弐頁呪文
熱い。
手の甲の紋章が焼けるように熱い。
この感覚。
最初にシエルに会った時に似ている。
全身から魔力が噴き出すこの感じ。
俺の身体と魔術書から真紅のオーラが澱みなく溢れている。
「、、、これは、、、なんだ?魔力が溢れてる。」
誰の目にも明らかな異常な魔力は、そこにいる全ての生物の目を引いた。
「なんだぁ?あの魔力量は!?テトぉ!あの小僧が何かする前にその女を殺せ!」
ドムラは焦りながらテトに命令する。
ピィィィイ!
ギャオオオオオオオ!
テトの指笛を合図に魔獣の凶悪な牙が、シエルを喰いちぎろうと唸り声を上げて襲いかかる。
「っ!」
シエルは一瞬俺に気を取られていたのか逃げ遅れている。
ヤバい!
どうする!
「トウヤ!早く唱えるアル!」
ガシャガシャと檻の格子を揺らしながらロゥリンが叫ぶ。
「唱えるって何を、、、」
下に目を落とす。
魔術書の中から光が漏れているのに気付いた。
読める。
次のページが読める!
「頼む、、、どんな呪文かわからないが、、、シエルを救う力になってくれ!悪を打ち砕く光となれ!」
コォオオオオオ!
魔術書の光がどんどん大きくなる。
「弍頁呪文、、、焔身一体!」
ゴシャァァアア!
激突音と衝撃が響き渡る。
巻き上げられた煙で見えない。
そんな、、、
間に合わなかったのか、、、
「シエルーー!」
「嘘アル、、、シエル、、、」
ロゥリンがペタンと腰を落とす。
「ヒャーハッハッハ!!まず1人ィィ!次はお前だ!小僧!やっちまえテトォ!」
「まだ終わってない。」
表情を変えずにテトは呟き、魔獣の方を指差す。
「何!?」
―――煙が晴れていく
魔獣の口は床を抉り取り床に穴が開いている。
よく見ると魔獣の頭上に赤く光る人影が見える。
「シエル!無事だったんですね!」
俺が呼びかけるとシエルは腰に手を当てて笑顔で微笑んだ。
そこで俺は気づいた。
シエルの体に炎のようにメラメラと赤色の魔力が纏われている。
さっきの俺と同じような感じだ。
ここまでビリビリとシエルの魔力が伝わってくる。
しかし1番の変化は髪の色。
燃えるような真紅の髪色。
毛先から魔力が溢れているのか、ところどころ炎のようにゆらめいている。
「シエル、、綺麗アル、、、」
ロゥリンは見とれているようだ。
「くっ、、、テト!調子に乗らせるんじゃねぇ!さっさと始末しやがれぇ!」
ピィィィイ!
指笛の号令で魔獣が頭上のシエルに向かって爪で攻撃する。
シエルは動かない。
巨大な爪が身体に触れるかというところでシエルが消えた。
魔獣の爪は空を切る。
シエルはどこに行った?
俺は目を凝らしていたが完全に見失ってしまった。
「トウヤここよ。」
真後ろから声。
振り向くと指で頬を押される。
「シ、シ、シエル!?どういうことですか!?何でこっちに?というか腕の傷大丈夫ですか!?」
「トウヤ焦りすぎ!でも心配してくれてありがとう。大丈夫、、、トウヤのおかげで助かったわ。」
笑顔を見て心が軽くなる。
シエルの腕を見ると血が止まっていた。
「俺のおかげって、、、まさか呪文の力ですか!?」
「そうよ。体が軽い、、、''増幅系呪文''みたいね。体のダメージも少し回復してるし、脚力強化ってところかしら。」
シエルは右足をぷらぷらさせている。
シエルの足元には急ブレーキの跡なのか床が少し焦げている。
「脚力強化って、、、それにしても早すぎませんか、、、」
「ふふふ。周りがゆっくりに見えるくらいは早くなってるみたいね、、、でも髪の色まで変わっちゃうなんて、、、」
苦笑いする俺を見てシエルは笑う。
「、、、綺麗な色ですよ。」
「ありがとう、、、さぁ!無駄話はここまでよ!ドムラのやつにこの拳をお見舞いしないと!」
シエルは目の高さに手を上げ拳を握りしめる。
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弍頁呪文
【焔身一体】
使用者の脚力を著しく増幅する。
副次効果として、肉体ダメージの小回復と動体視力が底上げされる。




