俺の妹4
科目数の多い期末テストを前にクラスの連中は意気消沈というよりかは意気消失という感じなのに、俺の気持ちはクラスの連中とはベクトル違いで受験を控えた浪人生のようにどんよりとしていた。
ホームルームが始まってもテストの事できゃいきゃいとやかましいままのクラスに担任教師があきれ顔をするのを忘れてしまったかのように淡々と連絡事項を述べる中、俺は昨晩妹(偽)と話した事を思い出す。
妹は言った。人間でありながらKと手を組み人間を殺す手伝いをしたペテン師X、この学校生徒会長の「村野コウイチ」は既に始末したと。
「当然でしょう。そもそも村野コウイチの手を取ったのは河内森キョウコの独断だった。そして手綱を握っていた彼女がいなくなった今、もはや村野コウイチはいつ爆発するか分からない地雷でしかない。生かしておく理由がないですし、私たちの秘密を知っている以上生かしておくわけにもいかない」
だから始末したってか。いかにも人間らしくない発想だぜ。だが、それにしたって別に殺す事はなかったんじゃないのか。やり方は他にいくらでもあっただろ。
「綻びの芽は早めに摘んでおく。それが失敗しない方法です」
所謂、価値観の相違というやつだった。
ニュースで聞いた顔も知らない被害者に対して深く心を痛めないように、同じ学校で人が死んだというのにこれくらいの感想しか出て来なくなったあたり、俺の常識的感覚もかなり鈍ってきてるな。
「言わなくても分かると思いますが、今この学校の生徒会を仕切っているのはあなた達のように言うとするならば村野コウイチの偽者です。即席ですが、それなりに精巧に作ったので、相当な事がない限り気付かれるということはないでしょう。しかし、彼についてあなたがどうしようがかまいません。どうでもいいのです。生かすも殺すも好きにしてください」
妹は淡々とそう述べたが、俺に言われても対処に困るので、村野コウイチの事はあれこれ考えるよりとりあえずJDさんに伝えておいた。また、情報操作があって転校した事にでもなるだろう。
それから表面上はいつも通りの授業を受け終えあほ面の勉強会の誘いを断ると、俺は校門前で待ち合わせをしていた妹を引き連れ当初の予定通り宮之阪の家へと向かうべく学校を出た。