プロローグ
以前より告知しておりました通り、拙作『チーム・イリスの事件譚』の番外編第二弾を投稿いたします!
今作は、『チーム・イリスの事件譚』第46話と第47話に登場した、謎の人物達の正体や目的が明らかになるシナリオとなっております。今作が初見という方は、是非本編もご覧ください!
その日。その世界には冷たい雨が、雷と共に降り注いでいた。
「ミナミ・・・?頼む、目を開けてくれ・・・」
イリスバックルを腰に装着した一人の少年が、一人の少女を抱きかかえながら必死に呼びかけた。するとその声が聞こえたのか、少女がゆっくりと目を開く。
「よかっ・・・た・・・・・・あなたが、無事で・・・・・・」
「駄目だ・・・・・・どうして、こんな・・・・・・」
少女の腹には大きく穴が開き、そこからは血がどくどくと流れ続けていた。――もう助からない。だが少年は、その現実を受け止めきれなかった。
「うっ・・・あっ・・・・・・」
その時、少女が最後の力を振り絞り、少年に向けて手を伸ばした。それに気づいた少年がすぐにその手を掴むと、少女は優しく微笑みかけて言った。
「私の、こと・・・・・・忘れ・・・ないで・・・・・・」
「ああ・・・約束する。君のことは、絶対・・・!」
その言葉に満足したかのように、少女は安らかな笑みを浮かべた。やがて彼女の目は閉じられ、そのまま二度と開くことはなかった。
「ミナミ・・・ミナミ、待ってくれ。ミナミ・・・ミナミ・・・!」
握り締めるその手にも、もう力は込もっていなかった。少年は両目から涙を流すと、天を仰いで絶叫を上げた。
「うわあああああああああああああっ!!ああああああああああああああああああああっ!!」
その叫びに呼応するかのように、一筋の雷が爆音と共に、少年の近くに転がるイリスピーダーの上に落ちた。程なくイリスピーダーから炎が立ち上り、少年の顔を真っ赤に照らし上げるのだった。