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落ちこぼれの悪魔~ライム・ザ・デビル  作者: 西季幽司
アサシン・アズムの章
16/21

#15 乱戦

 ドッドッド――と大地が揺れていた。

「何だろう?」ライムが呟く。

「俺が見て来てやろう」

 クスコは鳥に姿を変えると、空へと舞い上がった。三百年生きた妖怪狐だったクスコはなんにでも姿を変えることができた。

「た、大変だ」とクスコがミリのもとに舞い戻る。

「どうしたの?」

「何だか知らないけど、悪魔たちが束になってやって来る」

「逃げた方が良さそうだね」

 悪魔らしくないライムは争いが嫌いだ。

 引き返そうとしたライムたちの前に、空から悪魔が降りて来た。

「おやおや。逃げるのですか」

 アズムだ。ライムを挑発する。

「誰? 君」

「私はアズム。あなたを喰らいに来ました」

「君が三人目の刺客なんだね」

「そうです。だったらどうします?」

「逃げないと喰らっちゃうかもしれないよ」

「ほほほ。面白い」とアズムは笑うと、背負っていた剣を抜いた。

「その剣、格好いいな~」

「感心している場合ですかね」

「気を付けて、ライム! ライトニングソードよ」

 ミリが叫んだ時には遅かった。アズムが剣を振るうと、赤黒い闇を切り裂いて雷が走った。何とか直撃を免れたが、ライムとミリ、クスコはばらばらになってしまった。

 そこに悪魔の群れが押し寄せて来た。

 先頭を走って来るのはヴァンサンだ。ひと際大きな、巨大な岩のような体躯が一目散に走って来る。その後を悪魔たちが追っている。何故かヴァンサンは悪魔たちに目の敵にされる。どうやら、ヴァンサンは追われているようだった。

「あぐわ~!」と叫びながら、ヴァンサンがライムに襲い掛かった。ヴァンサンの強烈な一撃をライムは転がりながら交わした。

 そこにヴァンサンを追いかけて来た悪魔が三人、折り重なるようにライムに襲い掛かった。

「うぎゃっ!」、「ああ~」、「うげぇっ!」

 悪魔たちは三人三様の悲鳴を上げながら、光を発し浄化してしまった。

「うおっ!」とヴァンサンが驚く。

 ライムに触れた悪魔は浄化してしまう。そのことをアズムから聞かされていなかったようだ。

「ひるむな! 引き裂け!」アズムがヴァンサンに怒鳴る。

 ミリとクスコのもとにも悪魔たちが殺到していた。クスコは巨大な龍になって悪魔たちを脅したが、悪魔たちは一瞬、ひるんだだけだった。龍に化けたクスコにかぶり着いた。

「痛い! いたたたた~」

 クスコがもとの狐の姿に戻る。ミリが悪魔にかみつかれたところを、ヒーリング能力で癒す。だが、そのミリのもとへも悪魔たちが襲って来る。

 誰が敵か、誰が味方か分からない乱戦だ。ライムたちにとっては、周りにいる悪魔たち全てが敵だった。

「ミリ~!」

 ミリのもとに殺到する悪魔たちをライムが手刀を切って、見えない車輪で切り裂いた。動けなくなった悪魔は直ぐに他の悪魔に喰らわれる。

 ヴァンサンは襲い掛かって来る悪魔たちを撃退するのに忙しい。ヴァンサンの武器は圧倒的な力だ。だが、それを使ってライムを攻撃すると、どうしてもライムに触れてしまう。触れた瞬間に、浄化してしまう。だから、ライムへの攻撃を躊躇っていた。

「役立たずめ!」

 アズムは高く舞い上がると、ライトニングソードを一閃し、雷を落とした。ライムが交わし、代わりに悪魔たちが吹っ飛ぶ。

 アズムはライム目掛けて急降下した。

 ライムが手刀を切る。見えない車輪が飛んで行って、アズムを切り裂いた――かに見えた。その瞬間、アズムが二人になった。

「こっちですよ」

 アズムの能力、それは分身能力だった。

 分身前のアズムは真っ二つになってしまったが、別れたアズムがライトニングソードを持ってライムの頭上に迫った。

「あらよっ!」とアズムがライトニングソードを振るう。

「あがっ!」

 雷がライムを直撃した。

 ライムが地上に伸びる。

「ふふ。分身能力は我が身で味わうことができないので、コピーすることができないでしょう。これで、終わりです」

 アズムが巨大な口を開けた。

 アズムがライムを喰らおうとした瞬間、アズムのこめかみを矢が貫いた。

「何~⁉」

 破魔矢だ。ミリだ。ライムの危機を見て、ミリが放ったのだ。破魔矢は悪魔を浄化することができる。一瞬で、アズムが光を放ち、浄化してしまった。

「くそっ!破魔弓を持っていたのか」

 アズムだ。弓が頭を貫いた瞬間、アズムは分身していた。矢を射られたアズムは浄化してしまったが、分身したアズムは無傷だ。

「出直すぞ!」

 アズムが逃げ出すと、その後をヴァンサンが追った。

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