模擬試合
―――ニコラス邸 中庭
「再度ルール確認を行う。戦闘不能、もしくは魔力切れになった方が敗者。特殊条件として、シエル殿、トウヤ殿は相手に一撃いれれば勝ちだ。」
俺たちは屋敷から外の中庭に出てきていた。
さすが資産家。
中庭もかなりの広さだ。
ニコラス立ち合いのもと模擬試合をすることになった。
勝者が盗難事件の犯人探しを引き受けるという。
なんとも勝利の景品としては微妙だ。
ニコラスを中心に俺達とルーシィ達はそれぞれ、20メートルほど離れて立っている。
「双方異論はないな!悪質な戦闘行為は禁止なのはもちろんのこと。わしが静止をかけたらそれまでだ。いいな!」
「旦那様、いつでも開始の合図を。」
「ルーシィが珍しくやる気アル。これは私はほとんど出番がないかもアルな。」
ロゥリンは口を抑えながら笑いを堪えている。
「あのルーシィとかいう女めちゃくちゃ私たちのこと舐めてるわね、、、いい?トウヤ!開始の合図と同時に火焔球を打ち込むわよ!」
「ちょっと待ってください!シエル!ヴェルデサーペントのこと忘れたんですか?火焔球1発で俺はぶっ倒れたんですよ!?」
「誰が魔力全開で唱えなさいって言ったのよ!威力を抑えて!いい?トウヤ。これはあなたの修行でもあるの!」
シエルは俺に近づいて手を握り目を合わせる。
相変わらず真紅の瞳は美しく揺らめいていた。
「魔力操作は頭で考えるんじゃない。心よ。自分の精神力に強く左右される。放出される魔術の大きさ、質量、形、速度、性質、、、より具体的にイメージするの。」
「そんな、急に言われても、、、俺は、、」
手を握るシエルの力が強くなる。
「トウヤならできるわ!なんてったってわたしのパートナーなんですもの!」
ああ。
今わかった。
シエルは自信家のお嬢様なんかじゃない。
自分を信じきっている。
そんな自分が信じる相手だからこそ、疑わない。
[期待]などと言う生ぬるものじゃない。
「は、ははは。やれるだけやってみます。」
小さく弱々しい言葉とは裏腹に、俺はシエルの手を強く握り返す。
「まぁ、心配せんでもここはメディコの裏。怪我人の1人や2人すぐに治してくれるだろう。ではわしが中庭の外に出るタイミングが試合開始の合図だ。」
一歩また一歩とニコラスが歩き出す。
俺はシエルの斜め後ろに立ち、魔術書を開きながら相手を見据える。
相手も同じくルーシィが前に出て、ロゥリンが少し後ろで構えている。
―――ニコラスが中庭から出た瞬間
「火焔球!」
俺は呪文を唱えた。
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シエルの使用可能呪文一覧
【火焔球】
ランク:初期呪文スペルオブファースト
魔術系統:放出系呪文
内容:手のひらに火球を生み出し、前方に放出する。




