魔力図形
次の日―――
ガチャ!
「トウヤー!」
部屋の扉を開ける音と、名前を叫ぶ大声で俺は目を覚ました。
「うわぁ!どうしましたシエル!?何かありましたか?」
「おはよ!トウヤ!早く起きて!そろそろ行くわよ!」
俺の腕を引っ張りながらぴょんぴょんと小刻みにジャンプするシエル。
そのたびに揺れるその大きな胸。
朝にその刺激は辛いものがある。
男は理由もなく朝には立ち上がってしまうというのに。
何がかは言わないが。
それなのにそんなに魅力的なものを揺らされては、ベッドから出ることは不可能だ。
というかなんでこんなにニコニコでテンション高いんだ。
「ちょ、ちょっと待ってください!準備もまだですし、顔も洗ってないし、それに―
「いいから!顔なんてすぐ洗えるでしょ!とにかく起きて!」
色々言い訳を並べていたが、無情にもシエルは俺のベッドのシーツという最後の砦をはがした。
そこにはズボン越しにもわかるほどそそり立つ、バベルの塔が現れてしまった。
―――それを見つめるシエルと止まる時間
「ごごご、ごめんなさい!確かにこれは準備が必要みたいね!」
顔を真っ赤にして後ろを向くシエル。
「い、いえ!これはその生理現象みたいなもので!朝、男はみんなこうなるものなんです!」
「そ、そうなんだ、、、てっきり私のことを見てそうなったのかと、、、」
真っ赤なシエルは入ってきた時の10分の1くらいの小さな声でつぶやいている。
「そ、それもありますけど、朝はみんなこうなるんです。」
あれ?
マザメルの時とだいぶ反応が違う気がする。
あの時はすごい白けた目で見てきたような。
というか俺今なんて言った?
「へっ?『それもありますけど』って、、、そっか、、、そ、そりゃそうよね!私、可愛いものね!」
シエルもだんだん動揺しておかしなことを言い出している。
まぁ、可愛いのは否定できない。
「とにかく!5分だけ待ってください!」
怒涛の朝のやりとりはこれで終わった。
これがのちに語り継がれる【バベルの朝】だ。
なんちゃって。
そんなわけない。
―――メディコ食堂内
「さっきはごめんねトウヤ。私取り乱しちゃって。」
ガヤガヤとした食堂の机で俺達は、朝食を食べながら話していた。
「い、いえ!俺の方がお見苦しいものを見せてしまって。申し訳ないです。」
「見苦しくなんてなかったわよ!立派だった、、、ってもう!そんな話するために朝ごはん食べにきたんじゃないの!」
照れてるシエルを見るのはなかなかレアだ。
「ほら。ニコラスおじさんの話。盗難事件のことよ。私たち頼まれたじゃない。」
「そうですね、、、たしか現場に魔力の残穢は残ってなかった。そうとうな身体能力の持ち主ってことになりますね。」
「そうなの。それが謎なのよね。前に言ったでしょ。どんな生物にも魔力はあるって。微塵も感じられなかったってのが引っかかるのよね〜。」
まだ暖かいスープを口に運びながらシエルは顔を傾ける。
たしかに。
それじゃあ生物じゃないとか。
「無生物を操る魔術ってあるんですか?もしそれが可能なら、魔力を纏ってない人形を操って盗みを行わせたとか。」
「ん〜そんな魔術あることにはあるけど。結局操るものに魔力図形を通さなきゃいけないから、人形だとしても魔力を纏ってるのよ。」
「魔力図形?」
初めて聞く単語だ。
俺は皿に積んであった柔らかいパンを口に頬張りながら質問した。
「えっと、トウヤにもわかりやすく言うと。」
「魔術を使うときにイメージしたでしょ?ほら、例えば火焔球を唱えるとき大きさとか質量とか速さとか。そういう魔術を出力する頭の中の設計図みたいなものを魔力図形と呼ぶの。」
「なるほど。俺はもう無意識に使ってたんですね。」
「そういうこと。魔力図形が精密であればあるほど魔力操作が上手くいくわ。無機物に通すことで魔術を行使することもできる。」
説明しながらシエルはちぎったパンをスープに浸してもぐもぐしている。
俺も真似してスープにパンを浸してみた。
そのパンを指で押さえる。
中から浸したスープがポタポタと皿に落ちるのを見て、不意に閃いた。
「魔力を抑える魔術とか、、、いや、ないか。そんなの使い物にならないだろうし、、、」
「あるわよ。それ。」
「え!そうなんですか?適当に言ってみただけだったんですが、、、一体何に使うための魔術なんですか?」
「ん〜正確に言うと、魔力を出せなくする魔術ね。ってかあれよアレ!ほらツウリュウストリートで話した、、、」
アレってなんだっけ。
そんな話した覚えないけど。
「強制的に魔力を抑え込み隷属する。隷属魔具、【奴隷輪】よ。」
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魔力図形
魔術を出力する前段階として頭の中で構築するイメージ。
精密であるほど正確な魔力操作が行える。
これを物体に通すことで無機物にも魔術機能を与えることができる。
シエルの使用可能呪文一覧
【火焔球】
ランク:初期呪文
魔術系統:放出系呪文
内容:手のひらに火球を生み出し、前方に放出する。




