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落ちこぼれの悪魔~ライム・ザ・デビル  作者: 西季幽司
アサシン・アズムの章
18/19

#17 囮

「なあ、ライム。タルヴァザって何処にあるんだ?」

 ミリの腕に抱かれたクスコが尋ねる

「デビルズタワーにあるらしい」

「デビルズタワーって何処にあるんだ?」

「魔界で一番、高い山だって。だから、高い山を目指して歩いている」

 荒れた平地の続く魔界だが、わずかに起伏がある。山もあって、遠くから見ることができた。

「ふ~ん。そうなのか。タルヴァザって地獄の門のことだろう。それを潜れば人間の世界へ行けるっていう。人間の世界に行ってどうする?」

「クスコは人間の世界を知っているんだったね」

「やつら、悪魔以下だぜ。ひどいところだ」

「そうかい。それでも行ってみたいんだ」

 ライムは何故か懐かしい顔をする。

「ふ~ん」

「タルヴァザに行くのが嫌なら、ついて来なくても良いよ」

「俺はお前らについて行く」

「何故だい?」

「俺、一人じゃ弱いから」

「そうかい。でも、クスコ、君は巨大な怪獣にだってなることができるじゃないか」

「あれは見かけだけさ。十倍の大きさになっても力が十倍になる訳じゃない。大きくなっても、俺は俺のままさ」

「そうなのかい」

「だから、ライム。お前と一緒にいる。お前は俺のこと、ペットにしない。お前は俺のこと、喰らったりしない。お前は強そうだ。それに・・・」

「それに?」

「ミリがいる。ミリはどこか・・・」クスコはするりとミリの腕から抜け出して言った。「タマリに似ている」

 タマリはクスコの姉だった狐だ。

「あら、そう」とミリが言う。満更でもなさそうだ。

 クスコは照れたのか、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、二人を置いて駆けて行った。

 調子に乗って、行き過ぎた。気がつくと、後ろから来るライムとミリが見えなくなっていた。

「そこの狐」と呼び止められた。

「誰?」

「私だ」ボニーだった。

「何だ、お前か。何か用か?」

「用事があるから呼び止めたんだ」

「何だい?」と首を傾げるクスコに近づくと、ボニーは首根っこを掴んだ。

「あっ!何をするんだ」

 野生動物の習性のようなものだ。首根っこを捕まえられると、抵抗できない。しかも、変身能力も使えなくなってしまう。

「お前には囮になってもらうよ」

 ボニーはクスコの首根っこを押さえて、仁王立ちになったままライムとミリが近づいて来るのを待った。

「止めろ!」

 ようやくライムとミリが追いついて来た。

「お前は・・・」

 ボニーの姿を見つけたライムが呟く。

「こいつは預かったよ」とボニーが背中を向けて駆け出した。

「ま、待て!」とライムとミリが後を追う。

 その様子をアズムが空から眺めながら、「その調子だ」とほくそ笑む。

 ボニーはライムたちを袋小路になった谷筋に誘き出すことに成功した。崖で行き止まりになった場所まで来ると、ボニーはくるりと振り返ってライムたちがやって来るのを待った。

「止めろよ! 放せ」とクスコが暴れる。

「ほら、そんなにやつらが良いなら、放してやるよ。戻りな」

 ボニーがクスコの首根っこから手を放した。クスコが飛び跳ねながらミリのもとに戻った。

「みなさん、ようこそ、いらっしゃいました」

 背後から声がする。

 ライムが振り返ると、アズムが谷筋を塞ぐようにして立っていた。それも一人じゃない。五人のアズムが横に広がって、ライムたちを逃がさまいと立ち塞がっていた。

「ライム、罠よ!」ミリが叫ぶ。

「そうみたいだね」

「見物はこれからですよ~!」と頭上から声がする。

 アズムだ。もう一人、アズムがいた。

「まだいたのか!」

「私は無限に分身することができるのですよ」

 空中に漂うアズムは手に持っていたライトニングソードを振るった。

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