一件落着
「話は聞かせてもらった。獣人族の事はワシに任せてもらおう。ついでにその魔獣もな。」
ニコラスがメガネを持ち上げながら近づいてくる。
一歩後ろからルーシィがついてきている。
「ニコラスおじさん!どうしてここに!?」
シエルが駆け寄り驚きの声をあげた。
「ハッハッハ!シエル殿とトウヤ殿が心配でツウリュウを歩いておったらなんと偶然にも!ここに辿り着いてしまった!いやいや偶然とは怖いものだ!」
「、、、ニコラスおじさん。全部知ってて私とトウヤに依頼したわね?」
「いやはや何のことかな?、、、しかし見事に事件を解決したようだ。さすがはアトルリアの姫君と言ったところですな!」
完全にニコラスはとぼけている。
俺はテトに危うく殺されそうになっていたというのに。
「はぁ。まぁいいわ。それより獣人族の人達をどうするの?」
「おお!そうだった!ルーシィ!説明してやりなさい。」
ニコラスの隣に並ぶルーシィ。
「現在旦那様のお屋敷では厨房、経理、書斎管理、事務等の人手が不足しております。皆様がよろしければ旦那様のもとで働かないかと申されているのです。」
「そのとおり!しっかり給料は出すし、お主達が良ければうちの屋敷の部屋に住み込みでもいい。幸い屋敷には空き部屋が数多くあるのでな。」
―――獣人族達は顔を見合わせ沈黙。
「い、いや!お主達が良ければでいいのだが。」
「ぜひお願いします!」
「やった!仕事が見つかったぞ!」
「こちらこそお願いします!」
ニコラスの焦りをよそに歓声があがる。
「ありがとうございます。ニコラス様。」
ラトシールがニコラスのもとに近づく。
「あなたは、、、まさか!ラトシール王妃!?なぜこのようなところに!」
「王妃などとおやめください。今はただの母親です。ニコラス様、私もお世話になってよろしいでしょうか?」
「も、もちろんですとも!いやしかし、、、そうですね。この話はここではやめておきましょう。屋敷に戻って詳しく話をお聞かせ願いたい。」
ニコラスはラトシールの手を取り笑いかける。
その光景は気品に満ちていた。
「ニコラスさん。獣人族の皆さんをありがとうございます。」
俺はテトを横に連れてラトシールの後ろから喋りかけた。
「おお。トウヤ殿。ひとつの壁を越えられたようですな。全身に魔力が漲っておられる。おや?そちらの娘さんは、、、」
「テトはテト。はじめまして。」
テトはペコリとお辞儀をする。
「まさかラトシール様の娘ですかな!おお!これはこれは、、、若き日のラトシール様にそっくりで、、、」
「ニコラスさん、ラトシールさんの事ご存知なんですね。」
「ニコラス様とは''王家茶会''で少しお話をしたことがあるのですよ。」
ラトシールはテトの頭を撫でながら教えてくれた。
王家茶会、、、たしか屋敷でニコラスが言っていたような。
「ニコラスのオジキ、、、クソッ何でこんなところに、、、」
壁に寄りかかり息を切らしながら座っているドムラが口を開く。
「久しぶりだなドムラよ。ザムザは元気しておるか?」
「知らねえよ、、、親父は自分の商売のことしか眼中にねぇからな。俺様の負けだ、、、どこへでも連れてけよ。」
「お主がワシの屋敷から盗みを働いた事は既にわかっておる。獣人族を使った生命合成魔術にまで手を伸ばしおって、、、まぁ詳しい話は然るべき場所で話してもらうとしよう。」
さっきとは打って変わってニコラスの眼差しと声色は真剣だ。
少しだけ悲しさが表情に見て取れた。
ザムザとは知り合いと言っていた。
ならドムラとも面識はあったのだろう。
「パパはどうなるの?」
テトがニコラスの袖を引いて訴えかける。
鎖に繋がれた魔獣を指を指している。
「大丈夫だよ。あの魔獣はこの倉庫もろともワシが管理する、、、解術の方法を見つけるのだろう?その時までしっかり守ってあげるとも。」
「そっか。ありがと。ニコラスおじいちゃん。」
笑顔を見せるテト。
ニコラスが心優しい人だと分かったのだろう。
「おじいちゃんとは!ハッハッハ!とりあえずこれにて一件落着である!ハッハッハ!」
地下の大きな広場にニコラスの声がこだまする。
ドムラとの戦いはこれで幕を閉じた。
現在使用可能呪文
使用者:シエル・アトルリア
初期呪文
【火焔球】
手のひらに火球を生み出し、前方に放出する。
弍頁呪文
【焔身一体】
使用者の脚力を著しく増幅する。
副次効果として、肉体ダメージの小回復と動体視力が底上げされる。
使用者:テトラ・ガルニカ
初期呪文
【露命治癒】
小さな猫の使い魔を召喚、使役する。
対象者の傷を癒す能力がある。
弍頁呪文
【守護堅円】
多数の六角形の結界を瞬時に円形に展開する。
出力の弱い魔術を拡散させ無力化することができる。




