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落ちこぼれの悪魔~ライム・ザ・デビル  作者: 西季幽司
アサシン・バトムの章
24/29

#23 生贄

 ミリとクスコは樹木に囚われてしまった。

 動けない。

「こら、こいつ。離せ! 正々堂々と勝負しやがれ!」

 クスコが叫ぶ。

「キャンキャンとうるさい犬だ」

「オレは狐だい!」

「後で料理してやろう。動物の肉は久しぶりだ。涎が出そうだ」

「くっ! この野郎」と喚いたが、手足を樹木でがんじがらめに縛られ、身動きが取れない。

「ライム! ライム~!」と叫んでみたが、ライムは床の上で伸びたまま、ピクリとも動かない。死んでしまったのだ。

「さあ、姫様。この女をお召し上がりください」とバトムが恭しくエルジェーベトに礼をする。

「ほほ。若くて美しい悪魔の魂を喰らい、私は更に美しく、若くなるのだ」

 エルジェーベトがミリに近づいて行く。

「ミリ!」クスコが悲鳴を上げる。

 エルジェーベトが口を開けた。顎が外れ、赤黒い口が大きく、醜く開いた。

 絶体絶命だ。

 もうダメだ!――思われた時、ダン! と音を立ててダイニングのドアが開いた。

「あ~あ~あ~!」と大音響がダイニングに響き渡った。

「ぐわっ!」

「な、何事!」

 バトムとエルジェーベトが頭を抱えてうずくまる。

「頭が痛い・・・頭が割れそうだ・・・」

 何があったのか。

 クスコが首を巡らすと、そこにはボニーが立っていた。ボニーは音を武器にすることができる。バトムとエルジェーベトに大音響を聞かせ、自由を奪ったのだ。

「お前は⁉」クスコが叫ぶ。

「ふん! あんたたちは私の獲物だよ。こんな訳の分からないやつにやられたんじゃあ、クライドが浮かばれない」

「でも、ライムが」

 床の上に伸びたライムを見たボニーは「何で・・・こんなやつらに・・・」と絶句した。

「毒イチゴを食べさせられたんだ」

「毒イチゴ・・・私が・・・私がこいつを倒したかったのに・・・クライドの仇を取りたかったのに・・・」

 ボニーは「あ~!」とバトムに向かって更に音量を上げた。

「あ・・・ああ~頭が割れる・・・」

 バトムがのたうち回る。

 その時、ボニーの背後のドアが開くと、城の召使たちがダイニングに雪崩れ込んで来た。そして、ボニーに殺到した。

「くっ! こいつら」

「口を塞げ! 声を出させるな」

 バトムが喚く。

 あっという間に、ボニーは召使たちに取り押さえられた。

「あなた、姫様に苦痛を与えるなどという、大それたことをしでかしました。許しませんよ」

 バトムが両手を上げると、床から樹木が伸びて来て、ボニーに絡みつき、羽交い絞めにした。無論、口には幾重にも枝が絡まり、開かないようになっている。

「バトム。そのものを寄こしなさい!」

 エルジェーベトがバトムに向かって怒鳴る。目が血走り、口が大きく避けていた。

「はっ!」

「その者から喰らってやる。美しく、若い女だ。今宵はご馳走じゃな」

 樹木がするすると伸びて、ボニーがエルジェーベトの御前に運ばれる。

「うっ・・・ぐぐっ・・・」

 ボニーが必死の抵抗を試みるが、動けない。

 エルジェーベトが赤黒い口を開けて、ボニーが運ばれて来るのを待っている。

「止めろ!」

 クスコが叫ぶ。

 だが、クスコの叫びも虚しく、エルジェーベトは一口でボニーを飲み込んでしまった。

 ライムを仇と見なし、つけ狙っていたボニーの呆気ない最後だった。

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