らに腰を降ろした。そして、ライムの頭を抱えた。

「ライム。触っても大丈夫だね」

 そう。ライムに触れると悪魔は浄化してしまう。そういう意味では、浄化もまた悪魔を倒す、ひとつの方法だ。

「だから、私の能力を最大限、使うことが出来る」

 ミリが持つ能力、それはヒーリング能力だ。傷ついたものを、触るだけで癒してしまう。

「ライム。助かるの?」

「私の命を削ってでも、ライムを蘇らせてみせる」

 そう言うと、ミリはライムの唇に自らの唇を重ねた。

「ほえ~」とクスコが声を上げる。

 ミリの口元が明るくなる。虹色の光がミリからライムへと流れ込んでいるようだった。

 二人は暫く、口づけをしていたが、やがて、口を離すと、「ほうっ」とミリがため息をついてその場に崩れ落ちた。

「ミリ、ミリ。大丈夫?」

「心配ない。力を使い過ぎた。ちょっと疲れただけ」

「ライムは?」

「大丈夫よ。毒なんかで、ライムが死ぬ訳がない。でも、放っておくと、目覚めないかもしれない。魔界で眠ったままでいると、直ぐに喰らわれてしまう。今のライムなら、喰らうことができる」

「ライムは目覚めるの?」

「うん。ライムが目を覚ますのを待ちましょう」

 そう言うと、ミリはライムの頭を抱えたまま崩れ落ちた。

「ミリ、ミリ、どうしたの?」

 クスコがミリに駆け寄る。

「うう~ん」と微かにライムがうめき声を上げた。

 ミリが言う通り、ライムが目覚めるかもしれない。

「ああっ!大変だ」

 クスコはミリの腕を引っ張って、ライムから引き離した。ライムが目覚めると、触れるもの、全てを浄化してしまう。ミリが浄化されてしまう。

「待って、ライム。もう少し、もう少しだけ眠っていて」

 クスコが懸命にミリを引っ張る。ずるずるとミリの体が動く。だが、まだ体の一部がライムに触れている。

「うむむむむ・・・」とライムが目覚め始めた。

「う~ん。う~ん」

 クスコがミリの腕を引っ張る。

「ぷはあ~!」とライムが息を吐いた。クスコがミリを引きはがすのと同時だった。

 隣で重なり合ったまま倒れているクスコとミリを見て、「どうしたの?」とライムが尋ねた。

「ライム~呑気だね~」

 クスコが嫌味を言う。

「何があったの?」とライムが聞くので、クスコが説明した。

 ライムが毒イチゴを食べさせられ、ミリとクスコはバトムが操る樹木でがんじがらめになってしまったこと。そして、助けに来たボニーをエルジェーベトが喰らってしまったこと。ミリはライムを助けようと、精力を使い果たし、気を失ってしまったことを。

「そう・・・」

 日頃、能天気なライムが珍しく深刻そうな顔をした。ボニーが喰らわれてしまったことを気にしているようだ。

「あの女、随分、しつこく僕らを付け回していたけど、最後は身代わりになって喰らわれてしまった」

 クスコが言うと、「さあ。ボニーの敵討ちだ」とライムが立ち上がった。


――ライム、怒っているみたい。


 何時もへらへらしているライムが珍しく真剣な表情だ。

「クスコ。ミリを見ていて」

「でも・・・」

 ライムの活躍を見逃したくなかった。ライムと一緒に戦いたかった。

 ライムが走り始めた。

 早い。早い。クライドの能力だ。ライムは猛スピードで走ることが出来る。土煙を残して、あっという間にライムの姿が見えなくなった。

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