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落ちこぼれの悪魔~ライム・ザ・デビル  作者: 西季幽司
アサシン・アズムの章
14/21

#13 悪魔少女

 魔界では、悪魔は泡のように湧いて出る。

 ところ構わず、突然、湧いて出る。生まれたての悪魔は脆弱だ。これほど襲いやすいものはいない。周りに悪魔がいると、直ぐに喰らわれてしまう。

 レンドはふわふわと宙に浮くことができるようになった。

 能力ではなく、属性のようなものだ。

 斬魔剣を背に抱え、レンドは宙に浮きながら、移動していた。

 ふと眼下に目を遣ると、一人の悪魔が生れ落ち、周りにいた悪魔たちが、それを喰らおうと集まり始めていた。

 見慣れた光景だ。

 何時もなら無視するのだが、何故か気になった。悪魔たちに囲まれている悪魔が、見たことがない悪魔だったからだ。

 悪魔は少女の姿をしていた。

 悪魔たちに憐憫の情などない。父性本能、母性本能など持ち合わせていない。子供の姿をしていても、守ってくれようとする悪魔などいない。

 悪魔少女に群がる悪魔たちは、お互いに牽制し合いながら、包囲網をじりじり狭めていた。誰よりも先に悪魔少女に喰らいつきたいのだが、弱肉強食の世界だ。うかつに戦いを挑んで、相手の力量を測り間違えば喰らわれてしまう。隣の悪魔より先に喰らいたは良いが、その隙に自分が喰らわれてしまっては元も子もない。

(丁度良い)とレンドは思った。

 悪魔少女を包囲する悪魔たちの背後にふわりと舞い降りると、ギラりと斬魔剣を抜いた。

(試し斬りだ)

 レンドは悪魔たちを背後から無言で斬りつけた。

「うぎゃ~!」、「げええ~」

 凄まじい威力だ。

 致命傷を与えなくとも、切っ先が触れるだけで、悪魔たちが浄化して行く。

「うわっ!」、「ひええええ~」

 逃げ惑う悪魔たちを追いかけ、レンドは斬り続けた。

 悪魔たちは逃げ去ってしまった。

「ふむ。こいつは使えるな。だが、アズムが言っていたように、浄化してしまうのが難点だ。少しは喰らっておけば良かった」

 レンドはそう独り言を言うと、斬魔剣を背に負った鞘に納めた。

 立ち去ろうとするレンドに、「あの」と声をかけたものがいた。

 悪魔少女だ。

「何だ?」

「助けてくれて、ありがとう」

「助けた? 馬鹿なことを言うな。お前など、どうなっても良かった。俺はただ、この剣の試し斬りをしてみたかっただけだ」

「それでも、助かった」

「そうか」

「私はセイレン」

「・・・」名乗ったものかどうか、レンドは迷った。

「名前くらい教えてくれても良いじゃない」

「レンドだ」

「レンド・・・」

「お前の能力は何だ?」とレンドが聞く。

「私の能力? 分からない」

「いいか。お前は弱くて小さい。お前のような悪魔は、生れ落ちて直ぐに他の悪魔に喰らわれてしまうものだ。だがな、お前のように弱くて小さい悪魔は、生れ落ちた時から能力を持っているものが多い。お前の能力は何だ? それを早く知ることだ」

「そうなのね」

「ああ、まあ、喰らわれないように頑張れ」とレンドが歩き始めると、セイレンがついて来る。歩幅が違う。セイレンは時折、小走りになりながら、レンドの後をついて行った。

「ついて来るな!」とレンドが怒鳴ると、セイレンは足を止める。

 だが、レンドが歩き始めると、また、その後をついて行くのだ。

(ああ、面倒だ)とレンドがふわりと舞い上がった。

 セイレンに宙を浮くことなどできない。

 置いて行こうとしたが、レンドがいなくなると、何処に隠れていたのか、直ぐに悪魔どもがセイレンに群がって来た。

「ああ! くそ。なんでこんなことになったんだ」

 再び、レンドは舞い降りると、今度は斬魔剣を使わずに、悪魔を喰らった。悪魔たちがまた、姿を消した。

 岩陰に隠れていたセイレンが出て来て、レンドの側にぴったりと寄り添った。

「くそっ!」

 レンドが歩き始めた。今度はセイレンの歩幅に合わせて、ゆっくりと。

 そんな二人を遠くから見つめる目があった。

 ボニーだった。

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