白銀の猫耳少女
オルバンクの受付嬢アリシアに激怒するシエルをなだめながら、俺達はメディコに向けて歩いていた。
「シエル、怒りはおさまりましたか?アリシアさんも悪気があってああいう態度を取ってるんじゃないと思います。あれが仕事なんですよ彼女の。」
「仕事でもあんな言い方はないと思うけど!ていうかトウヤはどっちの味方なのよ!」
やばい。
次は俺に怒りの矛先が向いてきそうだ。
「お、俺はもちろんシエルの味方です。でもああいう公共の場で2人とも突っかかっていったら、もっと人の目を惹きつけます。」
「王国大戦の参加者だっていう事がバレたら、旅がしにくくなるってガーダンが言ってました。」
申し訳ないガーダン。
今はあなたの名前を出してでも,
どうにかこの場を収めたいんだ。
「、、、そうね。トウヤの言うことも一理あるわ。、、、、ふーん、トウヤは私の味方なんだ。」
シエルの頬が少し赤らんだような気がしたが、気のせいだろう。
「そうだ!さっきはオルバンクに向けて一直線に歩いてたから、買い物なんてできなかったけど少し何か買っていきましょうよ。」
シエルはそう言うと、たくさんの店が並ぶストリートの雑貨屋に走っていった。
「ちょっとシエル!置いてかないでくださ―
ドン!
後ろの腰下あたりに小さな衝撃が走る。
「痛っごめんなさい!大丈夫です、、か、、」
その衝撃の正体に俺の言葉は詰まる。
白銀のふわふわの髪の毛。
同じように白銀の耳、、、猫耳。
髪の毛というより体毛に近いのか。
そこには背丈140センチくらいの猫耳の少女が立っていた。
幼い顔立ち、シエルとは違うタイプの美少女。
ぴょこぴょこと猫耳が動いている。
その気品溢れる雰囲気とは裏腹に、身なりはボロボロの大きい布を一枚羽織ったような服。
そして目がいくのは黒い金属でできた首輪。
少女の容姿からはあまりにも不釣り合いな、大きな首輪。
「、、、これ、、、貰いますね。」
透き通るような少し低めの声。
これが俗に言うダウナー系の声なんだろう。
その猫耳の少女は俺のリュックから魔術書を抜き取ると、そのまま両腕に抱えて路地裏に走り出してしまった。
「え、、、ちょ、ちょっと待ってください!」
いきなりの出来事に俺は数秒思考停止してしまった。
しかしこれは明らかに泥棒だ。
「くそ!取り返さなきゃ!」
俺も少女を追いかけて路地裏に入った。
遠くの突き当たりに白い尻尾が見える。
あれだ!
絶対に取り返す。
あれは俺だけのものではない。
シエルの願いと絆。
心の中で決意を固めながら足を踏み出した瞬間。
右手の甲にある紋章が光りだした。
手袋から透けて見えるのは炎を纏う竜の紋章。
体が羽のように軽い。
走り出した俺は明らかに常人以上のスピードで路地裏を駆け抜けた。
「これがシエルが言ってたアトルリア家の加護ってやつか!」
―――ツウリュウストリート雑貨屋
「これ可愛い〜!これも!ああ選べないわ!ねぇトウヤはどれが私に似合うと思う?」
くるりと振り返るシエルの目前にトウヤの姿は無かった。
シエルの使用可能呪文一覧
【火焔球】
ランク:初期呪文スペルオブファースト
魔術系統:放出系呪文
内容:手のひらに火球を生み出し、前方に放出する。




