#24 ドラゴンの反撃
ボニーが喰らわれてしまった。
ライムを付け狙う、鬱陶しい存在だったが、最後はライムたちを救おうとしてエルジェーベトに喰らわれてしまった。
「さて、お次は・・・」と言ったバトムが固まった。
ふと見ると、樹木でとらえたはずのクスコがいなかった。ボニーの音の攻撃を受けている隙に呪縛から抜け出してしまったようだ。
「うぬっ! あの子狐。何処に消えた。木々の呪縛をすり抜けることなど、できないはずなのに」
バトムが地団太を踏む。クスコは体のサイズを自由に変えることが出来る。気がつくと、魂を失い、喰らう価値がなくなってしまったライムの姿もなかった。
「いない・・・!」
「そんなの放っておきなさい。さあ、その女を、女の魂を私に喰らわせて。そして、私は若さと美しさを永遠に保ち続けるの」
エルジェーベトが歌うように言う。
「はっ!」バトムが指揮者のように手を振る。
するすると樹木が伸びて、ミリをエルジェーベトのもとに運んで行く。
「美しい女。今日はご馳走だ」
エルジェーベトが口を開けた。顎が外れ、真っ赤な口が大きく広がった。
「うむむ・・・」とミリが最後の足掻きをする。
その時、「そうはさせるかっ!」と声がした。
突然、部屋に巨大なドラゴンが現れた。
真っ赤な口を開け、羽を羽ばたかせながら飛来すると、ミリを縛っていた樹木をなぎ倒し、長い尾でバトムとエルジェーベトをなぎ倒した。
「ぐえっ!」
悲鳴を上げて、バトムとエルジェーベトが部屋の隅まで飛ばされた。
ドラゴンが後ろ足でミリを掴む。もう一方の後ろ足には、がっちりとライムを掴んでいた。ドラゴンは窓から飛び去って行った。
チェイテ城から離れると、直ぐに、「ああ~もうダメだ」とドラゴンが悲鳴を上げた。ドラゴンはクスコが変身した姿だった。小柄なクスコが巨大なドラゴンに変身すると、異常に体力を消耗してしまう。長時間、変身することはできなかった。
変身が解けたクスコはミリとライムと共に、チェイテ城から広がる緑の大地に墜落した。クスコ、ミリ、それにライムは叢をごろごろと転がった。
「うっ、うう~ん」
クスコもミリも墜落の衝撃で、暫く起き上がることができなかった。
「大丈夫? ミリ?」
「なん・・・とか・・・」
「ゴメン。もっと遠くに逃げることができたら良かったんだけど」
「あなたはよくやった」
「早く逃げないと、やつらが追いかけて来る」
「もう遅い!」ミリが立ち上がった。
チェイテ城から追手がやって来ていた。バトムの手先が、城の下僕たちが、わらわらと城から出て来るのが見えた。
「しまった・・・」
食事が始まった時、邪魔になったので、背負っていた破魔弓を隣の椅子の上に置いてしまった。破魔弓があれば、彼らを浄化できるのに、彼らと戦う武器がなかった。
「そうだ!」
ライムが背負っている雷切ライトニングソードがあった。
ミリはライムの傍らに蹲ると、「ライム。借りるよ」と言って、ライムが腰に差していたライトニングソードを鞘から引き抜いた。
「ミリ。凄い数だよ」
思ったよりも多い。二十人以上、いるかもしれない。
「うん。大丈夫。きっと」
ミリにも自信がなかった。
ミリはライトニングソードを構えた。
「僕も戦うよ」
クスコは再び、巨大なドラゴンへと変身した。
「うわあああ~!」
雄たけびを上げながら、下僕たちが波になって押し寄せて来た。
「消えなさい!」
ミリがライトニングソードを一閃する。
――ドカン!
と大きな音がして、眼も眩む光の束が天から降って来た。
「げえっ!」、「ひいい~!」
押し寄せる下僕たちが雷の直撃を受けて、弾け飛んだ。
ドラゴンとなったクスコはばたばたと空中に舞い上がり、急降下すると鋭い鍵爪で下僕たちを引き裂き、掴み上げ、投げ捨てた。
「もうひとつ!」
ミリが再び、ライトニングソードを揮うと、落雷が下僕を直撃した。




