表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミュ症異世界生存史  作者: GIN
仮冒険者編
92/120

コミュ症と触手使いは、魔族へ挑む。

「リュウガト言ッタカ……中々ニ良イ生キ様ダッタ」


 そんな事を言いながら、魔族は動かなくなった師匠を地面に転がした。

 俺は涙を零し、体中を振るわせながらも、ゆっくりと動かなくなった師匠へと近づいて行く。


 師匠が死んだ。

 誰よりも優しく、強かった師匠が死んだ。

 大切で、いろんなことを教えてくれた師匠が死んだ。

 まだこれから沢山の事を教えてくれるはずだった師匠が死んだ。


「ああ……あああ…………あああああああ!」


 初めて人の死を目にし、

 初めて大切な人を無くし、

 俺には泣く事しか出来なかった。

 自らの弱さを呪い、師匠の最後を思い、只管に涙を流した。

 

「……悲シイカ?大丈夫ダ、貴方モスグニ同ジ所ヘ送ッテアゲヨウ」


 地面を操りながら近づいてくる魔族に対し、俺は抵抗することも、立ち上がる事も出来ない。

 体に力が入らないし、抵抗する気力もない。

 全てがどうでもよくなっていた。

 

 ……太陽の男に負けてから、強くなろうと覚悟を決め、必死に鍛錬を積んできた。

 師匠に戦い方を学び、様々なモンスターと戦い、一歩ずつ成長してきたはずだった。

 それでも……それでもだめだった。結局、俺はあの時から全然成長できていない。

 一人の敵すら倒せないし、大切な人すら守れない。

 全部無駄だったのかもしれない。


 なんかもう……疲れた。

 もうどうでも良いんだ。

 ここで死ぬのも良いかもな。

 師匠、今俺もそっちに行くよ。


 そう思い、迫りくる魔族に何をすることもなく、ゆっくりと瞼を落とそうとした。

 それと同時だった。突如魔族が何者かに殴り飛ばされた。

 反射的に魔族のいた方を見ると、そこには一人の男が立っていた。


 水色で刈り上げられた髪形をしている、見覚えのある男。

 髪型は変わっていたが、何者かはすぐに理解できた。

 何かと因縁があり、幾度となく拳を交えた、俺の事が嫌いな男。


「……何でここにいるんだ…………ムクゲ」


「……よう、コウキ。相変わらず度胸のなさそうな顔してんな。…………モモさんにここに行って、魔族の足止めをするように言われたんだ。言わば援軍ってやつだよ。……まあ、今は敵じゃないから安心しろ」


「モモさん……校長先生か……なんで……?…………いや、そんな事はどうでもいいや。……もう……全部どうでも……いいや」


 そう、どうでも良い。

 師匠は死んだんだ。

 今更誰が来ようが、何が起ころうが、全てがどうでも良い。


「……なんだそいつは?その出血、死んでるよな。……あー、分かった。魔族にやられて死んだのか。……それでなんだ?お前は死んだのが悲しくて、泣きわめいて、動けなくなってんのか?本当にお前はどうしようもない雑魚だな!」


「……いいよ……もう……」


「はー……イライラさせる奴だな!まあ、あの魔族は俺が倒すから、そこで子供みたいに泣きじゃくって見とけ!俺はそこで死んでる雑魚と違って強いからな!」


「………………は?」


「あ、んだよ?事実だろ?そこの冒険者は魔族に殺されてるんだ。弱いに決まってるだろうが!」


 その言葉を聞き、俺は思わず立ち上がり、ムクゲの胸ぐらを強くつかんだ。

 そして、嘗てないほどの怒りを露わにし、思うがままに言葉を放つ。


「弱くない……師匠は弱くない!強くて、優しくて……凄い人なんだ!魔族だって、倒せる力を持ってたんだよ!……師匠は……師匠は……」


「師匠ねえ……本当にムカつく奴だな!良いか、何を言おうがそいつが死んで、魔族に負けたのは事実なんだよ!泣いたって、何を言ったって、それは変わんねえんだよ!バカかてめえは!……お前がそいつの弟子だって言うなら、よく考えてみろ!その師匠はお前に何を教えた!?お前がいまするべきことは何だ?……そんな事も分かんないのか!」


 そう言い放つと、ムクゲは軽く俺の事を殴り倒した。

 その拳は強く、以前受けた拳の何倍も強かった。


 一体何なんだ。

 急に現れて、どうしようもないようなクズがぶつくさ言ってきて……俺が今するべき事なんて分かる訳ないだろ。

 もう、どうする事も出来ないんだよ。

 何をしようが、何が起ころうが、もう無駄なんだ。

 そう思い、全てを諦めようとした時。

 

 諦めず、前を向け。


「……え?」


 声が聞こえた気がした。

 諦めず、前を向け。

 そう師匠が言ったような気がした。

 勿論師匠は死んだ。声なんて聞こえるはずがない。

 それでも聞こえた気がした。

 

 諦めず、前を向けって……。

 そんなこと言われても俺は……俺は……。

 

「……く……う…………分かった。……分かったよ……師匠。そう言う事なんだな……」


 そう呟きながら、俺は立ち上がった。

 涙を拭い、力強く拳を握り、振り返った。

 

 分からない、分からないけど、何となく分かった気がする。

 俺が今何をするべきなのか、師匠が俺に何をしてほしいのか。

 師匠は俺に何を託したのか。

 

「……なんだよ、そこで泣いてていいんだぞ?」


「……うるせえ。……分かんない……分かんないけど……今ここで泣いて何もしないってのは、絶対に師匠が望んでいたことじゃない。……俺がするべき事じゃない。……だから……戦うんだ」

 

「はー……意味分かんねえな。どうでも良いが、邪魔は済んなよ」


 俺たちがそう話していると、

 右腕を抑えながら様子を見ていた魔族がゆっくりと口を開いた。


「フム……話ハ済ンダカ?……結局、戦ウノカ。私ニハ勝テナイトイウ事ガマダ分カラナイカ」


「…………いや、分かってるよ。……俺じゃお前に勝てない事なんて、分かってる…………けど……けど、やるしかないんだ。……諦めずに、前を向いて、立ち向かうしかないんだ!」


 そう叫びながら、影を操り、シャドウハンマーを形成していく。

 覚悟を決め、シャドウハンマーを構えると、全力で魔族へと駆けていく。

 それと同時に隣にいたムクゲも魔族へと駆け出す。

 その背中からは青い甲羅で覆われた数本の触手が生えている。


「……ムクゲ。……あいつは再生能力を持っている。……だから……だから、再生する間もなく、連続で攻撃を仕掛けるぞ!」


「うるせえ、俺に命令してくるんじゃねえよ!殺すぞ!」


「喧嘩シテイル余裕ガアルノカ?」


 そんな事を言いながら、魔族は地面を動かし、俺たちを殺しにかかる。

 俺たちは地面の動きを見極め、紙一重の所で攻撃を交わしながら、魔族へと迫る。


 今の地面の動き、数分前と比べて格段に遅くなっていた。

 恐らく、傷ついた体を治せないのが初めての事で、動揺し、魔力を上手くコントロール出来ていないのかもしれない。

 それに加えて、師匠が与えたダメージも相当大きいはずだ。

 右手は完全に封じたし、体中に傷が入っているのも見える。

 あの状態から考えて、魔族は今相当弱っている。

 それなら……守りを捨てて、今この瞬間の攻撃に全てを掛ける。


「……いくぞ、魔族!」


 そう叫びながら、全力で魔族を殴り飛ばす。

 魔族は抵抗を試みたようだが、上手くいかなかったのか簡単に殴り飛ばすことが出来た。 

 その様子を確認すると、再び魔族へ近づき、連続攻撃を繰り出す。

 一撃一撃に力を入れ、魔族に抵抗する間を与える事無く、攻撃し続ける。


「ク……怪我ヲシテイルカラト言ッテ、私ヲ倒セルト思ウナヨ!」

 

 魔族は左腕に緑色の光を集めると、俺の横腹へと左腕を動かす。

 しかし、左腕は俺に当たることなく、遠くへ斬り飛ばされてしまった。

 何が起こったのか、左腕があった方を見てみると、そこにはムクゲの触手が伸びていた。


「おいおい、俺を忘れてんじゃねえぞ!どうするよ、魔族。これで両腕無くなっちまったなー!」


「何ヲ勘違イシテイル!右腕ハ治セナクトモ、左腕ヲ治ス事ハデキ……」


「させるわけねえだろ!」


 魔族は自らの腕を再生させようとするが、その時間を与える事無く、ムクゲは連続攻撃を開始した。 

 それに負ける事無く、俺も攻撃をし続ける。

 叫びながら、魔族に何もさせる事無く、永遠と攻撃を続ける。

 ここまでの連続攻撃に、普通なら相手は何も出来ず、諦めるしかない。

 しかし、相手は魔族だ。

 当然、このまま防戦一方のままでいる訳がなかった。

 魔族は俺たちの隙を突き、俺たちと魔族との間に一枚の壁を作り上げた。

 すぐさまその壁を破壊するが、破壊すると同時に次の壁が作り上げられていく。

 

 これはまずい。

 このまま壁を作られ続ければ、すぐに回復され、形勢逆転してしまう。

 何とか壁を破壊し、魔族に攻撃を喰らわせないといけないが、どうする?

 何かいい手は……。


「おい、コウキ!一度だけ聞く、お前は何か強力な必殺技を持ってるか?あの魔族を怯ませるような、一撃を持ってるか!?」


「……え…………必殺技かは分からないけど、強い一撃を出すことは出来る」


「分かった!……今回は仕方がねえから、魔族に攻撃を与える役目を、お前にやらせてやるよ!俺が壁を破壊する。お前は魔族に攻撃を仕掛けろ!分かったな!」


「……は?…………分かった」


 そう答えたのを確認すると、ムクゲは甲羅で覆われた触手を一か所に集めて行く。

 触手は一本一本が絡み合って行き、少しずつ粘土の様にくっつき始めた。

 数秒立つ頃には、巨大な一本の甲羅で覆われた頑丈な触手へと姿を変えた。


「どうだ、これは俺の最強の技!最強の火力と、最強の防御力と、最強のスピードを持つ、最強の触手だ!……コウキ、今から壁を破壊する、行くぞ!」


 ムクゲはそう言うと、触手を一気に引き始めた。

 それを見ながら、俺も構えを始める。

 左足を前に出し、右足を少しずつ引く。

 それと同時にハンマーに角度をつけ、両手で握りしめる。

 師匠から教わった、高火力を出すのに適した構え。

 これで……魔族を倒す!


「いくぜ!テネコルスマッシュズ!」


 そう叫ぶと同時に、ムクゲは巨大な触手で連続攻撃を放った。

 高火力を持つ触手が放つ連続攻撃に、地面で出来た壁が耐えきれるはずもなく、壁はすぐさま壊されていく。

 壁は瞬時に復活しようとするが、復活する直前に触手の攻撃を受け、破壊されていく。

 そうなると、当然魔族を守っていた壁はなくなり、魔族を守るものは何もなくなった。

 俺は左足に力を入れ、全力でハンマーを振りながら叫ぶ。


「……俺たちの……俺たちの力を喰らえ!シャドウハンマー!」


 出せる力全てを使い放った一撃は魔族へ直撃し、魔族を一気に殴り飛ばした。

全てをのせた一撃が魔族へ炸裂する。


何故ムクゲがここに居るのか、詳しい説明は数話お待ちを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ