No.1 僻みアルファ。
「っあぁ〜、呑んだ呑んだぁ〜……!」
「陽一ぃ、お前マジ呑みすぎなぁ?」
「いやいや、うっせぇーですよ。先輩だって呑みすぎだしぃぃ……」
俺は、平凡な大学生・東陽一。
ただいま、サークルの呑みの席にて苦しんでいます。
「いや、マジで呑みすぎた。気分悪ぃ。」
今日の呑み会は一段と寄っている気がする。
いつもだったらこんなに呑むことはないはずなのに、周りの奴らに煽られて散々呑まされた。
これって、最近話題のアルハラってやつだよなぁ?
今訴えたら、取り締まれるんじゃね。
上手く力が入らない手でお冷を手にしてグイッと飲み干すと、ふととある男に目が釘付けになっ
細身の長身、キリッとした猫目、サラサラな黒髪、冷酷で神秘的な雰囲気。
うわぁ、女子が好きそうだな。そう思った。
あんな美形、アルファでもそうそう居ないだろう。
あぁ、俺もアイツと同じアルファなのに、どうしてこうも格差があるのだ……
そう僻んでは、再び酒のグラスに手を伸ばす。
伸ばして、グラスを持ち上げて、そして辞めた。
辞めよ辞めよ、妬むだけ無駄だ。
俺がもしアルファじゃなかったら、なんか人生変わってたのかな。
誰か取って代わってほしい。
俺は別に、望んでアルファなんかに生まれた訳じゃないのに。
すると、そのアルファの隣に座っている、酔いで顔を真っ赤にした男が口を開く。
「ちょっと〜、澄也くん呑んでないんじゃなぁ〜い?」
そう言ってビールのグラスを手に取り、そのままそのアルファの方にぐいっと突き出す。
なるほど、澄也っていうのか。あのアルファ。
名前までイケメンとは、少々どころかだいぶ鼻につく。
「あ、いえ。俺酒弱いので、遠慮しときます。」
"澄也"と呼ばれたそのアルファは、小さく両手を前に出し、控えめに断っている。
先程とは変わらない無表情での対応だが、途端にそのアルファの目の前に座っていたもう一人の男が、調子良はそうにペラペラと話し始める。
「もぉ〜、分かってないなぁ澄也は。仕事にはこういう付き合いも大事なの〜。」
ん……?仕事?
"仕事"と聞いて、思わず驚いた。
てっきりアイツも俺と同じように、サークルの呑み会で無理矢理酒を呑まされているのだと思っていたのだ。
「え?あ、はい。すみません。」
ソイツは一瞬困惑したような表情を浮かべるも、依然として両手は前に出したままだ。
あぁ、そうか。
バイト先の呑み会に付き合わされたって感じなんだろうな。
どれほどの時間が経っただろう、あのアルファの様子を伺っている間に。
「おーい、陽一?」
「……っうおぁ、ビックリした。急に触んなよ。」
ふいに隣に座っていた友人に肩を叩かれ、ハッとした。
あぁ、本当にビックリした。
俺がアイツに見惚れてたなんて、マジでびっくりしたわ。
「んだよ、お前。あそこの卓にいる奴が気になんのか?」
一瞬、ドキッとした。
なんだろう、図星をつかれたような、悪いことをしたのがバレたような、そんな感覚。
「あぁ?んなわけねぇだろ、俺はアルファだっつーの。」
「んでも陽一は残念だよなぁ。モテるのにさ、なんでそんなに恋愛には消極的なのかなぁ?」
そうだそうだ、俺だって立派なアルファなんだ。
そうだよ、アルファだろ。
分かってる、絶対に分かってるから。
でも、じゃあなんでこんなにも惹かれるんだろうか。




