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落ちる

「何だこれ?地面に宇宙?」 

 いつもと変わらない高校からの帰り道で見つけたのは、地面にある宇宙だった。いや、宇宙の様に見える不思議なナニカであった。

「ホント何だコレ?なんでアスファルトに?」

 近くで見ようとかがんだ瞬間、明らかに重力とは違う力が黒い縄となって俺を捕まえ、宇宙の様なものに引き寄せられていく!

 地面の宇宙に近づくにつれ視界が黒く染まってゆき、全身を闇が覆うと俺の足元から地面の感覚が消えた。

 そうして俺は、地面に落ちた。


 次第に周りが明るくなり、体の自由が戻ってくる。しかし、消えない浮遊感と落下感。

それもそのはず、地面に落ちた先には、また地面があった。

「えええええええ!何で空にいるのおおおお」

 絶叫しつつも、途中で速度がどんどん落ちていくことに気が付く、そのおかげで何も衝撃を感じることなく地面に降りることができた。


「……何かわかんないけど、怖かったぁ」

 安堵感からその場に座り込み、深呼吸を数回繰り返す。

(どこだココ?日本だよな?草原?全然見覚えが無いぞ)

 落ち着いたことで、頭が勝手に今まで考えなかったことを考えだす。

 しばらくすると『ガサガサ』と草の揺れる音がした。そこで俺は驚くべきものを見た。腰ほどの高さの草から現われたのは、キツネの様な小動物であった。ただし、頭に角の生えた。

 俺から「まだ日本かも」という淡い期待を奪った小動物は、こちらの姿を確認した瞬間、目の前を横切りまた草の中に消えていった。


「はぁ~、何だよココ、全ッ然わからねぇ。どうして?何で俺が……」

「もし、もし、大丈夫ですかー?」

 現実逃避に一人でブツブツ言い続けていると突然背後から声が掛かる。

 ビクッと反射的に振り向いた俺に2度目の驚き!後ろから声を掛けてきた赤い髪の彼女を見た瞬間、目の前に文字が表示された。


名前:赤の2又尾族のミアネル

職:商人

世界の中央に存在する山岳地方の出身。山だらけの故郷に飽き、世界を見て回る為に商人となった。

以前は、同じ商人の女性と組んで商売をしていたが、今は一人のため若干寂しさを感じている。

▽次へ


 ゲームのステータスのようにウィンドウで囲まれた文字が、彼女の顔の下辺りに表示されており、俺を急かすように次への文字がゆっくりと点滅を繰り返していた。

(はぁ?また、訳の分からないものがでてきた。どうなってんだ?)

「ねえ?ねえ?大丈夫、話聞いてます?」

心配そうに彼女、たぶんミアネルが覗き込んでくる。髪と同じ大きな赤い瞳が不思議そうに俺を見ている。

「……え!ああ、ごめん聞いてなかった」

「あのね、さっき私の名前を言ってましたよね?何で分かったんですか?」

どうやら無意識の内に文字を読み上げていたらしい。何と説明したらいいか悩んでいると。

「やっぱり、さっき『落ちてきた人』なんですね。すごい!昔話じゃなくてホントにいたんだ」

「ん?『落ちてきた人?』なにそれ?」

「空の目から落ちてきた人のことですよ。聞いた話だと珍しい知識と不思議な力をもっているそうです」

 そういって彼女は指を空に向けた。つられて見た青空の中には一点、キラキラと怪しく輝く宇宙があった。

「あの、あの、もし困っているのでしたら近くの町まで案内しましょうか?」

 なんと答えたらいいのか言葉に詰まる。ありがたい申し出だが、危険じゃないのかとか、騙そうとしてるんじゃないかとかが頭を巡る。

 返事を待っているミアネルを見ると、またウィンドウが開き 善意 と表示された。先ほどの名前のことから分かる通り、このウィンドウに表示されることは信頼度が高そうだ。

「うん。お願いするよ」

「では、では、いきましょうか」といってミアネルは俺の腕を両手で掴み進んで行く。

「どこへ?」

「領主の所です。『落ちてきた人』を見つけたら領主の所へ連れて行くそうなので」

 こうして俺の異世界の旅が始まった。

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