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聞こえる悲鳴


ギャオオオオオオオン!


広場全体に響き渡る合成魔獣の声。

膝が震える。

見れば見るほど恐ろしい。


さっきは何とかシエルを助けようと無我夢中で走ったが、いざ冷静に魔獣を見ると足がすくむ。


知性を微塵も感じない濁った瞳。

おそらくコイツ単体では戦闘中の細かい戦略などできないだろう。

しかし後ろのテトがそれを(おぎな)っている。


指笛を使ってこのパワー特化の合成魔獣を動かしている。

爪先がかするだけで致命傷になりかねない。

腕力だけでも脅威なのにそこに頭脳がつくとなるとこれはもうヴェルデサーペントなどの比ではない。


「いい?トウヤ!トウヤは魔獣の攻撃を避けることだけに集中するの!私がヘイトを買うから隙を見ては火焔球(ボヘル)を打ち込んで!」


「わかりました!」


シエルは合成魔獣の右側に走っていく。


「テトぉ。遠慮はいらねぇ!コイツらを叩き殺してゆっくり死体から魔術書(ブック)を探すからよぉ!」


ピィィィイ!


テトが指笛を鳴らす。


走っているシエルに魔獣はその巨大な爪で襲い掛かる。


「動きが単調よ!」


シエルはスピードを緩めずにその攻撃をひらりと(かわ)す。


ドガァァァア!


魔獣の爪が広場の床を砕く。


「ナイスです!シエル!」


シエルが走りながら魔獣の頭に狙いを定める。


「トウヤ!」

火焔球(ボヘル)!」


ズガァァァン!


魔獣の右頬に火球が命中する。

衝撃で魔獣が少しよろけた。


「いける!」


俺は拳を握った。

これはいける。


見たところかなり効いている。

シエルのスピードは魔獣の攻撃より速い。

この作戦でいける!



―――俺が勝ちを確信した瞬間



「イャァァア!」

「痛いいいィィイ!」

「ダズケデぇぇえええ!」


魔獣の胴体にある無数の顔が叫び出す。


「どうゆうこと!?まだ合成された人たちは意志があるの!?」


シエルが足を止める。


「酷ぃなぁ?何の罪もない人にそんな攻撃を打ち込むなんて、、、ヒーヒッヒ!」


ドムラはニヤけながらグラスで酒を飲んでいる。


「ドムラぁ!あんた一体何をしたの!?これは、、、普通の生命合成魔術じゃ無いわね!」


「いやいやいや、簡単な話さ!イッヒッヒ!その人造合成魔獣(キメラロイド)が受ける痛みを中の生物みーーーんなで肩代わりしてるだけだよぉ!知能を下げたくなかったもんでなぁ、、、もちろん痛覚も意識も残してあるよぉぉん!」


口から(よだれ)を撒き散らしながらドムラは笑う。


「そんな、、、俺たちの攻撃は合成に使われた獣人族のみんなにダメージがいくってことですか!?」


(むご)い、、、どこまで命を(もてあそ)べば気がすむの、、、」


ピィィィイ!


テトが指笛を吹く。


魔獣の(さそり)のような形の巨大な尻尾がシエルを串刺しにしようと襲い掛かる。


「くっ!」


ドガァァァアア!


「ーーっ!」


動揺しているシエルは一瞬逃げ遅れた。

尻尾は当たらなかったものの、砕かれた床の衝撃でよろける。


テトはそれを見逃さなかった。


ピィィィイ!


指笛と同時によろけたシエルを魔獣の腕が襲う。


「シエル!危ない!くっ!、、、火焔(ボヘ)、、

「トウヤ!呪文は唱えないで!」


シエルは唱えようとした俺を(さえぎ)る。


ギリギリでシエルは身を(ひね)り魔獣の攻撃を避ける。


ドガァァァアアン!


またもや強力な爪が床を砕く。

しかし砕かれた床の破片がシエルにぶつかる。


「きゃぁぁあ!」


シエルは横に吹き飛ばされる。


「シエルッ!」


俺はシエルのもとに向かおうと走り出した。


ピィィィイ!


ドガァァァアア!!


テトの指笛で魔獣は俺とシエルの間に尻尾を叩きつける。


テトのやつ、俺をシエルに近づけないようにしたのか。

確実にシエルを殺すつもりだ。

ヤバい。


「く、、、シエルッ!起きてください!」


起き上がったシエルはぜぇぜぇと肩を揺らしていた。

腕からは出血し、服が赤く染まりつつある。


「ト、トウヤ、、、呪文は使ったらダメ、、、関係ない人を傷つけたくない、、、わ、、、」


「でも、、、でもシエルが!攻撃しないとシエルがやられます!」


「それでもっ!、、、ダメなの、、、トウヤお願い、、、」


俺は歯を噛み締める。

そりゃ俺だって何の罪もない人を傷つけたくはないさ。

しかしシエルが殺される。


それは耐えられない。


「くそ、、、こうなったら!」


ダメ元で近接戦闘を仕掛けるしかない。

アトルリアの加護で俺の身体も強化されている。


俺とシエルを遮る尻尾にダッシュする。

スピードに乗りそのまま飛び繰り出す。


ドガァァ!


魔獣は尻尾をそのまま俺の方に向けて叩きつける。


「ぐぁぁあ!」


俺は強烈な衝撃を受けながら後ろに飛ばされる。


「ぐ、、、くそ、、、」


アトルリアの加護のおかげでそんなにダメージはない。

やはりあの魔獣、腕力はすさまじいが尻尾は針に注意すればパワーはそんなにない。


「ククククク。口ほどにもないなぁ!関係ない人間を傷つけたくないだぁ?甘いよ!甘いんだよ!そんなんで大陸の王になろうなんて100年早いんだよ!さっさと魔術書(ブック)を渡せ!俺が代わりに王になってやるよ!」


俺の中で何かがゆらめく。

何だこの気持ち。

燃えるような感情。

これは怒りか。


「、、、おい。」


「んぁ?なんだ?」


「お前が何を知ってんだよ、、、お前が、、、シエルの何を語ってんだよ!」


「、、、トウヤ?」


シエルが俺を見る。


「シエルはお前みたいに私欲のために生きてない!民のことをちゃんと考えてる!シエルは誰よりも女王にふさわしい人間だ!、、、お前は生きてちゃいけない、、、絶対ぶっ飛ばしてやる!」


「ハッ!口先だけなら何とでも言えるんだよ!、、、そんなに大事なら守ってみろよ!契約騎士(キャバリエ)さんよぉ!テト!」


ピィィィイ!


テトの指笛で魔獣が両手でシエルに襲い掛かる。


ギャオオオオォオオ!


非情にも今までの攻撃の中で一番早い。

ふらつくシエルは走りながら間一髪で避けているが、このままでは確実に爪で引き裂かれる。


「シエル!、、、くそ、、、俺は何のために召喚されたんだ!女の子1人守れないで、、、何が騎士だ!、、、」


「トウヤッ!」


走りながら俺の名前を叫ぶ。

顔を上げるとシエルと目が合う。



「信じてるわ。トウヤ。」



真紅の魔力(マナ)が俺の身体と魔術書(ブック)から噴き出した。


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