人造合成魔獣
広場の天井の照明がギラギラと俺たちを照らす。
「おいおい、そんなに警戒しないでくれよ。俺様の名前は知ってるんだろうが改めて自己紹介だ。ドムラ・ストラウス。ツウリュウで奴隷商を営んでいる。」
シエルを横目で見ると明らかに敵意を持ってドムラを睨んでいる。
「単刀直入に聞くわ。最近ここの獣人族を使って盗みを働いたんじゃない?」
「盗み?そんなのやり過ぎてどこの屋敷の事言ってんのかわかんねぇなぁ。それに、、、礼儀がなってないなぁ。人が名前を名乗ったら自分も名乗るもんだろう普通?なぁ、違うかラトシール?」
ドムラはニヤニヤ笑いながら横にいた獣人族の顔を撫でるように触る。
「ママに触るな!」
俺の隣のテトが大きな声で叫ぶ。
ラトシールと呼ばれた綺麗な顔立ちの獣人族。
ママ?まさかあの隣に鎖で繋がれているのがテトの母親なのか?
「んん?良いのかテトォ?そんな口の聞き方して、、、まぁいい、、、王国大戦参加者をしっかり俺様のとこまで送り届けてきたんだからなぁ!」
ドムラが椅子についているスイッチを押す。
その瞬間、俺たちの上から鋼鉄の檻が降ってきた。
「危ないアル!」
ロゥリンは俺とシエルを手で横に突き飛ばす。
ガラガラガラガラ!
ガシャァン!
ロゥリンのおかげで俺とシエルは間一髪、檻に閉じ込められなかった。
しかしロゥリンだけ鋼鉄の檻の中に取り残されてしまった。
「ロゥリン!くっ!ドムラ!いきなり何するのよ!」
「ハーッハッハッハ!いきなりも何も俺様のアジトに来た時点でお前らは詰んでんだよぉ!テトがお前らを助けたと思ったかぁ!?残念!テトはなぁ最初から俺様の駒なんだよ!」
テトは罠のことを知っていたのか既にドムラのとなりに立っている。
「そんな、、、テト!俺のことを助けてくれたじゃないですか!、、、」
「全部ご主人様の為。」
テトの目からは光が消えている。
あんなに綺麗な翡翠色の目をしていたのに。
「トウヤ!この檻、火焔球で壊すわよ!」
「わかりました!ロゥリン少し下がってください!、、、火焔球!」
ドガァァン!
シエルの右手から火球が放たれ、ロゥリンが閉じ込められている檻に激突した。
しかし煙が晴れると檻には傷ひとつついてない。
「うそ!?ちょっとトウヤ手加減し過ぎよ!」
「そ、そんなことないですよ!結構魔力込めて唱えましたよ!?」
「ヒッヒッヒ、、、、」
ドムラはニヤニヤしながらこちらを見ている。
「ヒャッヒャッヒャ!イーヒッヒ!あ〜面白れぇや!お前ら魔断石を知らねぇのか?こりゃ傑作だ!」
「魔断石!?こんな大きな檻が魔断石で作られているというの!?」
シエルが驚愕の表情を見せている。
「シエル、その魔断石ってなんですか?」
「魔力が関わるあらゆる事象を拡散させ、無力化してしまう鉱石。通称''魔断石''。採掘、加工できるのは遥か東の国。魔導王国フィナルシア。」
「よく知ってるじゃねぇか。有り余る親父の金とコネを利用すれば、天下のフィナルシアとのパイプくらい作れるってわけよ!」
「正直このドムラって男を見くびってたわ。意外と賢いのね。」
「お前らの魔術じゃその檻は壊せねぇよ。魔術書を素直に渡せば檻の中の女は痛い目を見ずに済むがなぁ?どうする?」
ドムラは舌なめずりをしながら俺の持つ魔術書を指差す。
「渡すわけないでしょ!あんたみたいなゲス野郎に!トウヤ!速攻アイツぶっ飛ばすわよ!」
「もちろんです!テトのことも気になりますし。」
「、、、はぁ。おとなしく渡せば血を見ることもなかったのによ、、、テトォ!アレを呼べ!」
「はい。ご主人様。」
ピーーーーー!
ドムラが叫ぶとテトは指笛を鳴らす。
奥の暗いシャッターがガラガラと音を立てて開く。
空いたシャッターの奥からどす黒い魔力がこちらに向けて放たれる。
ズシン!ズシン!ズシン!
少しずつソイツは広間の明るいところに歩いてきた。
四足歩行、体長はおよそ4メートルはある。
顔はライオンのような獣顔、胴体は鋭い棘に覆われている。
両足には太い爪、尻尾は蠍のような巨大な針。
ソイツの胴体をよく見るとうっすら人の顔のようなものがいくつも見える。
「紹介しよう!あらゆる凶悪な魔獣を合成した究極の殺戮兵器、人造合成魔獣だ!」
ギャオオオオオオオン!
その魔獣の雄叫びだけで鼓膜が破れそうだ。
ソイツの口からは唾液が滴り落ち今にも俺たちに襲い掛かりそうだ。
「お前ら運がいいぞ!生物合成魔術に成功した第1号だ!胡散臭い魔術師のおかげでようやく形になった。お前らが初めての餌だ!光栄に思え!」
その魔獣の胴体からは微かにだが、無数の小さな魔力を感じる。
「シ、シエルどどどうします!?」
シエルは合成魔獣を見据えて答えない。
「シエル!」
「、、、んた、、、を、、、ったのよ、、、」
シエルがブツブツ喋っている。
俺の声が聞こえていないようだ。
「テトォ!ショータイムだ!」
ドムラが叫ぶ。
ピイイイイィィイ!
ギャオオオオォオオ!
テトの指笛と同時に魔獣の前足の爪がシエルを襲う。
「くそっ!」
俺はダッシュして間一髪、シエルを横から抱えるようにしてその攻撃を避けた。
ドガァァァア!
魔獣の前足がシエルが立っていた地面を砕く。
普通の攻撃があの威力かよ。
一撃もらっただけで致命傷だ。
「シエル!一体どうしたんですか!?」
シエルは俺を押し退けドムラを見据える。
「ドムラ。あんたこの合成魔獣を作るのになんの生物を使ったの?」
すごい魔力を感じる。
これほど怒っているシエルを見たことがない。
握っている拳から血が滴り落ちている。
「何って、、、凶暴そうな魔獣を2、3匹だがそれがどうかしたのか?」
「、、、そう、、、質問を変えるわ。周りの檻の数と中にいる獣人族の数が合わないのはどうしてかしら。」
シエルの言葉を聞いて俺も気づいた。
確かに周りにたくさんの檻があるが、獣人族が居るのはそのうちの数個だけだ。
大半の檻が空になっている。
全ての檻の中にボロボロの毛布や腐ったパンが落ちている。
まるで最近まで誰かが居たみたいに、、、
そこで俺の思考が追いついた。
マジかコイツ。
「、、、よく気づいたなぁ、、、そうだよ!生物合成魔術に使ったんだよ!俺は何度も失敗してた!いつも抜け殻みたいな魔獣しかできなかった!」
「そんな時とある魔術師が助言してくれたのさ!''獣人族の魂を核に合成すると良い''ってな!ククククク!アーハッハッハ!結果は大成功!十数人の命と引き換えに最強の魔獣が生み出せた!」
「やっぱり、、、ドムラ、、、あんたはどうしようもないクズね。人の命を簡単に弄んで、、、そんなことが許されると思ってるの!?」
「そんな、、、何人もの、、人があの魔獣の合成に使われたってことですか、、、ウッオェェェッ」
俺はこれまでに受けたことのない精神的ダメージでその場に吐いてしまった。
「それもこれも魔術書が俺様の手元にないのが悪いんだよ!魔術書の魔力増幅回路さえあれば、、、しかし獣人族の特性は凄まじいぜ!肉体の強さはもちろん回復力も桁違い!今は同じ獣人族のテトしか操れねぇがな、、、ったく父親を混ぜたのがミスだったか、、、」
「父親?、、、テトの父親があの魔獣の中に?」
また吐きそうになるのを無理やり押し込んで、俺はテトを見た。
暗い目、、、一切の光がなく虚空を見つめている。
母親も同じような絶望の暗闇に落ちている。
「許しません、、、絶対に、、、ドムラお前だけは!」
「あたりまえよ、、、ぶっ飛ばしてやる!」
俺とシエルは拳を固く握りドムラを睨みつけた。
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