受け継がれる魔術
「まず魔術とは魔力をエネルギーとした事象のことです。魔力が無ければ発動すらしません。さらに魔力とはこのユグドラシルの生きとし生けるもの全てが持つ生命エネルギーの事。これが枯渇すると、、、」
「意識を失ってしまう。」
俺には身に覚えがあったのですぐに答える事ができた。
「その通りです。トウヤ様はご経験が?」
「お恥ずかしながら何度か倒れた事があります。」
「ユグドラシルに生まれた者は言葉よりも先に魔力操作を、そして魔力図形を覚えます。そうしないと生きていけないのです。ユグドラシルに来てまだ数日のトウヤ様は大した者ですよ。ドムラとの戦いを拝見していましたが、少しは調節できていました。」
「ははは。でもまだシエル達には及ばないです。」
「そうですね。ただ、トウヤ様には拙い魔力操作を補って余りある、その膨大な魔力量があります。推察するに、、、
ラトシールの翡翠色の瞳が一瞬煌めいたように見えた。
「平均魔力量の10倍はあるかと。」
「10倍!?俺そんなにあるんですか!」
「ハッハッハ!屋敷でのルーシィ達との模擬試合の時に見せたあの巨大な火球。確かにそれくらいの魔力量があってもおかしくないですな!」
ニコラスはやはり酔って上機嫌になっている。
「、、、あの、、、ラトシールさんはなぜ俺の魔力量が分かるんです?」
「、、、まず順を追って話しましょう。ユグドラシルの魔術には大きく分けて3つの魔術と6つの系統が存在します。」
「3つの魔術と6つの系統、、、」
「まず一つ目が魔具を媒介に行使する''基盤魔術''。そしてもうひとつが―」
ラトシールは立てかけてあった俺のリュックを指差した。
「魔導書と魔術書を媒介として行使する''王盤魔術''。」
「前者は魔力が備わっておりその魔具を起動するだけの魔力量がある者ならば、誰でも使えるものです。しかし魔具に込められた魔術以上のものは行使することはできません。」
「そして後者の、、、''王盤魔術''。これは王家の血筋の者のみに許された強力な魔術。みずからの血筋に繋がった魔導書を媒介に発動する固有の魔術です。」
たしかアトルリアの南の森でシエルが言っていた。
【―トウヤに紋章が刻まれて魔術書とリンクした時点で、アトルリア家の魔術はその魔術書を媒介にする事でしか使えなくなったの―】
魔導書。
初めて聞く単語だ。
「魔術書は俺が持っている本ですよね?魔導書とは一体なんですか?」
「契約騎士が用いる唯一無二の媒介。それが魔術書。そして王家に古来より伝わる媒介が魔導書なのです。」
「王国大戦の魔術契約により、魔導書と魔術書をリンクさせる事で''王盤魔術''を行使できるようになります。その時期の王国大戦が終わるまで魔導書は使用不能になるのです。」
なるほど。
俺たちはその''王盤魔術''を使って戦っていたのか。
「この理由により各国の戦力が一時的にゼロになります。王国大戦開催の時に、国を挙げての強行手段である戦争が起こらないのはこの為なのです。」
確かに疑問だった。
大陸の王を決めるという戦いなのになぜ国の戦力を投入して行われないのか。
「えっと、要するにアトルリアとガルニカの魔導書は現在使用不能。その''王盤魔術''は俺が持つ魔術書でしか使用できない。という事ですか?」
「その通りです、、、そして王国大戦の魔術契約は強力です。王候補が存在する国は強制的に参加することになります。」
「強制的にって、、、」
強制参加なんて普通ありえない。
魔術を使っての戦いは正直命のやりとりだ。
戦いを拒む人もいるはず。
「、、、ここツウリュウにいたテトとトウヤ様が出会ったように、、、運命力とでも言うのでしょうか。王国大戦から王候補は絶対に逃げられないのです。」
たしかに俺たちは出会った。
これが必然だったとでも言うのか。
少しだけ寒気がした。
「話を戻しましょう。''基盤魔術''と''王盤魔術''。この2つはトウヤ様も今まで見た事がありますね?」
「はい。知らず知らずのうちに目にしていたようです。」
ドムラが使っていた電撃が走る鎖。
警備兵が付けていた腕力が増強される腕輪。
あれが''基盤魔術''というやつだったのか。
「そしてこれが3つ目の―
ラトシールの瞳から魔力が溢れる。
その翡翠色の目が更に強く煌めいている。
「''継盤魔術''、、、先天的に発現する固有魔術。代々受け継がれ稀有な能力が多い魔術です。わたくしの''継盤魔術''の名前は真透眼。魔力の流れを映像として見ることができる力です。」
ラトシールの瞳から強力な魔力を感じる。
「''継盤魔術''を持つ者はユグドラシルにごくわずかしか居ない。王家の血筋に発現することが多いと聞きますな。」
ニコラスがラトシールの瞳を見ながら語る。
「''継盤魔術''、、、受け継がれる魔術、、、ということは―
ガチャッ
バルコニーの扉が開く。
「ママ。ここに、、、居た。今日は一緒に寝た、、い。」
俺の言葉を遮り眠たそうなテトが歩いてきた。
「あらあら。テト。今ママはトウヤ様に大切なお話しをしているのよ。もう少しだけ待っていて。ね?良い子だから。」
「ははは。行ってあげて下さい。せっかくゆっくり一緒に寝れるんです。俺のことは構わずに。」
「トウヤ様、、、ありがとうございます。続きのお話はまた今度ということで。ニコラス様も深夜の語らいにお付き合いくださりありがとうございました。」
「ハッハッハ!ゆっくりお休みください。テト殿は今にも寝そうですよ。」
ラトシールはペコリと頭を下げる。
2人は手を繋いでゆっくり屋敷の中に歩いて行った。
「さあ、トウヤ殿。ワシたちも今宵はもう眠るとしますかな。」
「そうですね、、、今日は、、、とても疲れて、とても楽しい日でした。」
俺とニコラスも屋敷の中に入り就寝することにした。
長い1日が終わった。
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