三言禁忌
―数刻後
檻に入れられていたロゥリンと獣人族の奴隷達の解放にはドムラの椅子に置いてあった鍵の束が役に立った。
奴隷達の首につけられていた奴隷輪の解錠もその鍵でできた。
俺たちは奴隷達の歓声を浴びながら丸焦げになったドムラのそばに立っていた。
「本当に良いんですかテト?」
俺はドムラを見つめるテトに喋りかけた。
「うん。ドムラは罪を償わなきゃいけない。ちゃんとした裁かれるところに行ってもらうの。」
「私はこの本が戻ってきたからあとはどうでも良いわ。」
シエルはそう言うと手に小さな手帳くらいのサイズの本を俺に見せてきた。
後から聞いた話だがニコラスの家から本を盗んだのはテトらしい。
ルーシィ達の目を盗んでやり遂げるとは流石というか何というか。
ドムラの椅子についていた数個のボタンのうちの一個が隠し戸棚のスイッチになっていた。
そのおかげですぐに探していたニコラスの本を見つけることができたのだ。
「本当にありがとうごさいます。この御恩は一生かかっても返せるものではありません。この子を、、、獣人族の皆さんを助けてくれて本当にありがとう、、、」
ラトシールはテトの手を握りながらお辞儀をしている。
「良いってことアルよ!偶然とはいえ私たちもドムラに用があったアル!こんな悪行を目の当たりにして見過ごせないアルね!」
「ロゥリンあんた初っ端に閉じめられてたわよね、、、何もして無いじゃない!」
腰に手を当てて踏ん反りかえるロゥリンにシエルが喝を入れる。
「そ!れ!は!シエルとトウヤを逃すために仕方なく捕まったアル!」
「ふーん。本当かしら?」
言い合いを続ける2人をよそに俺はドムラを見る。
かろうじて息はあるようだ。
「トウヤお兄ちゃん、、、お願い。」
「わかりました。露命治癒!!」
テトの足もとに魔法陣が出現。
そこから小さな猫が現れる。
「お願い。ドムラを治してあげて。」
テトが猫に話しかける。
小さく鳴くと猫は仰向けに倒れているドムラのお腹に乗った。
周りにキラキラと翡翠色の魔力が降り注ぎ、ドムラの火傷は綺麗に治っていった。
「、、、なんで、、、俺様を、、、」
しどろもどろになりながら喋るドムラ。
立ち上がる体力はまだ回復していないようだ。
「アンタには死なれちゃ困るんだってさ、、、いいか。約束しろ。もう金輪際、2度と獣人族に関わるな。次はテトが許しても俺が許さない。」
魔術書から赤と緑の魔力が漏れる。
「ヒィイイイイ!わかったよ!、、、もう関わらねぇよ!奴隷商家業もこれで終わりだ、、、どうせこれが明るみに出ればツウリュウに俺の居場所なんてねぇ、、、」
ドムラはズルズルと身体を少し起こし壁にもたれながら地面に座る。
後ろにいた数人の獣人族が小さな歓声をあげている。
「トウヤお兄ちゃん、、、本当にありがとね。」
テトとラトシールは瞳に涙を浮かべている。
「こちらこそです。テトがいなければ俺たちは人質を盾に使われて、どうにもなりませんでした。」
俺はテトの頭を撫でた。
「父親の事は残念でした、、、魔獣の中から救い出せるといいんですが。」
「、、、夫は生命合成魔術の最初の被害者でした、、、2年前、他の奴隷達を守るために自ら名乗り出たのです。そこから数ヶ月おきに1人、また1人と連れていかれました。」
ラトシールは続ける。
「夫のことは、、、諦めたくはありません。しかしこの2年の歳月でテトと私は前に進もうと決めたのです。」
「そう、、、ですか、、、」
なかなかやりきれない。
『時間が解決する』
今までいい言葉だと思っていた。
「、、、シエル。あの魔獣、、、魔術の力でどうにかなりませんか?」
ロゥリンとの言い争いをやめてこちらに近づいてきていたシエルに問いかけた。
「''魔術を解く魔術''これはかなり高等な魔術師じゃないと無理ね。アンタ何か方法知ってるんなら今のうちに教えなさい。」
倒れているドムラをシエルが睨みつけている。
「正確には、、、この生命合成魔術は俺様の魔術じゃない。とある流浪の魔術師が魔具をくれた。その魔具が魔獣の核になってる。」
「その魔具の名前は?」
「たしか、、、隷魂試混のプロトスフィアって名前だった筈だ。能力は魂混。数個の魂を魔具自身に留める、、、ただそれだけだ。しかし効果は絶大!俺様のチンケな魔力でもあれだけ凶悪な魔獣が生まれた!」
「調子に乗らないで。」
シエルが睨みを効かせるとドムラは口を閉じて小さく震えていた。
「生命合成、、、この魔術1番の問題は合成した生命が反発し合い、強烈な拒否反応を示すこと。」
ラトシールが悲しそうな顔で語る。
「体ひとつに命はひとつ。それが世界の理です、、、拒否反応が起こると合成された生命体は内部から細胞が破壊されていきます。ボロボロに崩れ去るのです。」
「それは、、、凄まじいですね。」
俺はラトシールの話に苦笑いするしかなかった。
「それを強制的にひとつの体に収める、、、プロトスフィア、、、一体誰が何のために作った魔具なの?」
鎖で身動きが取れない魔獣を見つめながらシエルは呟いた。
「トウヤ、このユグドラシルには三言禁忌と呼ばれる言葉があるの。」
「三言禁忌?」
「ええ。3つの絶対に使ってはいけない魔術。」
「なぜ使ってはいけないんですか?」
数秒の沈黙―――
「、、、使われた対象者が、、、死ぬからよ。」
「死ぬなんて、、、そんな。」
「その三言禁忌に生命合成魔術があるの。」
「そう、、、なんですね、、、魔術って本来、人の願いが形になった物じゃないんですか?、、、」
「そうね。私もそう願っているわ。」
俺は悲しい気持ちになった。
しかしそれ以上にシエルは辛そうだった。
「テト、、、必ず。必ず俺が父親を助ける方法を見つけてあげますから。」
テトは笑顔で俺の目を見つめている。
「トウヤお兄ちゃん。テトも一緒に見つける。今度はテトがトウヤお兄ちゃんを助ける番。」
テトの白銀の猫耳がぴょこぴょこ跳ねている。
「一緒にって、、、せっかくお母さんと自由になれたのに!俺たちに着いてくるって言うんですか!?」
俺はラトシールを見る。
「、、、連れて行ってやって下さい。その子は王家の血筋。いつかはこんな日がやってくると思っていました、、、テトを頼みます。」
ラトシールは深々とお辞儀をする。
「、、、でもラトシールさんと他の獣人族の方々はどうするんです?魔獣もここに放ったらかしってわけには―
バン!!
入ってきた入り口の扉が勢いよく開く。
「ワシに任せてもらおう!!!」
後ろにルーシィを引き連れたニコラスが満面の笑みで立っていた。
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