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旅の仲間

 受付嬢とやり取りを始めたDランク冒険者の少女。

 イリスと名乗る失礼な少女の事が少し気にかかりながらも、ローランはカウンターを離れた。

 登録は無事に済ませたのだ。

 今はとりあえずは用事は無い。

 時間を無駄にしてる余裕も無い。


「あの人……リカルドさん息子らしいぜ……」

「最初から2ランク飛ばしでEランクらしいわよ」

「……やっぱすげぇんかな」

「だって、Sランク冒険者の息子よ?」


 そんなひそひそ声が聞こえる。

 噂は既に広まり始めローランはギルド内にいる人間の多くが好奇の視線を向けてくる。

 しかし、あのイリスと言う少女以外には、絡んでくるものはいなかった。 

 リカルドの息子と言われて悪感情を抱かれる方が稀なのだ。


「……どんな依頼があるんだろう」


ローランは父と共にギルドに入った事は幾度もあったが、一人で依頼を受けた事は無かった。

 カウンターから離れたところに所狭しと依頼書が貼り付けられていた巨大な掲示板があった。


「これが依頼書か……」


 依頼紙には様々な募集要項が記されている。

 報酬や依頼内容、参加条件など。


 任務(クエスト)を受注するには、基本的に制限が設けられている。

 主に冒険者ランクによるものだ。

 Eランクのローランには受注できないものも多い。


 しかし、それ以下のランクと比べると格段に選択の幅は広がっている。

 幼い頃から冒険者としてやっていく術は父や、その仲間の高位冒険者達から叩き込まれていた。

 わざわざ下積みからやる必要もないという彼のはからいだ。


「これだけで……銀貨4枚も稼げるのか」


 討伐の依頼書見てローランは呟く。

 パーティーを組まなくても攻略できそうな依頼だ。

 この街では銀貨一枚で、悪くない宿に食事付きで泊まれる。

 今のローランの実力ならそれなりの報酬を得る事が出来る。

 軽い依頼をこなしているだけで、それなりの生活はできるだろう。


「……でも、やっぱり今の僕のランクは低すぎる」


 ローランは拳を握り締める。

 彼の目的は、それなりの生活をする事ではない。


 行く道は険しく、目指す目標は遥に遠い。


 冒険者は実力が全て――。


 あの失礼な少女の言っている事には一理あるとローランは思っていた。


 貴族になる為には、ギルドに、国にその力を見せつけなければならない。


 高位ランクの冒険者にくらい易々となれないようでは困るのだ。

 騎士爵を目指すにしても最低でもBランク、Aランクは欲しいところだ。


「とりあえず、早くランクを上げないと……」


 しかし、世に力を示すためにも、実力に見合った任務を受ける必要がある。


 今のランクで受けられる依頼の中で、難易度の高いものを選択していけば、早々にDランクには昇格できるだろう。

 そして、依頼書の内容を見ると、Cランクまでなら苦も無く上げられる自信はあった。


(パーティーも組まないとだよな……)


 依頼書に記されているのは、個人によるランクの制限のみではない。

 任務の参加条件にはパーティ・ランクという言うものもある。


 確かに、単独(ソロ)でも依頼を受ける事は出来る。

 しかし、固定のパーティーを組んでいる方が選択肢が広がるのだ。

 パーティーにはその構成メンバーの能力に応じて、ギルドが査定したランクがつけられる。

 高位のパーティーともなれば引く手あまたに名指しの依頼が来る。


(メンバーを探さないとか……)


 しかし、パーティーを組むというも簡単な事ではない。

 単独(ソロ)でなら、好きになんでもできるが、パーティーと言うのも一つの組織だ。

 息の合った面子で組まなければ、連携にも支障が出て、真価を発揮する事は出来ない。


 そこで思い浮かぶ選択肢。

 

(どこかのパーティーに入れてもらうか?)


 ローランは一瞬そう考えた。

 パーティーの人数と言うのに一応は規定は無い。

 一応、Eランクとは言え、駆け出しローランだが、父の名を出せば入れてくれる上位のパーティーはあるだろう。

 自分より高位のランク冒険者と組めば、早々に高難易度のクエストも受けられるだろう。


(いいや……、それじゃ、遅すぎる……結局遠回りだ)

 

 ローランは頭を振る。

 新入りの人間がパーティー内部で、信頼や発言権を得るのにはそれなりに時間がかかる。

 そして、そのパーティーには既にリーダーがいるはずだ。


 先の事を考えるなら、


「やっぱり僕のパーティーが必要だ……」


 自らが発起人になってパーティーを作る必要がある。

 理想は、自分の意に従う、手足のように動くパーティー。


 最低でも、自分がリーダーとして実権を握る必要がある。


 メンバーが完全に自分の意に従う事は無くとも、最終的な決定権や、方向性などは自らが決められるパーティーでなければならない。


 幸い駆け出しが多いこの街でメンバーを探す事はできるだろう。

 だからこそ、リカルドはこの街をローランのスタート地点に選んだのだ。


 しかし、人選には慎重に行う必要がある。


 ローランが目指すものは、最速での成り上がり。


 仲良しこよしの馴れ合いのパーティーでも、日銭を稼ぐだけのパーティーでもいけない。


 必要なのは、上を目指す人間だ。

 確かな、実力を持つ人間だ。


 街に着いたばかりのローランだが、思い浮かぶ人が一人いた。

 その人物がいるであろう方向をチラリと見ると、


「先ほどはすいません……ローランさん」


 申し訳なさそうな顔の、受付嬢がカウンターから出てきて話しかけてきた。


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