セーラー服の彼女
―――とまあ、ここまでが一つの伏線になっていたのかもしれん。いや、違うな。事件自体はもうとっくに前から密かに始まっていたのだ。俺がそれに気が付いたのが、まさに今日だっただけで。
ここでひとつことわっておきたいのだが、俺は妄想はすれど実際に起こって欲しいだなんてことは一切望んでいなかった。ましてや誰かが死んじまうようなスプラッターな事件なんか考えたこともない。矛盾しているようだがな。ただちょっとだけ普通の日常の中に、高校生探偵や世界を守る正義のスパイみたいなのが一人くらいいたら面白いだろうな、くらいに考えていただけなんだ。
だから、まさかだぜ。
違ったのだ。俺が今まで見てきた世界は、その側面の一部にしか過ぎなかったのだ。
授業終わり、宮之阪のノートに触発された好奇心の赴くままに足を向けた校舎裏で、俺は不本意にも、本位的に出会っちまった。
「嘘だろ、おい……」
俺は何一つ主人公っぽくないぜ?
「―――気を付けてはいたのだけれど、見られてしまったのね」
そいつは地面に転がる死体の腹の上で器用にくるりとターンして俺の方に身体を向けると、口元についた血を袖で拭いつつこう言った。
「知ってたかしら?『学校の悪魔』ってセーラー服が似合うのよ」