自分は受かったのに、友達は試験に落ちた時、どんな反応をすればいいのだろうか。①
まじで、友達だけ落ちたときは、反応に困るよね
あまりの嬉しさに、数秒間叫んだ後、ようやくその状況に気づいた。
静まり返っている戦闘場の中心で、一人で叫び、全志望者に注目されている状況に。
冷静になって、あまりの恥ずかしさに、俺は顔を隠して、ひっそりと近くの木陰へと歩いて行った。
……恥っっっっっっっっず!
勝ったことと、初めて自分を変えられた嬉しさに、思わず叫んでしまったが、めちゃくちゃ恥ずかしい。
みんなして俺の事見てたよ、やばいよ、恥ずかしいよ。
絶対みんな俺の事やばい奴だと思ってるよ、最悪よ。
あー、冷静になればなるほど、恥ずかしく思えてくる。
俺よ、なんであんなことしちゃったんだよ……。
しかし、勝ったのか。
一時は絶対に勝てないとまで思っていたのに、勝てたのか。
人間本気を出せば、諦めなければ、案外何でもできるのかもしれないな。
そんなことを思っている時だ。
目の前から、聞き覚えのある、声がしてきた。
「合格おめでとう、コウキくん!やったね!」
「あ、ユリさん!ユリさんさんこそ、合格……おめでとう」
「ありがと、それにしてもすごかったよ、最後の一撃!急に後ろに走ったと思ったら、すっごく大きなハンマーを出してさ、それで一撃だもん!」
「いやいや……そんなことないよ。…………ユリさん、ありがとうね、ユリさんが応援してくれたおかげで、諦めずに戦うことができたんだ。…………ありがとう」
「私は何にもしてないよ、ただ応援してただけ、勝てたのはコウキくん自身の力だよ、自信をもって!そうだ、二人とも合格したわけなんだし、これから一年間、改めてよろしくね!」
「こちらこそよろしく」
と、二人で話していると、横から一人の女が入ってきた。
「あのー、うちは無視ですか?」
その女は、綺麗な金髪の短い髪で、腰には小さなバックを身に着けている。
ユリと似たような冒険者のような服装をしていて、茶色のマントを身に着けている。
それでもってユリと同じくらいの美少女だ。
この世界の顔面偏差値はどうなっているのだろうか。
みんな可愛すぎる。
「ごめんごめん、今紹介するよ。コウキくん、彼女はカンナ。私の古くからの友達です!」
「どうも、カンナです!よく使う武器は素手、共感できる言葉は永遠ほど怖いものはない、性癖はドMで、いじめられると興奮しちゃうタイプです!ぜひいじめてね、ちなみに彼氏募集中だから、程よくドSの男友達がいたら、紹介よろしく!」
「え、あ、はい……光輝です。よろしくお願い……します」
情報量が多すぎる。
共感できる言葉って、普通好きな言葉とかじゃないのか。
それに、性癖がドMとか言ってたな。
ドMなのか……なるほどね?
しかし、凄い個性的な人だな。
初対面で自分の性癖を暴露してくる人なんて、初めて会ったぞ。
しかも女子だもんな……。
そんなことを考えていると、ユリが間に入ってくる。
「これ、カンナ!初対面で自分の性癖を言うのはやめなって言ってるでしょうが!恥ずかしいと思わないの?」
「ふっふっふっ……うちはその恥ずかしさも興奮してしまうのだよ!そして、今こうやってユリっちに注意されているのも興奮する!だから絶対にやめない!」
「はあ……これでも、根は凄く良い子だから、仲良くしてくれないかな」
「え、うん、もちろんだよ」
この世界は前世に比べて良い人だらけだったから、勝手に前世よりもまともで、素晴らしい人しかいないと思っていた。
しかし、現実は違ったようだ。どの世界にも少しやばい奴はいるようだな。
あ、そういえば……。
「えっと……一つ聞いてもいいかな…………アリウムって志望者……見なかったかな?」
一応初めてこの世界で出来た友達、アリウム。
俺が戦闘場に移動している時には、既に準備会場にアリウムの姿はなかった。
おそらくだが、俺より先に試験を受けたのだろう。
俺より先に合格したユリたちなら、その結果を知っているはずだ。
まあ、ベテランと言っていたし、合格したに決まっているけどな。
「アリウム……アリウム……私は覚えてないな。カンナは覚えてる?」
ユリにそう言われ、カンナは考えるような仕草をしながら答えた。
「ちょっと待ってね、今思い出してみる!えーっと……アリウム……アリウム……あ、確かいた!一瞬戦ってるの見たよ!」
「え、本当ですか!……えっと、アリウムが受かったかどうかって……分かります……か?」
「分かるよ、そのアリウムって人はね……即不合格になってたよ」
「…………え」
不合格って聞こえたような気がしたが、気のせいだよな。
うん、きっと聞き間違いだな。さっきの戦いで疲れて過ぎて、聞き間違えたんだ。
そうに決まってる。
「えっと、もう一回言ってもらっていいですか?…………聞き取れなくて」
「その人は相手に瞬殺されて、即不合格になってたよ」
……聞き間違いじゃなかったのか。
まじかよ、アリウム落ちたのか。ベテランって言ってたのに、落ちたのか。
一緒に受かるって約束したのに落ちちゃったのか。
悲しいな。そして、反応に困るな。
会って十数分しか立ってないけど、右も左も分からなかった俺に、いろんなことを教えてくれて、この世界で初めての友達になってくれた。
二人とも合格して、一緒に前世では経験できなかった、楽しすぎる学園生活を送れると思ってたのにな……。
いろいろありがとう、アリウム。
安らかに眠れ(死んではいません)。
ずっと黙って考えていると、心配そうな顔をして、ユリが話しかけてきた。
「えっと、ずっと黙ってるけど大丈夫?もしかして、アリウムって人が友達だったりした?」
「あ、友達で……落ちてたのに驚いてただけだから、大丈夫」
「そっかー、友達だったのか、それは残念だったね……。まあ、試験は毎年あるんだし、きっと次の試験で合格して、学園に入ってくるよ!」
「そうだね、そう信じて……待ってることにするよ」
と、俺たちが軽く話していた時。
一つの試合が終わったと同時に、試験官は戦闘場の中心に立ち、ゆっくりと話し始めた。
「現時刻を持ちまして、今年度の入学試験を終了します!合格した皆様はおめでとうございます!これから入学に伴って、資料を配布いたしますので、一人一部お取りください!」
そう言い終わると、どこからともなく戦闘場の上から、両手で抱えられるほどの大きさの、シャボン玉が降ってきた。
近くに落ちてきたシャボン玉に触れると、シャボン玉は割れ、中から数枚のプリントと、一枚のカードが出てきた。
プリントには入学おめでとう!という文字と、良く分からないが説明のような分が書いてあり、カードには生徒証明書と書かれていた。
生徒証明書という名前からして、生徒手帳と同じような物だろうか。
「今配布した資料は、入学する上での注意事項や、必要な道具などが書かれている。各自確認しておくように!生徒証明書は本学の生徒であることを証明する物であり、それを持っていることにより、普通では入れないところに入れたり、各所で特別優遇を受けることができる。他にも通行証明書の代わりになったりと、様々な事に使えるが、紛失した場合は、再発行などは行わないため、注意するように!」
通行証明書の代わりになるのか!
本当にこんなに早くに、目標にしていた証明書を手に入れられるなんて……第二の人生、最高のスタートだな。
しかし、なくしたらもう手に入らないらしいし、なくさないように気を付ける必要もありそうだ。
「さて、質問がある者はいるか?……ないのなら今日はこれで解散とする!資料にある日時に、遅刻せずに登校するように!」
それだけ告げると、試験官は校内へと入って行った。
「いやー、うちらホントに合格できたんだね!今更になってやっと実感してきたよー。さて、二人はこれからどうするん?何かやらないといけない事でもあるの?」
「私は特にはないかな。コウキくんは?」
「あ、俺はこの街についていろいろと調べたり……泊まる所を見つけたり……しないといけないんです」
この世界については何となく分かってきたが、この街については知らないことだらけだしな。
それに、とりあえずは泊まれるところを探さないと、生活すらできないからな。
「ふーん、なんか大変そうだね。泊まる所を見つけたりって、もしかして外から来た人なの?」
「え、あ、うん。……結構遠い所から来てさ。まだ、泊まる所とかも決まってないんだ」
「あ、それじゃあ、私の泊まってるところを紹介しようか?私も外から学園に入るために来たんだけど、優しい人に泊めてもらっててね、宿代が払えないときは、手伝いをすれば宿代を無料にしてくれたり、いろいろと融通も気かせてくれる、良いところなんだ」
「え、手伝いで宿代をなくしてくれるんですか!あの、それなら紹介お願いしてもいいですか?」
宿代をなくしてくれるというのが本当なら、最高な宿だ。
今更だが、俺はこの世界の金を一円も持っていない。
ゲームとかなら、最初の所持金として、装備を買えるくらいの金を持たせてもらえるのだろうが。
現実はそんなこともなく、物で言えば服しか渡されなかった。
そのため、まとまった金が手に入るまで、宿代を見逃してくれるような、良い宿があればいいと思っていたのだ。
そんな時に、手伝いで宿代をなくしてくれる宿の話が来たら、受ける以外に選択肢が見つからない。
「それじゃあ、コウキくんの事を紹介するよ!あ、どうせならこの後、その宿に来ない?上手く話が進めば今日から泊まれるかもしれないし!それに、少しならこの街についても説明してあげられるよ」
「え、いいんですか?」
「もちろん、だって友達じゃない!」
「そ、それじゃあ、お願いします」
そう答えると、ユリは俺の手を取り、歩き始めた。
「そうと決まれば、時間も時間だし、早く行こう!」
ユリに引っ張られつつ、俺は疲れた体を頑張って動かし、歩き始める。
その様子を見ていたカンナは、荷物をカバンにしまうと、俺たちの後を追ってくる。
「ユリにコウキ待ってってー!うちも行くよー!」




