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参章 別れと紅葉

主人公である溝口和也はひょんなことから異世界に飛んでしまう。そこは時代錯誤で争いが絶えない世界。

そんな世界で彼は何を知り、何を見るのだろうか。

〜〜〜〜〜数ヶ月後〜〜〜〜〜

 紅葉が俺たちの別れを彩っている。

(もうこんな季節なのか)

 ここ数ヶ月で俺は大分此処の連中と親しくなった。近藤と藤原とは他愛もない話をする仲になっていた。

 

 だが、もう隣村の連中が遂に村の中心まで迫ってきているそうだ。


「じゃあ行ってくるな!」

藤原はいつも通り元気にそう言った。

「ああ」

俺は当たり前だが浮かない気分だ。

「おい元気出せよ! 次の桜の季節までには帰ってくるさ」

近藤も俺に別れを告げる。

(また会えるかもわからないのに笑顔でいられる訳ないじゃないか)

以前より戦いは激しくなっている。

「和也さん。しばらく会えないですが、この邸をよろしくお願いします」


(静……)



〜〜〜〜〜回想〜〜〜〜〜



桜はもうほとんど散っていた時。

 俺が此処に置いてもらうことになって数日が経っていた時だ。

 皆全然帰ってこない。静はああは言ってはいたが本当に大丈夫なのだろうか。

 俺はこの時、暇なのに話し相手がいなかったこともあり、このやしきに残っていた静とよく話す間柄になっていた。それもあってか俺はこの数日間で村がいつ敵に落とされてしまうかわからないということをやっと理解した。

 

 俺はすることもなく与えられた部屋の中でボーとしていた。

 すると急に騒がしくなった。それでも俺は能天気に天井を眺めていたその時、

「意識を失わないでください!! もうすぐ着きます!! 大丈夫ですから!!」

 静の声だ。

(何事だ?ただ事ではないな。もしかして、、誰か大怪我でもしたのか?!)

 俺はいてもたってもいられなくなって障子戸を開けた。

 

 すると……

 鼻を突くような匂い。俺は耐えられずに倒れそうになった。ふらつきながら薄目に見たのは背中を真一文字に斬られていた梢だった。とても無惨で見ていられなった。俺は吐きそうになった。

 梢は部屋に運ばれていく。俺は追いかけてようとしたが近藤に止められた。


「梢様!! お願い! しっかりなさって下さい!!!」

部屋の外からでも聴こえる静の悲痛な叫び。胸が痛い。俺はそこで初めて自分もいつ命を落としてもおかしくないということを実感した。恐怖で逃げ出したい。だが、俺に逃げる場所なんてはじめからなかった。

 

〜〜〜〜〜それから数週間後〜〜〜〜〜


梢は何とか峠を越え、回復に向かっているらしい。俺は安堵し、彼女がいる部屋にむかった。


「……梢……さん?」

俺が尋ねると彼女は起き上がり、か細い声で言った。

「心配しないで」

彼女の切なそうな笑顔に余計苦しくなった。自分の不甲斐なさ。ただ部屋で何もせずに過ごしている自分。力になりたいと思いつつも、怖くて動きたくないと思っている自分。

 どうやら俺は酷い顔をしていたらしい。彼女は俺の頭を撫でて言う。

「そんな顔しないで」

彼女の優しい手が心地よかった。


蝋燭ろうそくの灯りは次第に弱まっていた。


ーーーーー   その後   ーーーーー


今思えばこの時の俺はまだまだ未熟でこの村のことを何も知ってはいなかった。

 

 今日は全員揃って集会があるらしい。俺はその集まりのために広間へ向かっている。この時はまだ知らなかったが、明寺はこの村の代表だ。そこには回復に向かっている梢もいた。

 

 明寺は言った。

「戦況は非常に不利だ。梢も重症を負わされ、村にある市も破壊されている。よって明日から静とお梅には前線で戦ってもらうことになる。」

(お、おい……どういうことだよ)

 しかし俺以外誰も驚いてはいなかった。強いて言えば黙って話を聞いてる藤原の機嫌が悪そうなだけだ。

(梢が怪我したって言うのに、他の女子供にも戦いに行かせるのか?!)


 居ても立っても居られなくなった俺は集まりが終わると、明寺にくってかかった。

「なあ、どういうことだよ。静まで戦いなんて、、危ないだろ。大体あいつは武器なんて持てるのか!」

「和也。悪いな。お前にも説明するさ。男はここ数年戦い手として出ずっぱりだ。だが、多くの男はもうこの長年の抗争で命を落とした。もうこの村に男は10人いるかいないかだ。だからこれからは女たちにも総動員で戦ってもらうことになる。」 

彼はあくまで冷静だった。

「そんなことして、あいつらだって死ぬかもしれないんだぞ!! あんたは人の心がないのか!!」

俺がそう言うと、

「俺だって本当は……! 誰が女を犠牲にして自分だけ生き残るような真似なんかするかよ!! 俺たちにはやらなきゃ行けねえことがあるんだ。だから、お前は口を出さずに下がってろ」

そう叫んだ。彼があのように感情的に声を荒あげることは滅多になかった。

そう。俺は何もわかっていなかったんだ。こいつらの想いも決意も、俺の考えの及ぶところではなかった。


俺はこの日、なんとなく静のところへ向かっていた。

「お前……、明日から戦いに行くんだってな」

「はい。自分で決めたことなので」

彼女は穏やかな顔をしていた。


「そうなのか。どうしてだ?」

「……理由ですか。それは、大切なものがあるからです」

彼女はそう言って笑った。


〜〜〜〜〜回想終〜〜〜〜〜


この静の言葉が今も忘れられない。彼女だって次帰ってきた時命がある保証なんてないのに。

彼女の決意は一体何が為したものなのだろうか。

 

 俺は彼女らが去っても秋空を見つめていた。





私がこうしたいと思っても思う通りにキャラクターは動いてくれないです笑

時系列的には回想シーンが前話からの続きで一番早い出来事です。

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