ニコラス家
「アレスとは幼馴染でな。子供の頃によく一緒に遊んだものだ。わしとアレスは互いに王家の血筋。アトルリアとツウリュウは隣接国でもある。」
ニコラスは思い出すように目を瞑り語り出した。
「ひと昔前までは交流会という名目でお互いの手の内を探り合う、茶会が開かれていたんだよ。わしとアレスはそこで出会った。」
「なるほど、、、私が物心ついた時にはもうアトルリアとツウリュウに交流と呼ばれるものはほとんどなくなっていたわ。交易の相手という印象が強かったわね。」
「では現在、ニコラスさんはこの国の王なのですか?」
住んでいる屋敷は立派だが、なぜこんな僻地に建てられているのだろう。
この国の王家ならそれこそオルバンクあたりの立地がふさわしいのでは。
俺は腑に落ちない点が幾つかあったのでニコラスに質問を投げかけた。
「いやこの国にはもう実質的な王はいないよ。ツウリュウは王国ではなく、今はもう貿易国になっておる。」
「まさか、、、クーデターとか?、、、傲慢病が蔓延した時、各国で暴動が起きたとは聞いていたわ。」
「クーデターではない。当時の王、、、わしの兄が王権を放棄したのだ。」
「王権を放棄した!?どういうこと!?自ら王であることを捨てたと言うの!?」
王家であるということは名誉であり、誇りなのだろう。
シエルの口ぶりからも王権の放棄とは尋常ならざる事態のようだ。
「20年前、、、王であった兄は妻子共に傲慢病を患った。自らの命が長くないことを悟り、当時目覚ましい成長を見せていた、3人の才覚ある商人達に国の運営を託したのだ。」
「その3人は兄に忠誠を誓っていた。兄家族が亡くなり、そこからツウリュウは貿易の国として著しく発展を遂げたのだ。」
ニコラスは続ける。
「各個人が[オルバンク][ストリート][メディコ]を立ち上げその勢いは増し、いつしかツウリュウは貿易国とまで呼ばれるようになった。」
「わしは兄の妾の子であった幼いルーシィを連れて、この屋敷に住むようになった。国民から見れば王家の生き残りなど目障りでしかないからな。」
「王家の支配からの脱却と自立が彼らの勢いを後押ししていたのは、目に見えてわかっていた。今でもメディコの裏に大きい屋敷を構えて居られるのは、3人の商人が兄を大変慕っておったからだ。」
ニコラスはそこまで話し終わると、椅子から立ち上がりシエルの前に跪いた。
「アレスとシャーリーの死に目に会いに行けずに本当にすまなかった。言い訳をするつもりはない。友としていつかシエル殿に会えたなら、謝罪をしようと心に決めていたのだ。本当にすまなかった。」
シエルは跪いたニコラスの肩を持ってゆっくり立たせた。
「いいのよ。ニコラス、、、おじさん?、、、になるのよね。ニコラスおじさん。20年前あなたも私も自分のことで精一杯だったわ。」
「それに私嬉しいのよ?こんなに思ってくれる友人が父様にいたということがわかって。」
シエルは涙目になりながらニコラスに笑いかける。
「そうか、、、立派に、、、大きくなったのだな。シエル殿、、、アレスはいい娘を持った。」
ニコラスとシエルは少しの間涙を流していた。
思わぬところで素晴らしい出会いがあるものだ。
俺も気づかないうちに笑顔が溢れていた。
王権
王家がもつ国での支配力
権力のこと
シエルの使用可能呪文一覧
【火焔球】
ランク:初期呪文
魔術系統:放出系呪文
内容:手のひらに火球を生み出し、前方に放出する。




