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陸章 最果てでの一つの願い

溝口和也は霞野村を守る為に戦う彼らを見届けることを決めた。

彼らの過去、これからの彼らは……

俺は決めた、皆に見届けることを。ここでただ帰りを待つんじゃなくて、少しでも動きたい。

 そう思った俺は女中数人に事情を伝えて密かに邸から出た。

 久しぶりに浴びる日光と秋風が心地良かった。


 おかげで元の世界に戻れるのはもう少し後になりそうだな。


ーーーーーその頃ーーーー


宴も終わり、彼らは家で眠りに着くと、次の日はそれぞれの持ち場についた。

 これからは皆が別々になる。


 綾女の持ち場は隣村の端だった。

 彼女は村の中で戦うことはあっても、今まで隣村で戦うことは無かったので、これが初めてであった。

 そこは深い森で、光はあまり入ってこない。


「待ってろ! 私が全員叩きのめしてやるから!」

 彼女は宣言するように大きな声で、村の中を闊歩していた。

 実際彼女は男にも負けず劣らずの実力を持っていた。


「……ここが隣の村なのか?」

 ここは自分の村と違って、所謂洋館がいくつか建ち並んでいた。

(不思議な雰囲気だな。御伽話に出てくる伝説の国の建物みたいだ……。本当に実在するのか………此処のは建物も木々も綺麗だな)

 彼女は周りを一周見渡し目を輝かせた。

(あ……あれは?! もしかして昔読んだ本に出てきた……馬が人を運ぶ豪華な乗り物……)

「……そうだ! 馬車だ!」

 彼女は暫く辺りを探検した。だが、ふと疑問を感じた。

(こんなものを作れるような人たちが…私たちの日常を脅かしているのか…?)


 自分達の村を脅かす隣村の奴らはきっと恐ろしいに違いないと思っていた。


彼女はその時、ふと明寺が言っていたことを思い出した。

「連中には絶対に油断するな。油断すれば、足元をすくわれる」


 どういうことなのだろう。彼女にはわからなかった。


 こんな素敵な村に悪いヤツがいるなんて、この村の人達が自分達の村を破壊しているなんて、到底信じられなかった。

 彼女に迷いが生じた。


 平和に解決することはできないのだろうか。

 幾ら村を守る為とはいえ、ここに攻め入って村を壊すのはどうなんだ。


 心が徐々に揺れ動き始め、緩やかに流るる小さな川を見つめて物思いにふけっていた。


 ーーーーーその時、そんな彼女を見つめる影があったーーーーー





一方、お梅は自分の村内で完全に廃墟と化した市場で座っていた。木々も倒れ、枯れ果てていた。無事なのは一本だけであった。

 暫くすると隣村の男が彼女に歩み寄ってきた。


「久しぶりだな。元気だったか」


「……」


「その様子じゃ聞くまでも無さそうだな。なあ、ところでお前何でそっちにいるんだ?」

 彼女はしばらくして口を開いた。

「わからない。でも約束したから」


「そうか、離れられないってか。なら好きにしろ。ただお前が危険な目にあっても助けねえから」

「……」


 彼はきっと彼女をこの村から連れ出そうと来たのだろう。


 彼女は何も言わず、彼が帰った後もただ一本の木を眺めていた。

「お前も1人……?」


かつて愛した人と交わした契りを思い出す。絶対に生き延びるという誓い。


 彼を助けられずに、自分だけ生き残ってしまった。


 そんな今の彼女にとっての生きる意味は愛した人との約束を果たすことのみだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

この日は大きな衝突もなく、皆が無事に過ごした。


 その後帰ると、借りた民家では皆がいつものように騒いでいた。

「皆さん、夕餉のお支度が済みました」

「味噌汁と魚と麦米……?」

「邸での生活は贅沢だったんだなあ」 

「こんなんで体力回復できるかよー!」

「文句言わずにちゃんと食べて。ほら、静ちゃんが落ち込んじゃったじゃない」

「お、おい静! お前は気にしなくていいからな!」


「……私食欲ないから藤原にあげる」

「え、いいのか!? 悪りぃなあ お梅」

「おい! お前図々しいぞ。お梅、こいつに本当にあげていいのか?」

「近藤、別にいいから」 

「おいお前ら、モタモタしてないで、明日も朝早いんだからさっさと食べて稽古したらもう寝ろ」

「そうですよみなさん、夜更かしは体に毒ですから」

「静って何だか母親気質だな」 


響き渡る笑い声、平和な時間。だが決して長続きするものではない。

そしてもし、願いが一つ叶うのならば

ーーーーー変わらぬ日々が永遠に続いたらーーーーー

展開を完結に組み立てるのって難しいですね

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