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抗え、最後まで

 数分後。誠人とミナミは傷ついたマコトと共に、研究所の近くにあった地下道へと逃げ込んでいた。

「追手は来ません・・・奴ら、私達にはもう興味がないみたいですね」

 誠人が背後を警戒させているプラモデロイド達の視界を、ミナミはGPブレスと同期させて確認した。彼女が見る限り、敵は近くにはいないようだった。

「そりゃそうだ・・・あいつの興味は、今や二つの世界を征服することだけだ・・・」

 マコトはもう一人の自分の体から離れると、壁にもたれかかって大きく息をついた。

「俺が馬鹿だった・・・・・・あんな奴の言葉に、まんまと惑わされて・・・!」

 そう声を絞り出したマコトの目から、一筋の涙が流れた。誠人は彼のもとにかがみこむと、その肩に優しく手を置いた。

「自分を責めるな。君は、信じるもののために戦っただけじゃないか」

「ふっ・・・その結果がこれじゃ、惨めだよな・・・」

 自嘲気な笑みを浮かべると、マコトはうなだれながら言葉を発した。

「ミナミを喪ったあの日から、俺は抜け殻のような日々を送っていた。そんな俺に生きる意義をくれたのが、あのスペクトルだった。・・・ミナミが愛したこの世界を守る。そのためなら、どんなことでもする覚悟だった。だが・・・・・・俺はとんでもない過ちを犯してしまった。もう・・・・・・この世界も、お前達の世界も終わりだ・・・・・・」

 マコトが声を震わせてそう言った、その時だった。突然ミナミがマコトの前までやってくると、その頬をひっぱたいた。

「ッ・・・!?」

「何・・・勝手に終わらそうとしてんですか?あんた・・・この世界を守るためなら、何だってするって覚悟したんでしょ!?」

「ミナミ・・・?」

 いつになく強く、そして熱い口調のミナミに、思わず誠人が声を上げた。その言葉が耳に入っていないかのように、ミナミはマコトの胸ぐらを掴んで続けた。

「だったら、最後の最後まであがきなさいよ。あんたが中途半端に諦めたら、誰がこの世界を守るんですか!?」

「・・・!」

 自分の胸ぐらを掴んで訴えかけるミナミの姿に、マコトは自分がよく知るミナミの姿が重なって見えた。彼はしばらくうつむいていたが、やがてゆっくりと口を開いた。

「・・・そうだな。俺はあいつに誓ったんだ。この世界を、守るって」

 マコトの目に、消えかけていた光が再び宿った。彼は顔を上げると、誠人とミナミに強い意志が宿った瞳を向けた。

「お前達に協力する。何とかして、スペクトルを止めよう」

「ありがとう。けど、僕達だけの力じゃ、奴らには敵わない。・・・援軍が必要だ」

「援軍・・・?」

「レイ達のことですね?何とかして、皆をこっちの世界に連れてこないと」

「なら、いい道具がある。スペクトルが開発した装置・・・それを使えば、リンクを意図的に発生させて、二つの世界を繋げられる」

「よし。それはどこにある?」

 もう一人の自分の問いかけに、マコトは表情を曇らせた。

「・・・さっきの部屋だ。つまり・・・装置を作動させるには、誰かがあいつらを防がないと」

「なら、私達が時間を稼ぎます」

 ミナミはそう言うと、誠人に腰から外したGPドライバーV2を見せた。

「いつかの時みたいに、二人で暴れましょう、誠人さん」

「ああ・・・やるか、ミナミ・・・!」



「さあ、始めるとしようか」

 それから、数分後。ルナティックカイザーは四人のイリスV2の前で、光を宿した両手を宙に掲げた。すると彼の足元を中心として強大なエネルギーが発生し、そのエネルギーが世界そのものを包み込んでいく。

「世界よ動け!そして私の故郷の世界と繋がり、一つとなるのだ!」

 ルナティックカイザーがそう叫ぶと、世界がエネルギーによって引っ張られ始め、文字通り動き始めた。動き出した世界の行く先には、誠人達の故郷であるもう一つの世界がある。

「・・・ん?何だ、あれ?」

 誠人達の世界でも、二つの世界の接近による異常が感知され始めた。何気なく空を見上げた人々の頭上には、こちらに向かって迫りくるもう一つの世界の街並みが広がっていた。

「イレイダー長官、様々な星で異常な光景が観測されています。空に街や海が浮かんでいて、こちらに向かって降りてくると!」

 ギャラクシーガーディアンにも、その異常な報告がすぐさま届いた。リマから報告を受けたガモンが、手を組みながら静かに声を発する。

「全ては彼らに託された、か・・・・・・ここは、彼らの健闘を祈るしかあるまい」



「レイ先輩、あれ!」

 一方。SGDから連絡を受けたブレビアのレイ達も、その異常事態を知ることになった。ミュウが指さすブレビアの上空にも、広大な森林地帯がその姿を現している。

「まさか・・・これが、二つの世界を一つにする、ってこと・・・?」

「だとしたら、スペクトルの奴とんでもないことを始めてくれたよ。何とかして、阻止しなきゃ・・・」

 カグラが歯ぎしりしながら声を上げたが、彼女達にはどうすることもできなかった。そんな彼女達をあざ笑うかのように、二つの世界は接近を続けていく。

「いいぞ・・・あと10分もすれば、完全に二つの世界は一つとなる。新世界の夜明けは、もうすぐそこだ!」

 計画の成就を確信し、スペクトルが仮面の下で愉悦の笑みを浮かべた、まさにその時。部屋の入り口を守らせていたソルジャーロイドが、火花を上げながら部屋の中に吹き飛んできた。

「悪いけど、そんな夜明けは御免だね」

「あんたは・・・向こうの世界の虹崎誠人、だね?」

 キャロルが変身したイリスV2の視線の先には、部屋に踏み入ってきた誠人とミナミの姿があった。二人の腰には、GPドライバーV2がすでに装着されている。

「ああ。君達の計画、止めさせてもらうよ」

「二つの世界を一つになんて、そんな馬鹿げたこと、私達が許しません!」

「愚か者め。我らに敵うと思うのか?」

 エルダが変身したイリスV2が、誠人達を嘲笑う。それでも、誠人達の戦意が衰えることはない。

「敵わなくてもやるさ。それが・・・今の僕達の使命だ!」

 その言葉を合図に、誠人とミナミは同時にドライバーを待機状態にした。そしてその手にそれぞれのカードを握り締め、ドライバーに装填する。

「「アーマー・オン!」」

『Read Complete.灼熱!焦熱!光熱!アーマーインサンライズ!サンライズ!』

『進撃!斬撃!突撃!アーマーイングランド!グランド!』

「行くぞミナミ!」

「はい!」

 サンライズアーマー、そしてグランドアーマー。二人のイリスV2はそれぞれ武器を握り締め、ルナティックカイザー達に向かって駆け出した。キャロル達もそれぞれの武器を手に直ちに応戦し、イリスV2同士の激しい戦いが繰り広げられる。

「はっ!やっ!この!」

 ミナミが変身したイリスV2が、プラモデラッシャーを振るってモニカとキャロルが変身したイリスV2に果敢に攻撃を仕掛ける。その一方では誠人が変身したイリスV2が、ライズガンセイバーの機能を臨機応変に切り替えながら、エルダとフェイスが変身したイリスV2と死闘を繰り広げる。

 その部屋の入り口付近に身を潜めながら、マコトは機会をうかがっていた。彼は体を緊張で震えさせながらも、頭の中で必死に計画を思い返した。


『僕とミナミが、イリスV2になって敵の目を引き付ける。奴らに隙ができたら、君は装置にこの座標を入力して、この世界と僕達の世界を繋げてくれ』

 誠人がもう一人の自分に見せたのは、先ほどまでいた惑星ブレビアの座標であった。その座標を頭に叩き込みながらも、マコトは率直な不安を口にした。

『だが・・・その間、俺は無防備になってしまう。ドライバーもカードも壊された以上、俺はイリスV2に変身できない』

『それでも、これしか方法がないんです。あの装置を動かせるのは、スペクトルと行動していたあんただけなんですから』

 ミナミはそう言うと、マコトの両肩に手を置いて励ますように言葉を続けた。

『あんたの勇気が頼りです。私は・・・あんたを信じてますから』


(そうだ・・・やるんだ、俺が・・・!)

 ミナミの言葉を思い出し、マコトは胸の内で決意を固めた。一方のルナティックカイザーはイリスV2達の戦いを眺めていたが、やがて自らの味方である四人のイリスV2が徐々に誠人達を追い詰め始めると、戦いに背を向けて術に集中し始めた。

「手応えがない・・・あなた達、何を狙ってるの?」

 戦い始めてしばらく経った頃、ようやくモニカが何かに勘付いた。

「ふん、今更気づいても遅いですよ!マコト!」

 ミナミの声を合図に、マコトが雄たけびと共に部屋に駆けこんだ。そして二つの世界の接続装置を目指して、一目散に走りだす。

「・・・!ノー!」

 その狙いに気づいたフェイスが、すぐさま銃をマコトに向ける。だがサンライズアーマーのイリスV2が全身から光を放ち、敵の目をくらませて動きを止める。

「今だ!マコト・・・頼んだ!」

 マコトは頭に叩き込んだブレビアの座標を、接続装置に入力した。だがその時、騒ぎに振り返ったルナティックカイザーが、装置を動かすマコトを目に留めた。

「させるか!はっ!」

 ルナティックカイザーがマコトに向け、黄色い光の矢を放った。その矢は猛スピードでマコトに向かって飛んでいき、ついに彼の目の前に迫った。

「・・・!」

 避けられない――誰もがそう思った、まさにその時。ミナミが変身したイリスV2が矢の前に立ちはだかり、その攻撃を自らの体で受けた。

「あああああああっ!」

「「ミナミ!」」

 矢の一撃に吹き飛ばされ、イリスV2の体は地面に叩きつけられた。その弾みで変身は解除されたが、ミナミは鎧のおかげでさしたる傷は負っていなかった。

「今です!マコト!」

 ミナミの叫びに力強くうなずくと、マコトは装置のスイッチを押した。すると装置から一筋の光線が放射され、光線が照射された場所に、大きな光の円が発生した。

「・・・!皆、あれを!」

 その光の円は、誠人達の世界の惑星ブレビアと繋がっていた。突如として研究所に発生した光の円に、ファルコが驚きの声を上げる。

「お坊ちゃまですわ!お坊ちゃまが、あちらとこちらの世界を繋いだのです!」

「皆、行こう!お兄ちゃんとミナミを、助けなきゃ!」

 キリアが叫ぶようにそう言うと、真っ先に光の円の中に飛び込んだ。ファルコ達に異論があろうはずもなく、彼らもまた、次々と円の中へと飛び込んでいった。

「・・・!皆・・・!」

 世界の壁を越えて駆けつけた仲間達の姿に、誠人はイリスV2の仮面の下で声を上げた。思わずそちらに気を取られて隙が生じた彼の体を、エルダが変身するイリスV2が両手の剣で斬り裂いた。

「うわあっ!」

 その一撃に誠人の変身は解除され、その体は吹き飛ばされて宙を舞った。だがソフィアが放った黄色い光が彼の体を受け止め、地面への落下を阻止した。

「ソフィアさん・・・助かりま・・・いたっ!」

 床に着地して礼を言いかけた誠人の頬を、ソフィアは突然音高くひっぱたいた。

「この馬鹿。闇雲に動くなって言ったのに・・・!」

「それは・・・・・・すみません、はい」

「だが、おかげでこっちの世界に来られた。うまくいけば、二つの世界を救うことができる」

 シャドウブラスターを手でくるくると回しながら、ファルコが四人のイリスV2と対峙した。誠人も仲間達と共に、目の前の敵に視線を向ける。

「ミナミ、立てるか?」

 その一方で、マコトが倒れこむミナミのもとに駆け寄って手を差し伸べた。ミナミは力強くうなずくと、マコトの手を取った。

「ええ、もちろん。・・・しかと見ましたよ、あんたの勇気」

「いや・・・それもお前のおかげだ。またしても、俺はミナミ・ガイアに救われた。・・・ありがとう、ミナミ」

 マコトの言葉に、ミナミは照れ臭そうにわずかに頬を赤らめた。彼女はマコトとうなずき合うと、愛する男のもとへ駆けていく。

「いくら数を揃えようが、もう私の計画は止められない。新世界の誕生を、その目で見届けるがいい!」

「お前が生み出そうとしてるのは、新世界じゃなくて地獄だ!僕達はそれを・・・許しはしない!」

 スペクトルにそう宣言すると、誠人はイリスバックルを腰に装着した。シルフィは片手にGPドライバーV2を、もう片方の手にフュージョントリガーを握り締め、体の中のディアナに声をかける。

「ディアナ、今度は二人で行きましょう」

『ああ・・・行くぜ、シルフィ!』

 その言葉にふっと微笑むと、シルフィはドライバーを腰に装着した。そしてフュージョントリガーを握る手に力を込め、そのスイッチを押す。

『フュージョントリガー、スタートアップ!』

「愛する我が世界、そして我が弟のために、ここで負けるわけにはいかない」

 ファルコは変身用のカードを手に取ると、シャドウブラスターにスキャンさせた。同時にシルフィも、起動させたフュージョントリガーをドライバー上部にセットする。

『レディ』

 シャドウブラスターとフュージョントリガーから、それぞれ待機音声が流れ始める。誠人はグランドのカードを手に取ると、隣にやってきたミナミに目を向けた。

「ミナミ・・・行くぞ!」

「はい!」

 ミナミの返事を受け、誠人はバックルを待機状態にした。そしてグランドのカードをバックルにかざすと同時に、シルフィがドライバーに二枚のカードを挿し込み、ファルコが武器のトリガーを引いた。

「アーマー・オン」

「『アーマー・オン!』」

「ユナイト・オン!」

『Read Complete.震える大地!グランドアーマー!』

『フュージョン、スタート!疾風!迅雷!烈風!激雷!暴風!強雷!二心一体、ライトニングハリケーン!』

『インストール、シャドウアーマー』

 ミナミが変化した鎧と合体し、誠人はグランドアーマーのイリスへと姿を変えた。同時にシルフィはディアナと共にライトニングハリケーンのデュアルに変わり、ファルコもエージェント・シャドウへの変身を終える。

「こざかしい・・・諸君、この場は任せた」

 ルナティックカイザーは右手から光球を放って研究所の屋根を破壊し、マントをはためかせて空へと浮遊していった。残された四人のイリスV2はそれぞれの武器を手に、イリス達と対峙する。

「虹崎君、君達はスペクトルを追え。この場は、私とデュアルで引き受けよう」

「スペクトルを倒さねば、程無く二つの世界が激突します。皆様、ここはお任せを!」

『Dual-speeder、come closer.』

 二つの世界が一時的に繋がっていることを利用し、デュアルはデュアルスピーダーを呼び出した。フライングモードのデュアルスピーダーが四人のイリスV2達の周囲を飛び回って撹乱し、イリスの目の前までやってくる。

『さあ、行け!』

「・・・分かりました。レイさん達、外で会いましょう!」

「ええ。皆、すぐに外へ!」

 レイの指示で、誠人と合体する刑事達が研究所の外へ向かい始めた。イリスもデュアルスピーダーに飛び乗ると、ルナティックカイザーが開けた穴から外へ飛び出す。

「さて・・・参りましょう、ファルコ様」

「ああ。私もあいつらには、返したい借りがあってね・・・!」

『ブレード』

 シャドウは武器の刃を展開すると、モニカとキャロルが変身するイリスV2に攻撃を仕掛け始めた。デュアルもプラモデライザーを手に、フェイスとエルダが変身するイリスV2に挑みかかるのだった。

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