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落ちこぼれの悪魔~ライム・ザ・デビル  作者: 西季幽司
アサシン・バトムの章
25/29

#24 ドラゴンの反撃

 ボニーが喰らわれてしまった。

 ライムを付け狙う、鬱陶しい存在だったが、最後はライムたちを救おうとしてエルジェーベトに喰らわれてしまった。

「さて、お次は・・・」と言ったバトムが固まった。

 ふと見ると、樹木でとらえたはずのクスコがいなかった。ボニーの音の攻撃を受けている隙に呪縛から抜け出してしまったようだ。

「うぬっ! あの子狐。何処に消えた。木々の呪縛をすり抜けることなど、できないはずなのに」

 バトムが地団太を踏む。クスコは体のサイズを自由に変えることが出来る。気がつくと、魂を失い、喰らう価値がなくなってしまったライムの姿もなかった。

「いない・・・!」

「そんなの放っておきなさい。さあ、その女を、女の魂を私に喰らわせて。そして、私は若さと美しさを永遠に保ち続けるの」

 エルジェーベトが歌うように言う。

「はっ!」バトムが指揮者のように手を振る。

 するすると樹木が伸びて、ミリをエルジェーベトのもとに運んで行く。

「美しい女。今日はご馳走だ」

 エルジェーベトが口を開けた。顎が外れ、真っ赤な口が大きく広がった。

「うむむ・・・」とミリが最後の足掻きをする。

 その時、「そうはさせるかっ!」と声がした。

 突然、部屋に巨大なドラゴンが現れた。

 真っ赤な口を開け、羽を羽ばたかせながら飛来すると、ミリを縛っていた樹木をなぎ倒し、長い尾でバトムとエルジェーベトをなぎ倒した。

「ぐえっ!」

 悲鳴を上げて、バトムとエルジェーベトが部屋の隅まで飛ばされた。

 ドラゴンが後ろ足でミリを掴む。もう一方の後ろ足には、がっちりとライムを掴んでいた。ドラゴンは窓から飛び去って行った。



 チェイテ城から離れると、直ぐに、「ああ~もうダメだ」とドラゴンが悲鳴を上げた。ドラゴンはクスコが変身した姿だった。小柄なクスコが巨大なドラゴンに変身すると、異常に体力を消耗してしまう。長時間、変身することはできなかった。

 変身が解けたクスコはミリとライムと共に、チェイテ城から広がる緑の大地に墜落した。クスコ、ミリ、それにライムは叢をごろごろと転がった。

「うっ、うう~ん」

 クスコもミリも墜落の衝撃で、暫く起き上がることができなかった。

「大丈夫? ミリ?」

「なん・・・とか・・・」

「ゴメン。もっと遠くに逃げることができたら良かったんだけど」

「あなたはよくやった」

「早く逃げないと、やつらが追いかけて来る」

「もう遅い!」ミリが立ち上がった。

 チェイテ城から追手がやって来ていた。バトムの手先が、城の下僕たちが、わらわらと城から出て来るのが見えた。

「しまった・・・」

 食事が始まった時、邪魔になったので、背負っていた破魔弓を隣の椅子の上に置いてしまった。破魔弓があれば、彼らを浄化できるのに、彼らと戦う武器がなかった。

「そうだ!」

 ライムが背負っている雷切ライトニングソードがあった。

 ミリはライムの傍らに蹲ると、「ライム。借りるよ」と言って、ライムが腰に差していたライトニングソードを鞘から引き抜いた。

「ミリ。凄い数だよ」

 思ったよりも多い。二十人以上、いるかもしれない。

「うん。大丈夫。きっと」

 ミリにも自信がなかった。

 ミリはライトニングソードを構えた。

「僕も戦うよ」

 クスコは再び、巨大なドラゴンへと変身した。

「うわあああ~!」

 雄たけびを上げながら、下僕たちが波になって押し寄せて来た。

「消えなさい!」

 ミリがライトニングソードを一閃する。


――ドカン!


 と大きな音がして、眼も眩む光の束が天から降って来た。

「げえっ!」、「ひいい~!」

 押し寄せる下僕たちが雷の直撃を受けて、弾け飛んだ。

 ドラゴンとなったクスコはばたばたと空中に舞い上がり、急降下すると鋭い鍵爪で下僕たちを引き裂き、掴み上げ、投げ捨てた。

「もうひとつ!」

 ミリが再び、ライトニングソードを揮うと、落雷が下僕を直撃した。

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