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落ちこぼれの悪魔~ライム・ザ・デビル  作者: 西季幽司
アサシン・バトムの章
26/29

#25 援軍

 ライトニングソードで雷を落とし、下僕たちの動きを止めることが出来ても、そこで魂を喰らわないと、数を減らすことが出来ない。

 とにかく数が多い。いくら動きを止めても、次の敵を感電させている間に、復活してしまう。


――破魔弓があれば。


 破魔弓であれば、一矢で浄化させることが出来る。そう数を減らすことが出来るのだ。

 ドラゴンとなったクスコも、そろそろ限界のようだ。

「ミリ~ごめん~」

 クスコはするすると元の狐の姿に戻ってしまった。

「あなたはライムの傍にいて!」と叫んだが、ミリの体力も限界を迎えようとしていた。

 迫りくる下僕を蹴とばし、ライトニングソードで雷を食らわせる。下僕はひっくり返って、気を失ったように見えるが、暫く経つと、ゾンビのように蘇って来る。


――きりが無い。このままでは、またやつらの虜になってしまう・・・


 下僕がミリの蹴りを交わして、しがみついて来た。

「くそっ! この!」

 ミリは必死に抵抗するが、次から次へと下僕が覆いかぶさって来た。


――ああ~ライム。ダメだった・・・


 ミリの意識が遠くなる。

 その瞬間、軽くなった。

「ひい~!」

 ミリに殺到していた下僕たちが逃げ始めた。

 その向こうには、剣を揮う悪魔がいた。

「お前は!」

 レンドだった。ライムと同時に生れ落ちた悪魔、カイアムの分身にして、カイアムの子供。他者に喰らわれると、内からその悪魔を崩壊させることが出来る能力を持った喰らわれることのない悪魔、レンドだ。

「こんなところで、下僕にやられていてどうする?」

 レンドが剣を一閃すると、「ああ~」と悲鳴を上げて下僕が霧のようになって浄化して行く。エスカルがつくりだした最高傑作、斬魔剣クレイモアだ。ライトニングソードとは違う。究極の対悪魔用武器だ。

 ひょいひょいと移動しながら、レンドが剣を揮う。その都度、「ぎゃあ~!」と下僕が悲鳴を上げながら霧が晴れるように消えて行った。

「ふん。この剣、威力が凄すぎて、喰らうことが出来ないのが難点だな」とレンドが呟く。そして、「さて、あとはやつに任せることにするか」と言うと、ふわりと宙に浮いた。

 そして、「ミリよ。使命を忘れるな」と言い残すと、いずことなく飛び去って行った。

 レンドの姿が小さくなる。そして、レンドの後を追うように駆けて行く少女の後ろ姿が微かに見えた。

「やつ?」

 ミリが首を巡らす。

 やつの正体は直ぐに分かった。

 土煙を上げながら巨大な悪魔が近づいてくる。もの凄いスピードで走って来るのだ。


――あれは・・・ヴァンサン!


 ヴァンサンだ。筋肉の塊のような狼男が、その姿を現した。

「ひえっ!」と下僕が逃げ出した。

 だが、ヴァンサンは「ガウッ!」と吠えると、逃げる下僕を捕まえると、両手で引きちぎった。そして、下僕たちを追い回すと、巨大な顎でかみ砕き、丸のみにして行った。

 地獄絵図だった。

「ミリ、ミリ、ボニーはどうした? ライムを追って来たはずだ。ボニーはどうした?」

 逃げ惑う下僕を捕まえながらヴァンサンが尋ねた。

「ボニーは・・・喰らわれえてしまった」とミリが言うと、ヴァンサンは「うおおおおお~!」と吠えた。そして、「喰らわれた⁉ 喰らわれた⁉」と喚きながら、更に激しく、残虐に暴れ回った。

「ヴァンサン。喰らったのは城にいるバートリ・エルジェーベトとバトムよ。ここにいるのは雑魚ばかり」

「そうか。では俺が、そいつらを喰らってやる」

 ヴァンサンが目を怒らせた。

 城へ逃げ込もうとする下僕を追って、ヴァンサンが駆けて行く。

「ヴァンサン。バトムは――」

 ヴァンサンはバトムの能力を知らない。怪力のヴァンサンであっても、絡みついて来る樹木から逃れることが出来ないかもしれない。慎重に行動する必要があった。

 だが、ミリが叫んだ時には、既にヴァンサンの姿は城へ消えていた。

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