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襲撃・イリスV2

「はあ・・・この道を通るのも、今日が最後になるんですね・・・」

 一方。そのようなことがあったとは知る由もなく、ミナミは誠人と共に通学路を歩いていた。

「なんだか、寂しい気がします・・・」

「ああ、僕もだ。・・・でも、この一年、本当に頑張ってくれたよ。僕を守るために、わざわざ高校生になっちゃって」

 突然かけられた労いの言葉に、ミナミは少しあたふたしながら言葉を返した。

「そ、それは・・・・・・ほら、常に誠人さんを守るのが、私の使命ですから!・・・それに、仕事とはいえまた学生になれて、なんだか楽しかったです」

「そっか・・・・・・君が楽しめたなら、それはそれでよかった」

「誠人さん・・・」

 ミナミの声にどこか照れたような表情を浮かべると、誠人は彼女に向き直って礼を述べた。

「ありがとう・・・この一年、いつも僕を守ってくれて」

「誠人さん・・・・・・いえ、感謝するのはこっちです」

 顔を赤く染めて小さく笑みを浮かべながら、ミナミは誠人の目をまっすぐ見て言った。

「誠人さんのおかげで、私の人生は変わりました。この星でいろんな経験を積むことができましたし、頼れる仲間もいっぱい作ることができました。それも皆・・・・・・誠人さんが、この星にいてくださったおかげです」

 そこで一旦言葉を切ると、ミナミは誠人の両手を優しく握った。

「だから・・・私からも、お礼を言わせてください。本当に・・・ありがとうございます、誠人さん」

「ミナミ・・・」

 と、その時であった。突然、二人の周囲に生える桜の木の枝がするすると伸び、ミナミの体を縛り上げた。

「きゃっ!何ですか、これ!?」

「ミナミ!待ってろ、すぐに・・・うわあっ!」

 GPブレスを構えようとした誠人だったが、その時金色の残光と共に何かが彼の体を吹き飛ばした。

「誠人さん!」

 地面を転がる誠人の姿に、ミナミが悲痛な叫び声を上げる。すると彼女の目の前に金色の光が迸り、同時に一人の少女が姿を現した。

「見つけた・・・・・・モニカ、この子だよ!間違いない!」

 突然現れた栗色の髪の少女が、手にした球体のような機械から表示されるホログラムを見て歓喜の声を上げた。彼女が手にする機械からは、ミナミの顔が映し出されていた。

「よかった・・・・・・その人、見つけることができて・・・」

 どこからか現れた黒髪の少女が、ミナミに向けて右手を伸ばした。するとミナミを縛り付けている木の枝が、より強く彼女の体に巻き付いた。

「うっ・・・あんたら、何者ですか・・・?」

「さあ、何者だろうね?モニカ、もうちょっと強く縛って。殺しちゃ駄目だけど、気を失わせるくらいなら大丈夫だろうから」

 冷酷な笑みを浮かべながら、キャロルはモニカに声をかけた。

「分かった。・・・ちょっと痛いけど、我慢してね」

 ミナミにそう言葉をかけると、モニカはミナミに突き出した右手を握り締めた。すると木の枝はより強く、ミナミの体を縛り上げた。

「うっ・・・あっ・・・・・・」

「ミナミ!・・・やめろおおおおおおおっ!」

 誠人は痛みが走る体に鞭打って立ち上がると、GPブレスから光弾を連射してモニカとキャロルを攻撃した。だがモニカが左手をかざすと、誠人の近くにあった木の枝が鞭のように伸び、彼の体を打ち据えた。

「うわっ!」

 思わぬ一撃にひるんだ誠人を、木の枝は何度も強く打ち据えた。そんな彼の目の前に、いつの間にかキャロルの姿があった。

「!?」

「やあっ!」

 キャロルの強烈なハイキックが、誠人の体に炸裂した。その一撃に倒れ伏した誠人を、キャロルは容赦なく右足で踏みつけた。

「うっ!ああっ・・・!」

「ふーん。あたし達の世界のあいつと違って、弱いね、あんた」

「・・・?どういう、意味だ・・・?」

 その問いかけに答えることなく、キャロルは足を離して誠人の体を蹴飛ばした。彼女は誠人に興味を無くし、モニカとミナミの方へ振り返る。

「モニカ、そろそろ気絶した?」

「まだ・・・でも、もう少し・・・」

 その時、突然一発の銃声が鳴り響き、モニカの右手にどこからか飛んできた光弾が直撃した。

「きゃっ!」

「モニカ!」

 キャロルは短く叫び声を上げると、金色の残像を残して一瞬でモニカのもとに移動した。モニカは痛む右手を左手で押さえ、それと同時にミナミを縛っていた木の枝が、彼女の体から離れていく。

「私の弟と、その大切な存在であるその少女に、一体何をしてくれているのかな?」

 光弾が飛んできた方向から、誠人とミナミにとっては聞き覚えのある声が聞こえてきた。そこにはシャドウブラスターをキャロルとモニカに向けて構える、ファルコの姿があった。

「ファルコ・・・さん・・・!」

「あんた?この子を撃ってくれたの」

 思わず安堵の声を上げた誠人とは対照的に、キャロルがモニカを庇いながらファルコを睨みつけた。

「だとしたら?それよりも、先に私の質問に答えてもらおうか?」

「・・・ムカつく。モニカ、手大丈夫?」

「うん・・・キャロル、モニカ・・・あの人嫌い」

 ファルコに嫌悪の視線を向けながら、モニカが声を震わせて言った。

「あたしも。・・・やっちゃおうか、二人で」

「うん・・・そうしよう、キャロル」

 二人は視線を交わしてうなずき合うと、同時に懐からある物を取り出した。それは、誠人がイリスV2に変身する際に使用する、GPドライバーV2であった。

「あれは・・・V2ドライバー!」

 思わず驚きの声を上げた誠人の目の前で、二人はドライバーを腰に装着して待機モードにした。そしてそれぞれホルダーから一枚のカードを抜き取ると、ドライバーにセットする。

「アーマー・オン」

「アーマー・・・オン・・・!」

『Read Complete.瞬足!爆速!神速!アーマーインゴールド!ゴールド!』

『Read Complete.必中!的中!命中!アーマーインフォレスト!フォレスト!』

 キャロルの体を黄金の鎧が、モニカの体を緑色の鎧が、それぞれ包み込んでいく。鎧は瞬く間に二人の体を覆い尽くし、それぞれ金色と緑色のバイザー状の複眼が、同時に光り輝いた。

「イリスV2・・・?馬鹿な、なぜ君達が!?」

「さあ、どうしてだろうね?・・・まあいずれにせよ、あんたはここで死ぬんだよ!」

 キャロルが変身した金色のイリスV2が、目にもとまらぬ高速移動でファルコに迫り、手にしたハンドアックスモードのプラモデラッシャーを振り下ろした。その一撃をなんとか紙一重でかわしたファルコだったが、今度はモニカが変身した緑色のイリスV2が、アローモードのプラモデラッシャーから光の矢を連射してきた。

「くっ・・・謎は多いが、今は戦うしかないか」

 ファルコは肚を決めると、シャドウブラスターにカードを読み込ませた。ダガーモードのプラモデラッシャーで襲ってきたキャロルの攻撃をかわすと、ファルコは武器のトリガーを引いた。

「アーマー・オン」

『インストール、シャドウアーマー』

 エージェント・シャドウへと変身すると、ファルコは武器の刃を展開させてキャロルとの戦闘を開始した。その間に誠人はなんとか立ち上がると、荒い息をつくミナミのもとへ駆け寄った。

「ミナミ・・・大丈夫か・・・?」

「ええ、なんとか・・・・・・でも、あの二人は一体・・・?」

「分からない・・・・・・ミナミ、君は逃げろ」

「え?・・・でも・・・」

「いいから行け。ここは、僕とファルコさんが引き受けた!」

 ミナミに逃げるよう促すと、誠人はGPドライバーV2を腰に装着した。そしてホルダーから取り出したカードを、勢いよくドライバーに挿し込んだ。

「アーマー・オン!」

『Read Complete.灼熱!焦熱!光熱!アーマーインサンライズ!サンライズ!』

 太陽の力を秘めた真紅の鎧が、誠人の体を覆ってゆく。サンライズアーマーのイリスV2へと変身を遂げると、誠人はミナミに叫びかけた。

「さあ、行け!」

 その言葉に重々しくうなずき、ミナミはその場から駆け出し始めた。誠人は右手にライズガンセイバーを握り締めると、シャドウを援護するために勢いよく駆けだした。

「はあああああああああっ!」

 雄たけびと共にこちらに向かってくる新たなイリスV2に気づくと、モニカはプラモデラッシャーから光の矢を連射した。誠人はその攻撃を剣で弾き飛ばしてモニカに斬りかかるが、モニカは軽やかな動きでそれをかわし、再び遠距離から攻撃を仕掛けてくる。

「虹崎君、大丈夫なのか!?」

 キャロルの素早い攻撃をなんとか武器で受け止めながら、シャドウがイリスに叫びかけた。モニカの攻撃を剣で弾きながら、誠人が言葉を返す。

「ええ、なんとか・・・・・・ファルコさん、敵は二人です。緑色の方は僕が引き受けます、そっちの方を頼みました!」

 シャドウにそう叫びかけると、誠人は剣を振りかざしてモニカの方へ駆けだした。キャロルの相手を任されたシャドウであったが、相手の高速移動を活かした攻撃に翻弄され、繰り出されたプラモデラッシャーの一撃で大きく吹き飛ばされた。

「うあっ!・・・簡単に、言ってくれる・・・!」

『マガ・ユナイト、ダーククロウ』

 吹き飛ばされて距離が開いたことを利用し、シャドウはダーククロウを背中に合体させた。そして空中を飛び回りながら、地上のキャロルに向かってシャドウブラスターの連射をお見舞いする。

 一方の誠人は近接戦を諦め、ライズガンセイバーをガンモードにしてモニカとの撃ち合いを始めた。誠人の攻撃を紙一重でかわしたその時、モニカはその場から逃げ出すミナミの姿を目に捉えた。

「逃がさない・・・はっ!」

 モニカが右手をかざすと、ミナミの周囲の桜の木の枝が意志を持つように伸び、ミナミの左足に巻き付いた。足の自由を奪われたことで、ミナミは前につんのめって倒れてしまった。

「きゃっ!」

「ミナミ!」

 ミナミが倒れる姿を目にし、誠人に一瞬隙が生じた。その隙を見逃さず、モニカはホルダーからフィニッシュカードを取り出し、ドライバーにセットした。

『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』

 モニカが構えたプラモデラッシャーに、巨大な光の矢がつがえられた。その威力が最大まで高まったのと、誠人がそれに気づいたのが、ほぼ同時だった。

「しまった・・・!」

『フォレストフィニッシュ!』

 モニカが武器のトリガーを引くと、放たれた光の矢が猛スピードで誠人に迫った。誠人はライズガンセイバーを剣にして構えることで相手の攻撃を防ごうとしたが、強力な矢の一撃を防ぎきることはできず、小さな爆発と共にその体は吹き飛ばされた。

「うわああああっ!」

「・・・!誠人さん!」

「虹崎君!」

 勢いよく地面に叩きつけられた弾みに、誠人の変身は解除されてしまった。シャドウはイリスのもとに急行しようとしたが、イリスに近づくために低空飛行したことが仇となり、死角からキャロルの高速のタックルを受けることになった。

「うわっ!」

「はっ!余所見してる余裕なんてないよ!」

『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』

 地面に叩き落とされたシャドウを嘲るように叫ぶと、キャロルはフィニッシュカードをドライバーにセットした。一方のシャドウも必殺のカードを手に取り、シャドウブラスターにスキャンさせる。

『デフィート』

 シャドウブラスターとGPドライバーV2から、待機音声が鳴り響く、そして両者はほぼ同時に、必殺技を発動させた。

『ゴールドフィニッシュ!』

『ダークブレイク』

 両者はほぼ同時に大きくジャンプすると、それぞれ右足にエネルギーを集中させて強烈な飛び蹴りを放った。両者のキックは空中でぶつかり合ってしばらく拮抗していたが、やがて大爆発が起きて両者共に吹き飛ばされ、その体が地面に叩きつけられて変身が解除された。

「あっ・・・キャロル!」

 それを目にしたモニカはミナミや誠人をそっちのけで、キャロルのもとへ駆け出した。その弾みでミナミの足に巻き付いていた木の枝が、元の形に戻ってミナミの足から離れる。

「キャロル・・・大丈夫・・・!?」

「う、うん・・・・・・ごめん、心配かけて」

 倒れこんだキャロルが苦笑いしながら、モニカに言葉を返したその時だった。二人の仲間であるスペクトルの研究室で、レーダーにある反応があった。

「ドクター、リンクが発生したぞ!」

 赤いメッシュが入ったオレンジ色の髪をポニーテールにした若い女性が、スペクトルに叫びかけた。それを聞いたスペクトルが、急いで装置のもとに向かう。

「来たか!・・・キャロル、モニカ、リンクが発生した。すぐに扉を開く、こちらに戻れ!」

 キャロルとモニカの通信機から、スペクトルの声が聞こえてきた。同時に二人の背後の空間が歪み、眩い光の円が現れる。

「あの光・・・確か、前にどこかで・・・!」

「ふう・・・マコトを喜ばせてあげたかったけど、今日はここらが限界か」

 小さく叫んだ誠人の声を意に介さず、キャロルが残念そうに声を上げた。彼女が口にした『マコト』という名前が、一同の胸に引っかかる。

「マコト・・・?一体、それは誰なんだ!?」

「教えてあげない・・・モニカ、あなた達のこと、嫌いだから・・・!」

 誠人の問いかけに答えることなく、モニカとキャロルは光の円の中へと消えていった。すると程なく空間の歪みも消失し、誠人達の目の前にはいつも通りの通学路が広がっていた。

「一体、何だったんだ・・・?」

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