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世界樹の紋章


「ちょこまか逃げやがって、、、テト!かまわねぇ!2人同時にやっちまえ!」


ドムラはイライラしているのか貧乏ゆすりをしている。


ピィィィイ!


テトの指笛で合成魔獣がこちらに迫る。


「っ!シエル!髪の毛が、、、」


シエルの髪がだんだん毛先から金髪に戻っていく。

それにつれて身体に纏っていたオーラも消えた。


焔身一体(ラフォルザーレ)。効果は60秒くらいね。」


60秒か。

意外と呪文の効果は短いようだ。


考えろ。

脳味噌を回せ。

この新しい力で何か活路を見出すんだ。


「魔獣がもうくるアルよー!」


ロゥリンが檻の中で叫んでいる。

檻は天井から落とすギミックの為に上から鎖で繋がれていた。


これだ!


「シエル!もう一度弐頁呪文(スペルオブセカン)を唱えます。効果発動と同時に魔獣の気を引いてください!あとは俺に任せて!」


「何か策があるのね、、、いいわ!トウヤを信じる!」


焔身一体(ラフォルザーレ)!」


シエルの身体が真紅のオーラに包まれる。

金色の長い髪がどんどん紅く染まっていく。


ドンッ!!!


シエルが床を蹴って走りだす。

凄まじい早さだ。

初速の衝撃波だけで周りの空気が揺れる。


ギャオオオオオオオ!


近づくシエルを攻撃しようと魔獣は爪を振るうがかすりもしない。


その隙に俺はロゥリンの檻の方へ走る。


「トウヤ!何してるアルか!こっちは逃げ場がないアルよ!」


檻の中のロゥリンがガンガンと格子を叩いて叫んでいる。


走っている最中に気づいたがどうやらアトルリアの加護も強化されている。

まさか新しい呪文が発現するたびに強くなるのか?

好都合だ。


俺は地面を蹴ってジャンプしロゥリンの檻の上に着地した。


「、、、トウヤそんなに高く跳べたアルか!?」


驚愕しているロゥリンをよそに俺は魔獣を見る。

シエルの動きを追えていない。

全ての攻撃が悉く空を切っている。


「ぐぅぅ!もういい!テトぉ!先にあっちの小僧の息の根を止めろ!!」


テトがこっちを見る。


ピィィィイイイイイ!


魔獣のドス黒く濁った瞳が俺を見据える。


ギャロロロロロォオオ!!!


シエルを捉えきれないストレスで怒っているのか、地響きが起こるほどの鳴き声をあげながらこちらに突進してくる。


まだだ。

まだ逃げるわけにはいかない。


ギャオオオオ!!!!


魔獣の爪が目前に迫った瞬間、俺は後ろに飛び退きその攻撃を避けた。


バキィィィン!


そのままその爪は檻に繋がっている巨大な鎖を引きちぎる。


「きゃぁああ!」


ロゥリンが檻の中で悲鳴をあげているがこれは恐怖によるものだろう。

身体にダメージはないようで安心した。


檻から引きちぎられた鎖が天井から伸びてグラングラン揺れている。


「シエル!今です!天井を砕いてください!」


シエルは魔獣の尻尾から頭にかけて走り跳躍した。


「そいういことね!、、、おりゃぁぁあ!」


ドガァァァ!!


シエルの強烈な飛び蹴りにより天井が砕かれ、巨大な鎖は重力を帯びて落下しだした。


「その鎖で魔獣を巻きつけてください!」


「わかってるって!」


砕かれた天井を足場にシエルは檻に向けて''真下''にジャンプする。


「おっりゃあああああ!」


落下中の鎖を手に取るとシエルは高速で魔獣の周りをぐるぐると回り魔獣を縛り上げた。


魔獣は鎖で前足と後ろ足を拘束され身動きが取れない。

そのまま床に大きな音を立てて倒れこむ。



ズシャァァア!



「おい!嘘だろぉ!!俺様の人造合成魔獣(キメラロイド)がぁ!!」


ドムラは椅子から立ち上がり叫んだ。

持っていたグラスを椅子から落とし粉々に割れる。


「やりましたね!シエル!」


俺はシエルの元に駆け寄り歓声をあげた。

もうすでに髪色は金髪に戻っている。


「はぁ、はぁ、、、トウヤの作戦がうまくいったわね。」


「檻の話を思い出したんです。もしかしたら鎖も魔断石(まだんせき)でできてるんじゃないかって。」


「たしかに合成魔獣は沢山の生物の混成体(ミックス)、、、魔力(マナ)がエネルギーの源だものね。」


''魔術でできた生命体なら魔断石で動きが止まるはず''という俺の予想は見事的中したわけだ。


ギャオオオオ!!


魔獣は大声で威嚇しているが自由に動くことはできない。


「シエルナイスアル!トウヤもめちゃかっこよかったアル〜!」


ロゥリンが檻の中で髪のお団子を揺らしながら跳ねている。


「ははは。俺は何もしてませんよ。全部シエルのおかげです。」


「2人の力よ。」


パン!


俺は笑いかけるシエルとハイタッチして再びドムラに目を向ける。


「ぐぐぐぐぐゥゥ!何してるテトォ!早く人造合成魔獣(キメラロイド)を動かせ!」


ピィィィイ!

ピィィィイ!


何度も指笛を吹くテト。

しかし魔獣は床に倒れたまま雄叫(おたけ)びをあげ続けるだけだった。


「このぉ!!役立たずがぁ!」


ドン!


ドムラは椅子がある階段の上からテトを蹴り飛ばした。


「うっ!ぐっ!がっ!」


身体を打ち付けながら階段を転げ落ちるテト。


「テトォ!」


ドムラの隣のラトシールが悲痛な声を上げる。

すぐにテトを追いかけようとするが、ドムラが持つ鎖が首輪につがっておりそれを阻止する。


「テト!」


俺は階段から落ちてうつ伏せに倒れているテトに駆け寄った。


「ドムラ、、、」


シエルは怒りの表情でドムラを睨みつけている。


「大丈夫ですか!?テト!しっかりしてください!」


ゆっくりテトは起き上がる。


「マ、ママ、、、はぁはぁ、、、テトは大丈夫。」


「はぁはぁ、、、お前の大好きなママが苦しむ姿を見たくないならその目障りな小僧を今すぐ殺せ!テト!」


ドムラの額から汗が流れている。

かなり焦っている様子だ。


「ダメよテト!ママは大丈夫だから!その人を殺してはダメ!」


「うるさいんだよラトシール!」


バチバチバチバチ!


「きゃああああああ!」


ドムラの鎖から首輪に魔力(マナ)が流れ電撃のような痛みがラトシールを襲う。


「やめて!わかったから!お願い!ママを傷つけないで!」


テトが叫ぶ。


そして俺の方をしっかりと見据えるテト。


ビキビキビキ


目が一段と暗くなり右手の爪が長く伸び鋭くなる。

獣人族の特性だろうか。


俺はテトの目の前に立っていた。

ああ。

この子は囚われているんだ


目に見える首輪だけじゃない。

心の奥深くに鎖でがんじがらめにされているんだ。


グサッ!


テトの鋭い爪が俺の肩に突き刺さる。


「トウヤ!」


「うっ、、、俺に、、、任せてください。」


シエルが俺の方に走ってこようとするがそれを俺は静止する。


「任せてくださいって、、、トウヤ、、、血が、、、」


俺の左肩を貫通したテトの爪は血で真っ赤に染まっている。

ドクドクと肩からも血が流れている。


ズブッ!


肩から爪が引き抜かれ大量に血が流れる。

返り血でテトの顔は汚れている。


「どうし、、、たんですかテト、、、これじゃぁ俺は倒れませんよ、、、」


俺はテトの目を見つめながらテトに近づく。

テトの血まみれの爪は小さくガタガタと震えている。


「いや、、、こないで!こうするしかないの!仕方ないの!テトは、、、テトとママの世界を守る為に、、、お兄ちゃんを殺すしかないの!」


ズシャッ!


腹部を切り裂かれまた出血する。


「トウヤ!もうダメッ!死にたいの!?」


シエルが泣きそうな顔で叫んでいる。


俺は肩と腹から出血し今にも倒れそうになりながらテトに歩み寄る。


「テトの世界は、、、こんなに暗くないです、、、テト達の世界は、、、もっと光に溢れて自由なんです。」


ポタポタと血が滴り落ちる。

洋服も真っ赤に染まっている。


「なんで、、、いや、、、こないで、、、こないで!」


グサッ!


テトの右手の爪が左腹部を貫く。


「うぐっ、、、」


俺の口から血が噴き出す。

内臓の出血が食道を逆流してきたようだ。


貫いているテトの右手を掴む。

テトの手はとても細く、そして震えている。


「ずっとうまくやってたの!テトが我慢すれば、、、うまく、、、それなのに、、、」


テトの瞳が暗闇から翡翠の色をだんだんと取り戻している。


「痛くないですよ、、、こんなの、、、痛いのは、、、テト、あなたの方ですよね。」


綺麗な翡翠色の瞳からは大粒の涙が溢れていた。


「もう、、、はぁ、、はぁ、、、我慢しないでください。俺は、、ここにいます、、、一人きりで頑張りすぎる必要なんて、、、ないんです、、、」


俺は血だらけの手でテトの頭を撫でる。

気づくとテトの爪は元に戻っていた。


「、、、ひとを信じてもいいの?」


「もちろんです。」


テトは俯きながら喋る。


「、、、テト達、自由になれるの?」


「もちろんです。」


「、、、トウヤお兄ちゃん、、、」


「はい。」



「テト達を救い出して。」



―――瞬間



キィィィィイン!


テトと俺の足元から大量の魔力(マナ)が噴き出し巨大な魔法陣が出現する。


中心には金色に輝く大樹(たいじゅ)の紋章。


「なんだ、、、これ、、、」

「何これ、、、」


俺とテトが金色の魔力(マナ)に包まれていく。


「嘘でしょ、、、あれは世界樹ユグドラシルの紋章!つまり、、、王国大戦(ワールドクラウン)契約門(けいやくもん)!」


シエルの髪の毛が金色の突風になびいている。


左手の甲が熱い、、、

何だこれは、、、前にもどこかで感じたことのある魔力(マナ)、、、

テトは無事なのか、、、


「どうなってやがる!なんだこれは!?」


ドムラは身を乗り出しその光景を驚愕の表情で見ていた。


「テトラ、、、ついに出会えたのですね、、、信頼できる人間に、、、」


「ラトシール!どういうことだぁ!」


「あの子はテト。(まこと)の名をテトラ・ガルニカ。」


「ガルニカ!?まさかテトが獣神国(じゅうしんこく)ガルニカの姫だとでも言うってのかよぉ!!!」


ドムラはどんどん大きくなる金色の光の前に叫ぶことしかできなかった。


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