表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれの悪魔~ライム・ザ・デビル  作者: 西季幽司
アサシン・アズムの章
19/19

#18 起死回生

 ライトニングソードから雷が発せられる。

 その瞬間を待っていたようで、ボニーが艶やかに指を動かす。すると、ただでさえ大きな雷の大音響が更に大きくなって、地面に叩きつけられた。

 同時に雷が落ちる。

 崖に囲まれた閉鎖された空間だ。音が反響して鳴り響く。

 地震のように地面が激しく揺れた。大きく波打って、ライムとミリは立っていられなかった。

「もう一度」

 アズムがライトニングソードを振るう。崖沿いの揺れが少ない場所に陣取ったボニーが、雷が発する大音響を増幅させ、雷と一緒に地面に落とす。これこそ、アズムとボニーが事前に練習した技だった。

 四つ足のクスコでさえ、ごろごろと地面を転がった。

 ライムたちが動けないのを見て、五人のアズムが一斉に襲い掛かって来た。ライムは何とか体勢を立て直そうとするが、その都度、雷を落とされた。流石のライムも五人、同時に動きを止めることは出来なかった。

 絶体絶命のピンチだ。

 五人のアズムの内、二人がミリを狙い、三人がライムに向かって来た。

「うぬっ!」

 ライムは転がりながら手を挙げた。

 すると、天空を切り裂き、雷が光った。雷はライムとミリを取り囲むように落ちた。ライムとミリに襲い掛かろうとしていたアズムたちが感電して麻痺してしまった。

 ライムは自分の身で受けた能力はコピーできる。ライトニングソードの能力さえコピーしてしまった。雷を自由に操ることができるのだ。

 だが、雷を逃れたボニーがミリに襲い掛かる。

「しまった!」とライムが声を上げた時、「うおおおお~!」と猛獣のような声と共に、巨大なものが崖を駆け下りて来て、ミリに襲い掛かろうとしていたボニーを体当たりで弾き飛ばした。

「あれ~」ボニーが悲鳴を上げながら、飛んで行って、崖にぶつかって地面に落ちる。

 ヴァンサンだった。

「ヴァンサン! 裏切り者め」

「裏切り者? 俺はあんたの下僕ではない」ヴァンサンが吠える。

「今の内だ~!」

 ミリとクスコで手分けをして、地面に転がったアズムを喰らった。

「おのれ!」

 アズムは再び、ライトニングソードで雷を放とうとしたが、肝心のボニーがライムのヴァンサンに弾き飛ばされて気絶してしまっていた。

「仕方ない」

 アズムは四人に分身し、前後左右からライムに襲い掛かった。

「無駄だよ」

 ライムは自分の周りに雨のように雷を落とした。

「ぐわっ!」

 雷に打たれて、アズムが地面に転がる。

「キリがないね」

 ライムの言う通りだ。雷の能力をコピーされては、アズムには打つ手がない。

「出直すしかありませんね」

 ボニーは置き去りだ。助け出す義理はない。アズムは逃げ出そうとした。

「逃がしませんよ」

 ライムは手を挙げて雷を落とすと、アズムを直撃した。そして、空から落ちて来るアズム目掛けて、手刀を切った。

 見えない車輪が飛んで行って、アズムを二つにする。

 ライムは見たことがないような瞬発力を発揮すると、アズムが落ちて来るのを地面で待ち構えた。悪魔が悪魔を喰らう瞬間はグロテスクだ。ネズミを丸のみする蛇のように、どこまでも口を広げて、飲み込んでしまう。

 ライムは落ちて来たアズムを、大口を開けて丸のみした。

 全てが終わった――と思った、その瞬間、ライムの背後に影が忍び寄っていた。アズムを喰らったライムを、その背後から大きな口が飲み込んだ。

 アズムだ。

 ライムに喰らわれる瞬間、分身したのだ。

 一瞬の判断が運命を左右した。

 ライムはアズムに喰らわれてしまった。


――と見えたが、そこにアズムの油断があった。


 マトリョーシカみたいなものだ。何とライムを喰らったアズムを更に背後から、大きな口が飲み込んだのだ。

 ライムだった。

 アズムに喰らわれた瞬間、ライムはアズムの能力をコピーすることができた。我が身で食らってこそ、能力をコピーできる。ライムはアズムに喰らわれた瞬間、その能力をコピーすると共に、分身した。そして、アズムの背後に現れ、油断したアズムを喰らったのだ。

 一瞬の出来事だった。

 ミリもクスコも何が起こったのか、分からなかった。

 ただ、二人が喰らい合って、最後にライムが残った――ことは分かった。

「ライム!」

 ミリが駆け寄る。ミリを追いかけてクスコがやって来る。

「ミリ、ごめん。心配かけた?」

「ちょっとね」

「俺だって、ちょっと心配したんだぜ」

「ありがとうクスコ」

 三人は輪になって喜んだ。

 ミリは大丈夫だが、クスコはライムに触れると浄化してしまう。

 その光景を見届け、ヴァンサンが立ち去ろうとした。

「ねえ、待ってよ」ライムが呼び止める。

 ヴァンサンが足を止めた。

「ミリを助けてくれてありがとう」

「ありがとう? そんな言葉、魔界で聞いたのは初めてだ」

「そう。何処に行くの」

「さあ、俺がいると悪魔どもが群がって来る。何故か悪魔の標的になってしまう。だから、何処かで身を隠す」

「だったら、彼女を連れて行ってよ」

 ボニーのことだ。崖の側で気を失っていた。

「うん・・・」ヴァンサンは暫く、考えていたが、「分かった」と頷くと、ボニーを肩に担いだ。そして、「じゃあな」と姿を消した。

「今度から、迂闊に近づいちゃあダメよ」とクスコがミリに怒られた。

「ごめん」

「クスコは人を騙して来たはずなのに、直ぐに騙されちゃうんだから」

「だから、ごめんってば」

「さあ、行こう」と言って、ライムが地面に落ちていた雷切ライトニングソードを拾った。

「そんなもの、もう必要ないでしょ」とミリが言うが、「だって、恰好良いんだもの」とライムは剣を手放そうとしなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ