虹色の翼
一方。二つの世界の距離が徐々に縮まる中、誠人達はルナティックカイザーと激しい戦いを繰り広げていた。
「皆・・・行きますよ!」
イリスV2はGPドライバーV3を手に取り、それを腰に装着した。そしてドライバーを待機状態にすると、七枚の変身用カードが宙を舞い、一枚のカードへと合体する。
『Evolution time!Beyond V1 and V2!Evolution time!Beyond V1 and V2!』
「ユナイト・オールイン!」
『Read Complete.七つの力が、今一つに!完成!イリスV3!』
ミナミ達六人の刑事の体が、鎧や装甲となってイリスV2の体の上から装着される。最後にミナミが姿を変えた黒い兜が、その頭部を覆い尽くした。
「はっ!」
イリスV3は大砲モードのV3バスターから、真紅の光弾をルナティックカイザーに向けて放った。ルナティックカイザーはそれをかわすと、いよいよもう一つの世界が迫りくる空へと浮遊した。
「面白い見世物だったが、もう遊びに付き合う暇はない」
『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』
ルナティックカイザーはフィニッシュカードをドライバーに挿し込むと、全身に七色の光を纏わせた。そして七色に光る両手を地上のイリスV3に向けた途端、その両手から光が光線となって、イリスV3に降り注いだ。
『カイザー・ジ・エンド!』
「うっ・・・うわあああああああああああああっ!!」
光線が体に直撃し、誠人はその苦痛から絶叫を上げた。それは誠人だけでなく、彼と合体しているミナミ達刑事もまた、同じ苦しみを味わわされていた。
「私を楽しませてくれた礼だ。私の力の源である七つのエネルギー、それを凝縮したこの技で、美しく死ぬがいい!」
ルナティックカイザーは勝利を確信すると、降りてくる世界が目視できる空を見上げた。彼の視線の先には、もう一つの世界が空から降ってくることに恐怖や絶望の表情を浮かべる、多くの人々の姿があった。
「二つの世界が、今一つとなる!そして生まれる新世界は、私が一人で支配するのだ!」
「ッ・・・!世界が、交わる・・・!」
イリスの戦いを見守っていたマコトも、迫りくるもう一つの世界に思わず声を上げた。異世界が空から迫る光景は、ギャラクシーガーディアンの中にいたガモンの隻眼にもしっかりと映っていた。
「これは・・・マズいな・・・」
そしてその光景は、虹崎家の窓から空を見上げる茜の目にも届いていた。近隣住民が空を見上げて恐怖の叫びを上げる中、茜は祈るように両手を胸の前で組んだ。
「誠人・・・ファルコ・・・皆・・・!」
そんな茜の願いを嘲笑うかのように、ルナティックカイザーはさらに威力を増した光線をイリスV3に浴びせかけた。イリスV3は必死に立ち上がろうとするが、光線のあまりの威力に動くことすらままならない。
「ふふ・・・哀れだな。私と同様に七つの力を一つにしようと、所詮君達は弱者の寄せ集め。孤高の王となるべく生まれたこの私には、どうあがいても勝てはしないのだ!」
「孤高の・・・王・・・」
その言葉に反応すると、誠人は力を振り絞って立ち上がり、ルナティックカイザーを見上げながら言った。
「随分ちっぽけなものを目指してるんだな、お前は」
「何・・・?」
ルナティックカイザーの仮面の下から、スペクトルはイリスV3を睨みつけた。その視線を感じながら、誠人はさらに言葉を続けた。
「この世界も、僕達の世界も、たった一人で支配できるようなものなんかじゃない!・・・確かに、お前の力は強大かもしれない。けどな・・・仲間を欺き、駒としか見ないようなお前に、人は絶対についてこない!お前がなるのは孤高の王じゃない、ただの孤独な暴君だ!」
「黙れ!」
ルナティックカイザーは怒りの声を上げると、光線にさらに力を注ぎ込んだ。誠人達は苦悶の声を上げながらも、決して膝をつくことはなかった。
『坊やしっかり!ここで負けたら、全部・・・終わりよ!』
『少年、負けるな!あたしらも・・・負けないから!』
『負けられない・・・βの・・・皆のために!』
『ボク達がふんばらなきゃ・・・二つの世界の皆が不幸になっちゃう!』
『そんなの、キリア絶対やだ!だから・・・がんばろう、お兄ちゃん!』
誠人と合体している刑事達が、次々と彼に励ましの言葉をかけた。最後に声を上げたのは、彼の頭部を守る兜と化したミナミであった。
『誠人さん・・・私は、最後まであなたを守ります。この命・・・この魂・・・その最後の一滴まで、あなたのために・・・!』
「ミナミ・・・皆・・・!」
彼女達の言葉は、今の誠人にとって何よりの力となった。その脳裏に、これまで仲間達と共に歩んできた日々の思い出が、次々とよぎってくる。
「そうだ。僕は・・・・・・一人じゃない!」
その時、誠人の腰に巻かれたGPドライバーV3が、不思議な輝きを放った。その輝きはルナティックカイザーが放つ七色の光線を全て吸収し、ドライバーを通じてその力をイリスV3の全身に行き渡らせていく。
「あ・・・あれは・・・?」
呆気に取られて声を上げたマコトの目の前で、イリスV3にある変化が起きた。その両手と両足を守る装甲、そして胸部を覆う鎧が、虹の七色へと変色したのだ。
『誠人さん、これ・・・!』
「ああ・・・僕も感じる。七つの力が、僕達の・・・中に・・・!」
ミナミが姿を変えた兜も、虹の七色の輝きを放った。そしてイリスV3の背中から、虹を想起させる巨大な光の翼が生えた。
「な・・・何だ、あれは・・・!?」
全身から虹色の輝きを放つイリスV3の姿に、ルナティックカイザーは驚きの声を上げた。・・・いや、これは正確にはイリスV3ではない。誠人の意思に共鳴したGPドライバーV3が、ルナティックカイザーの放った七つのエレメントの力を取り込み、全く新しいイリス――レインボーイリスを誕生させたのだった。
「行きますよ、皆!」
レインボーイリスは背中の翼をはためかせ、空中のルナティックカイザーのもとへと飛び立った。ルナティックカイザーは手から光の矢を放って敵を射落とそうとしたが、レインボーイリスはそれを素早くかわし、一瞬でその目の前まで移動した。
「はっ!」
流星の如き虹色のパンチが、ルナティックカイザーの体に炸裂した。ルナティックカイザーは反撃を試みるものの、レインボーイリスは虹色の残光と共に一瞬で敵の背後に回り、その体を蹴飛ばしたと思うと吹き飛んだ先に瞬時に移動し、再び強烈なパンチを放った。
「うあっ!くっ・・・ここでやられるわけにはいかん!」
ルナティックカイザーは空間移動の扉を開き、その中に飛び込んで逃げようとした。だがレインボーイリスが背中の翼を輝かせて大きく羽ばたかせると、翼から放たれた光が空間の扉を塞ぎ、跡形もなく消滅させた。
「何!?」
「はああっ!」
狼狽するルナティックカイザーに、レインボーイリスは滑空しながら突進を仕掛けた。そして敵の首筋を掴んで滑空を続けると、身動きの取れない相手に強烈なパンチを続けざまにお見舞いし、その体を地面に叩き落した。
「馬鹿な・・・私と同じく七つの属性の力を使いながら、なぜここまで差が・・・?」
「七つじゃない・・・僕達には、もう一つ力がある・・・!」
レインボーイリスはそう言うと、地上のマコトに視線を向けた。すると得心したように、マコトが声を上げる。
「そうか・・・ミナミ達の六つの属性に、あいつのサンライズ・・・それに、俺のダークネスの力が・・・!」
「さっきのお前の技が、僕達に力をくれたんだ。僕達ではだれも持ちえない、もう一人の僕の力を!」
「くっ・・・だが、もう世界の融合は止まらない!」
『Read Complete.Be prepared for maximum impact.』
ルナティックカイザーは叫ぶように言うと、再びフィニッシュカードをドライバーに挿し込んだ。待機音声が流れ始めると同時に、彼の体を七色の光が包み込む。
「もうすぐ新世界が完成する!それを支配するのは、この・・・私だ!!」
『カイザー・ジ・エンド!』
ルナティックカイザーは上空のレインボーイリスに向けて、最大級の威力の七色の光線を発射した。一方のレインボーイリスも全身を虹の七色に光らせ、右足を突き出して急降下しながらその光線とぶつかった。
「させない・・・二つの世界は、僕達が守る!!」
レインボーイリスのキックと、ルナティックカイザーの光線。二つの技の威力は拮抗していたが、やがてレインボーイリスのキックが、ルナティックカイザーの光線を押し戻し始めた。
「『『『『『『はあああああああああああああっ!!』』』』』』」
レインボーイリスは光線の力を吸収して右足に宿らせ、キックの威力をさらに増しながら降下していった。そしてついにその一撃が、ルナティックカイザーの胸を貫いた。
「うおっ!・・・馬鹿な・・・カイザーの力を得た、この・・・私が・・・!」
レインボーイリスは体を宙返りさせ、地面へと着地した。同時にルナティックカイザーの断末魔の叫びが響き渡り、その体が大爆発を起こした。
「おお・・・消えた・・・街が消えたぞ!」
スペクトルの死により、目前まで迫っていた二つの世界の融合は止まった。スペクトルから解放されたことで、二つの世界は均衡を取り戻したのだった。
「よかった・・・ありがとう、皆」
事態が終結したことを悟った茜も、ほっと安堵の声を漏らした。彼女が窓から見上げる空は、一片の雲もなく青く晴れ渡っていた。




