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キャンプをしたいだけなのに【2巻発売中】  作者: 夏人
第5章 言葉にしたって伝わらない
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【第5章】 高原キャンプ編 16

 16


 【樽木勝也】


 樽木勝也がカウボーイアクションを覚えたのは大学生の時だ。

 別にロープワークだけをつきつめようと思ったのではない。その当時、樽木はマジックに凝っていた。トランプマジックや簡単なコインのマジック。覚えて練習しては大学の学食で少ない友人に披露していた。するとそのうち、周りで見ていた学生達がマジックをする度に寄ってくるようになった。仲間内だけで楽しもうとしていた樽木は驚いたが、悪い気はせず、要望に応えるように何度もマジックを披露した。

 樽木はすぐに学食の名物キャラになった。樽木は嬉しかった。

 これまで受験勉強一筋だった彼は誰かに注目してもらうことなどほとんど無かった。クラスできらきらしている人気者とは縁が無かった。所属しているのはスポットの当たりようがない無線愛好会だった。一人教室の隅で参考書を読み、時々無線機の専門書を読みふける彼はいじめられこそしなかったものの、誰にも気がついてもらえないような存在だった。全くの無個性。目立つものなど何も持っていない。いつでも大人数の中の目立たぬ一人だった。

 そんな彼にとって、自分という存在を「樽木勝也」個人として認められる事は人生で経験したことのない喜びであった。

 一度自信を持った樽木はトーク力が格段に上がった。もともと素地はあったのだろうが、引っ込み自案なせいで発揮できていないだけだったのだ。うつむかずに顔を上げて堂々としていれば案外自分は人受けの良い外見をしていることにも気づいた。笑ったときに歯が見せてしまう癖も、堂々とすれば魅力的に映ることにも気がついた。

 いつの間にか樽木は沢山の友達に囲まれるようになった。ついには彼女まで出来た。樽木は意図せずに、今で言う大学デビューを果たしたのである。

 しかし、どれだけ練習して腕を上げても、トランプマジックはどうしても地味である。そのうち飽きられてしまう。樽木は思った。より派手な方がみんな注目してくれるのではないか。

 学祭で覚え立てのジャグリングを披露したとき、その予想は確信になった。トランプの何倍も観客は盛り上がった。

 それで味をしめた樽木は同じ趣味の先輩に誘われ、大道芸の道に舵をきった。身体能力で魅せるアクロバットは流石に今から習得するのは難しかったが、ジャグリングに全振りして技を極めた。

 だが、路上に出てもイベントに参加しても思ったような歓声を受けることはなかった。当然だ。大学内で学生としてやっているのならともかく、キャンパスを出てしまえば樽木は当然プロとして見られる。その割には技術が追いついていなかったのだ。一緒に始めた先輩も就活だなんだと言って早々とやめてしまった。

 そんなとき、あるイベントで知り合ったベテランに言われた。大道芸人は星の数ほどいる。キャラを作った方が受ける。今時はインターネットで話題になったら勝ちだ。覚えてもらえるようにオリジナリティを出せと。ここからは「個性」の時代だと。

 個性。それは樽木にとってかなり難しい事柄だった。自分に個性がなさ過ぎて苦しんだ青春時代。それが偶然趣味のトランプで人気者になった。しかし、その道に一歩踏み出すとまた集団に没してしまった。

「なんか好きな物とか無いのか。憧れてる存在とかになるとかいいぞ。スーパーマンとか。仮面ライダーとか」

 そうアドバイスをくれたベテランはいつもタイガーマスクを被ってショーを行っていた。だからといって超人気とは思えなかったが、すくなくとも樽木よりは場を盛り上げていた。

 その姿を見て、樽木はふと思い出した。子どもの頃、西部劇映画に夢中になっていた時期があったことを。

 樽木はカウボーイの服装を一式揃えた。その格好でナイフを使ってジャグリングをしてみると、想像以上に受けた。得意のトランプマジックもカウボーイの格好と相性がよかった。

 味をしめた樽木は芸名を「ランダル」と改めた。自分が好きだった西部劇の登場人物の名から取った。自分の名字と音が似ているのも気に入った。

 ロープワークを独学で覚えた。

 ナイフ投げも習得した。

 ついには近場のレジャー施設で乗馬教室に通い詰めて馬に乗れるようになった。とはいえ、自分の馬など所有できる訳がないので、乗馬技術はそこまで披露する機会はなかったが。

 だが、徹底したカウボーイキャラはそのうち界隈でちょっとした評判になり、動物園と遊園地がくっついているようなレジャー施設からお呼びがかかるようになってきた。

 樽木はもらった誘いには全て駆けつけた。大きなリュックに道具を全てつめ、電車やバスを乗り継いで、時にはヒッチハイクもしながら全国のレジャー施設を回った。身、一つで旅をする自分が本当に流浪の旅人になったようで誇らしかった。

 大学は中退した。かなりの有名大学だったので、両親の失望と怒りは凄まじかった。

「カウボーイとして生きていく」と自信満々に言った樽木に、父は「夢みたいなこと言ってんじゃねえ」と怒鳴りつけた。母は「お願いだから、まっとうに、ちゃんと生きてちょうだい」と泣きすがった。だが、樽木は断固として首を横に振った。そんな「個性」のない、平凡な生き方など、樽木にはもう到底受け入れられなかったのだ。

 樽木は両親から勘当された。自分の生き方を受け入れてもらえなかったことはとても悲しかったが、樽木は後悔などしなかった。だって映画の中のカウボーイやガンマンは皆、孤独なイメージだったから。致し方ないと思った。

 とはいえ、仕送りなどの経済的援助が無くなってしまうと不定期なイベント出演では生活が成り立ちそうになかった。樽木は旅の合間になじみのハンバーガーショップでバイトを始めた。カウボーイらしくてその仕事は気に入った。

 さらに幸運だったのは、ある牧場が樽木を定期的に呼んでくれるようになったことだ。そこでは馬に乗ってのショーも可能で、随分と人気を博した。すると他の牧場も樽木を呼んでくれるようになってきた。

それでかなり生活は安定し、貯めたお金でバイクを買って、より効率的にカウボーイの仕事に向かえるようになった。土日は牧場やレジャー施設に出稼ぎに行き、平日はハンバーガーショップでバイトをする。忙しいが、充実した日々だった。


 そんな中、転機が起こる。

 唯一の大学生時代の名残であるとも言える恋人。ずっと付き合い続けていた彼女が妊娠したのである。

男として責任を取らねばならない。樽木はそう思った。

 二人は結婚した。結婚式も披露宴もない簡素な結婚であった。当時彼女は有名企業に就職していた。福利厚生もしっかりしていた企業であったため、産休と育休を取る形で妻は休職した。

 安アパートの一室でどんどん膨らむ妻のお腹を見て、樽木は複雑な気分になった。赤ん坊が生まれれば今までの自分の自由はなくなり、無個性なただのどこにでもいる父親になってしまうかもしれないと思ったからだ。

 そんな風に自分の人生の足枷になりうる存在をちゃんと愛せるのかどうか、樽木は不安だった。

 そして、ある夏の日、娘が生まれた。

 夏の花の名をとって、カンナと名付けた。

 カンナは可愛かった。出産までの心配が嘘のように、樽木はカンナの笑顔に夢中になった。

 樽木は毎朝起きると一番にカンナを抱きしめ、バイトや仕事から帰ってくるとスヤスヤ眠る娘の額に何度もキスをした。この子のためならなんでも出来る。樽木は心からそう思った。

 そんなささやかだが幸福な日々が続き、カンナが三歳になったある日、妻が遠慮がちに言った。

「私も仕事に復帰しようと思ってるんだけど、あなたにもちゃんとした仕事に就いて欲しいの」

 樽木はその発言に眉をひそめた。確かに収入は高くはないが、自分はカンナのために頑張っているとそう思っていたのだから。

 妻は言った。

「だって、パパがずっとバイトだったら、カンナも恥ずかしいでしょう」

 それは一理あるかもしれないと樽木は認めざるを得なかった。だが、ハンバーガーショップのバイトを辞めるとカウボーイだけではとてもじゃないが生計が立たない。

 一念発起する時だ。樽木は覚悟を決めた。その表情を見て、妻は心から安堵したようだった。

 ここで妻にとって予想外だったのは、夫が趣味の生き方をあきらめるのではなく、突き詰める方に進んだことだった。

 樽木は知り合いのつてをたどってキャンピングカーを破格の値段で手に入れた。これまた知り合いに頼んで格安で塗装をしてもらい、ハンバーガーショップとして改装した。バイト先の店長に頭を下げ、古い機材を一式譲ってもらった。

 つまり、樽木はバイトを辞め、独立したのである。

 てっきり、趣味をすぱっと諦めて、安定した、つまりまともな「ちゃんとした職」についてくれるとばかり思い込んでいた妻は開いた口が塞がらなかった。

 樽木は張り切っていろんな場所で店を開いた。全国をキャンピンカーで巡回し、オフィス街やらイベント会場やらでハンバーガーを売りさばいた。正直、経費を差し引くと、利益はバイトの頃とそう変わらなかったし、平日もなかなかカンナと過ごせる時間が無くなってしまったが、全部、愛する娘のためだと思えば頑張れた。

 自分の生き方に陶酔していた彼は、それがあまりに身勝手で独りよがりな行動であることに気がつかなかった。

 仕事に復帰した上で、娘の幼稚園の送り迎えと家の家事を一人でこなす妻の態度が徐々に冷たいものになっていく事にすら、樽木は気がつくことが出来なかった。

 カンナが十歳になる頃には、夫婦仲は完全に冷え込んでいた。平日は樽木はほとんど家に帰らなかった。帰りたくなかった訳ではない。妻が自分のしていることをあくまで「趣味」としてしか見ていないことを流石に悟ったのである。

 毎日やりたくもないデスクワークを八時間している会社勤めの妻から見れば、大した収入もないのに自分の好きなことをしている樽木は遊んでいるようにしか見えなかったのだ。樽木はそれを妻の立場から見れば当然の心理だと理解できるほどには歳を取っていたし、また逆に言えば、今さら生き方を変えられるほど若くもなかった。

 平日はカンナの前で険悪な雰囲気を出さないために、樽木はできるだけキャンピングカーで泊まった。その代わりに土日はカンナを仕事先に連れ出した。その頃は土日の仕事はほとんど牧場でのものとなっていた。

 妻はついてこなかった。できるだけカンナの前で顔を合わせないと言うのが、樽木達夫婦の暗黙の了解になっていたのだ。。そのことについてカンナが一体どのように思っているのかは、樽木は怖くて聞けなかったし、カンナも口にしなかった。

 ただ一度だけ、カンナとこんなやりとりがあった。


 その日、樽木は贔屓にしてもらっている牧場でカンナを馬に乗せながら、カウボーイとはなんたるかを語っていた。

「いいかい。カンナ。カウボーイっていうのはな。決して諦めないんだ」

 樽木は娘を前に乗せ、それを抱きかかえるようにして一緒に揺られながら言った。

「どんなにつらいことがあっても、きつくっても、絶対にくじけないんだぞ。カンナもそんなカウガールになりなさい」

 カンナは樽木を見上げると、「うん」と笑顔を見せた。

 樽木はそんな娘が可愛くて仕方がなかった。

「パパ。カウボーイって旅をするんでしょう」

「ああ。そうだな。牧場から牧場へ。牛を連れて行くことも多かったらしい。キャトル・ドライブというらしいぞ」

「パパも旅をしてるの?」

 樽木は豪快に笑った。

「ああ。そのためのキャンピングカーだ」

 カンナは顔を上げた。

「カンナも連れて行って」

「ああ。もちろんだとも」と樽木は大きく頷いた。

「いつか。旅をしよう。あのキャンピングカーで」

 カンナは「じゃあ、じゃあ」と笑みを深めた。

「ママも一緒?」

 樽木は不覚にも黙ってしまった。

 間を置いて、樽木は慌てて言った。

「あ、ああ。ママも一緒だ。きっとね」

 カンナは顔を下げて、馬の首を撫でながら「楽しみ」と呟いた。

 その声は少し小さかったように思う。


 牧場では、カンナは「リトル・カウガール」として大活躍だった。

 子ども用のカウボーイの衣装を着込み、樽木のショーの補佐や、ハンバーガーショップの接客をする。その見た目の愛らしさと明るくおしゃべりな性格で、カンナはどこでも可愛がられた。ハンバーガーショップなどは、カンナがいるかいないかで売上が段違いだった。それを伝えるとカンナは得意げな顔で「えへへ」と笑った。


 カンナが十一歳になって間もない頃だった。

 その日、樽木とカンナは馴染みの牧場に来ていた。そこはカンナの通う小学校の隣町にあり、一番よく仕事をしに来る牧場だった。

 いつも通り観光客の前で午前のショーを披露したあと、ハンバーガーショップの準備をしていた樽木はカンナがいないことに気がついた。

 カンナはよくふらっと遊びに行ってしまう癖がある。きっと時間を忘れてポニーとでも遊んでいるのだろう。そう当たりをつけて牧場の敷地を探していると、遠目に見える牛小屋の後ろにリトル・カウガ―ル姿のカンナの背中があった。

 何してるんだ? あんなところで。

 声をかけようとした樽木に、「ランダルさん!」と背後から押し殺した声がかかった。振り向くと、カウガールのベルが人差し指を唇に当てて立っていた。

 ベルは二年ほど前にこの牧場にやってきた。当初は牧場のオーナーである老夫婦のご厚意で身を寄せていたらしいが、すぐに老夫婦に代わってバリバリ働き出した。ハーフでモデルのような容姿をしているが、実は学生時代にアメリカの牧場にホームステイをしていたらしく、その経験も生かして今では牧場一の働き手だ。ちなみに土日はカンナと一緒に樽木のショーも手伝ってくれている。

「だめですよ。カンナちゃん、パパに内緒で練習してるんですから」

 ベルは微笑んでそう言った。

「練習? なんの?」と首を傾げる樽木に、ベルは「こっそり見てあげてください」と樽木の服の袖を引っ張って、牛小屋の陰に樽木を移動させた。

 そこから見ると、カンナの後ろ姿がよく見えた。

 投げ縄をくるくる回している。そしてぱっと器用に投げると、数メートル先の子牛の模型に見事はまった。カンナは即座に縄をひく。輪がきゅっと縮まり、子牛に固く巻き付いた。

「・・・・・・見事なもんだ。こっそり練習してたのか」

「もっと上手くなって、ポニーに乗りながら出来るようになったら、パパにも見せて驚かせるんだーって言ってましたよ。パパみたいになりたいんですって」

 そうか。パパに内緒で練習してるのか。

 樽木は不意に目頭が熱くなった。まだまだ親がついていないと何もできないと思っていた娘が、いつの間にか成長し、きちんと自立していることが誇らしかった。しかも、自分を目標にしてくれるなんて。

 きっと父として正しくない部分も多いと思う。理想の父親とはとても言えないと思う。それでも、娘は自分の生き方を肯定してくれているのだ。そう思った。今だけは、父として胸を張っていいと言われた気がした。

「さあ、こっそり戻ってください。適当なタイミングで、カンナちゃんには声をかけておきますから」

 ベルの優しい声に、樽木は「・・・・・・すまないね。ベルくん」と鼻声で答えた。

 樽木は大きな感慨を胸に牛小屋を後にした。樽木は思いをはせた。さあ、カンナが技を披露してくれたとき、なんて言ってあげよう。

「投げ縄、上手くなったな。一生懸命練習したんだな。お前は俺の自慢だよ」そう言ってうんと褒めて、思いっきり頭をがしがし撫でてやろう。そうしよう。

 樽木がそんなことを考えながらキャンピングカーに戻っていると、「ランダルさん! 手伝ってください!」と若い飼育員に大声で呼ばれた。

 見てみると、柵の中で一頭の馬が飼育員の手綱を引っ張って抵抗していた。今にも暴れ出しそうだ。

 樽木は慌てて柵の中に入り、駆け寄る。

「最近、来た馬か?」

「はい。つい先週、入ったところで、まだ慣れてないみたいで」

 そんな馬をなぜこんな人が多い時間に外に出そうとしたんだ、と若い飼育員を叱ってやりたかったが、それどころではない。樽木はできるだけゆっくり馬に近づく。馬は視界の外からの接近に敏感だ。突然の動きも御法度。不意をついて驚かせないように、前方からそろりそろりと歩み寄る。

 馬の側につくと、ゆっくりとその背やたてがみを撫でた。馬は次第に呼吸を落ち着かせる。

 タイミングを見て、樽木はひらりと馬にまたがった。馬は少し抵抗するようにその場を回転したが、樽木が「どうどう」と手綱を引くとやがて落ち着いた。

 注目していた辺りの観光客が拍手を送る。樽木はそれに応えてカウボーイハットを脱いで笑顔を作った。

 その時、背後で「カンナちゃんダメ!」とベルの悲痛な声が響いた。

 振り向くと、カンナが柵を開いて樽木に向かって走ってくるところだった。

 カンナはテンションが上がって、ベルの叫びが聞こえなかったらしく、「パパすごい! 新しいお馬さん? カンナも乗せて!」と笑顔で駆け寄ってくる。

 そして馬の背後に迫る。

「カンナ! 離れろ!」

 樽木がそう叫んだのと、馬が視界の外からの接近に驚いていななき、後ろ足を蹴り出したのはほぼ同時だった。

 凄まじい速度で繰り出された馬の蹄が、カンナの喉に直撃した。

「カンナあああ!」

 カンナの小さいからだが芝生の上に倒れ込む。

 樽木は馬を飛び降りた。地面に背中から衝突する。息が詰まったが、そんな痛みは無視して必死に娘のところに這いずっていく。馬が後ろで暴れているのがわかったが知ったことではなかった。

 カンナは痙攣しながらごぽごぽと口から血の泡を出していた。樽木はその小さい頬を挟んで、娘の名を呼んだ。だが、娘は震えるばかりで焦点も合わない。

樽木は娘の顔を手で挟んだまま、顔を上げ叫んだ。

「誰かあ! 誰か助けてくれえ!」

 ベルを含め、沢山の人間が二人の周りに集まってきた。でも、誰にもどうしようもなかった。

 樽木は何度も叫んだ。誰かに向けて助けを求め、娘の名を叫んだ。それ以外、何も出来なかった。自分はカウボーイなのに。カンナの父親なのに。樽木の顔は歪み、涙と鼻水があふれた。叫びすぎて樽木の喉からも血が出た。それでも父は叫び続けた。

 その声にならない叫びは、救急車のサイレンが牧場に響くまで途絶えることはなかった。





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