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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
仮冒険者編
88/120

コミュ症は初めて魔族と対峙する。②

「嘘……だろ……」


 俺は思わず、そう言葉を零した。

 その時、俺たちの目の前にはボロボロの姿になり、至る所に倒れている冒険者たちの姿があった。

 急いで冒険者の元へ近づき、起こそうとするが起きる気配は全くない。

 息はしているようだが、傷から察するに、危険な状態だ。


 一体ここで何があったのだろう。 

 師匠に言われた通り、西側の出口に到着すると、出口の至る所に冒険者が倒れていた。

 全員が重傷を負っており、立っている者は一人もいない。

 モンスターがいる気配はないし、モンスターの死体すらない。

 あるのは地面とは思えないほどにいびつな形へと変化した地面と、ボロボロの冒険者のみ。

 もしかしたら、冒険者たちを倒したモンスターは既に町に侵入し、暴れまわっているのかもしれない。


「……何が起こったのかは分からないけど、一先ずリュウガさんに連絡を入れよう。冒険者が全員やられたことと、冒険者を倒した敵が見当たらない事。とりあえずこれだけ伝えに行こう」


「そうだな、ユリ。とりあえずリュウガさんから預かってる連絡用の道具で……あ!おい、みんな見てみろよ!あそこに一人だけ無事そうな人がいるぞ!」


 アリウムの指さす方を見ると、確かに人影が一つ見える。

 砂埃で良く見えないが、大体のシルエットから女性の冒険者だろうか。

 俺たちは一人立っている冒険者の元へと同時に駆け出した。

 が、数秒後。俺たちは同時に足を止める事となる。

 

 その理由は、人影の主が見知った顔だったからだ。

 真っ黒でボロボロなローブを身にまとい、裸足で、綺麗な白髪をしている女性。

 そう、そこにいたのは数日前のダンジョン攻略で俺たちを助けてくれた、強力な力を持つ女性だったのだ。


 あれからお礼をしたくて探していた相手との、突然の再会。

 普通は喜び、一斉に女性へ寄っていくのだろう。

 しかし、俺たちは誰一人そうしなかった。

 何故なら、女性の額から一本の角が生えていたからだ。


 一度、魔防学園の授業で教わったことがある。

 俺たち冒険者が戦わなければならない魔族は人間と似ている者から、化け物のような見た目の者まで様々らしい。

 しかし、全ての魔族に共通するものがある。

 それは額から角が生えているという点だ。

 本数や見た目は様々だが、どんな魔族にも必ず生えており、魔族の一番の特徴と言える。


 そして、そんな角があの女性から生えているのだ。

 全く理解が追い付かない。 

 魔族はこの世界とは別次元に生息し、この世界を征服するため、時々この世界に侵略を行う強生物だと聞いている。

 俺たちを助けてくれた女性がそんな生物?


 ……いや、何かの間違いだ。

 恐らく、女性の生呪の力に関わっている何かだろう。

 それか獣人の様な特殊な種族なんだ。

 そうだ。きっとそうに違いない。

 自らにそう言い聞かせながら、恐る恐る疑問を口に出す。


「えっと……その……お、お、覚えてます……か?あの……ダンジョンで助けて貰った……仮冒険者なんですけど……」


「貴方タチハ……エエ、覚エテイル。……アア、ソウダッタノ。貴方タチハココノ冒険者ダッタノ。生物ノ運命トハヤハリ残酷ナモノネ」


「えっと、覚えててくれたんですか。……それで、その……その角って、生呪の力の……何かですか?……そ、それとも、そう言う種族だから生えてるんですか?」


「コノ角ネ。コレハ私ガ魔族ダカラ生エテイルニ決マッテル。……モウ少シ利口ダト

思ッテイタノダガ、ソレモ分カラナイノ?」


 女性はいともたやすくそう言うと、小さくため息の様な物を吐いた。

 魔族だから生えている。簡単に魔族であることを認めてしまった。

 あまりの呆気なさに、驚く事すら出来ない。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!冗談ですよね?だって、魔族だったらダンジョンで私たちを助けるはずないじゃないですか!」


「アノ時ハコノ世界ニ来タバカリッダッタ。ダカラ、少シデモ情報ガ欲シクテネ。情報ヲ得ルタメニ助ケタダケヨ。信ジラレナイノナラ、状況ヲ良ク見ナサイ。ソコノ冒険者ヲ倒シタノハ私ダ。ソシテ、コノ町ニモンスターヲ放ッタノモ私ダ」


「……え」


 冒険者を倒したのは何となく察しはついていた。

 しかし、モンスターを放ったのも女性だったとは。

 だが、一体どうやってモンスターを操ったのだろうか。

 いくら魔族でも、モンスターを操る事なんて出来ないはず。

 何か特殊な力を使ったのか?


 そもそもとして、一体どんな目的でこの町を襲ったのだろうか。

 世界を侵略するためだったら、もっと大きな街を襲うはずだ。

 一体全体何のためにこんな小さな町を襲っているんだ。

 俺の考えが顔に出ていたのか、女性はゆっくりと口を開いた。


「分カラナイダロウカラ言ッテオク。コノ町ヲ襲ッテイルノハ侵略ノタメデハナイ。私ガコノ町ヲ襲ッテイルノハ、生キル意味ヲ見ツケルタメ」


「え、生きる意味?」


「私ニハ、何故生物ガ生キテイルノカガ分カル。シカシ、何故生物ガ生キテイルノカ理解ガ出来ナイ。ダカラ、人ガ最モ本音ヲ話セル瞬間。即チ、死ノ直前ニ生キル意味ヲ問イ、生キル意味ヲ探シテイル」


「いや、意味が分からないですよ!なんで生きてるか分かってるって言ったり、分からないって言ったり!何もしてない人を殺して、死ぬ直前に生きる意味を聞くとか……全く分からないですよ!」


「……自ラノ生キル理由ヲ持チ、タダノ人間デアル貴方ニハ分カラナイダロウナ。……マア、良イサ。貴方タチガ何ヲ言オウガ、私ハコノ町ヲ襲ウノヲヤメナイ。……ソシテ、ココデ出会ッタカラニハ、貴方タチモ殺ス。ソレガ貴方タチノ生ノ運命ナノダカラ」


 そう言うと、女性はローブを脱ぎ捨てた。

 そして、悲しそうな顔をしながら右手をゆっくりと上げていく。

 それと同時に、女性の背後の地面が突如として盛り上がり、粘土の様に自由自在に動き始めた。

 ダンジョンで見た、地面を動かしていた力と同じ力だろう。


 女性側はやる気満々のようだ。

 こうなったからには逃げる事は出来ない。

 かと言って、戦う事もしたくない。


 途轍もなく強いであろう魔族だからというのもあるが、戦いたくない一番の理由は恩人だからだ。

 女性が助けてくれなければ、俺たちはあのダンジョンで死んでいたかもしれない。

 いや、女性が居なければ間違いなく全滅し、ダンジョンの奥底で息絶えていた。

 そんな命の恩人の女性と命をかけて戦う事は出来ない。

 他のみんなも同じ考えなのか、誰一人として、動こうとしない。


 しばらく俺たちの中に沈黙が続いていると、 

 カンナがゆっくりとその沈黙を破った。


「みんな……やろう。ここで戦わないと、そこに倒れてる冒険者だって危ないかもしれないし、町の人たちも危ない目に合うかもしれない。相手は魔族だし、うちらを助けてくれた人だよ。……だけど、やらなきゃいけない。とりあえず、何とかあの人を捕まえて、それからゆっくり話をしよう!」


「……うん、そうだね。ハッキリ言って勝ち目は薄い。だけど、逃げられるわけがないし、戦う以外の選択肢はないもんね。みんな、やろう!」


 カンナとユリの言葉に促されながらも、俺たちは落ち着いて、覚悟を決める。

 一先ず、あの女性を倒すんじゃなくて、捕まえる。

 そして、その後でしっかりと話をしよう。

 相手は魔族だ。俺たちより強いのは確実だ。

 それでも、やるしかない。少なくとも、今の俺たちにはそれしか選択肢が思い浮かばない。


 影と呟き、生呪の力を発動させる。

 シャドウメイルを身に着け、影で出来たノコギリを握りしめる。


「ヨウヤク、覚悟ガ決マッタカ。ソレデハ見セテクレ。貴方タチノ生キル意味ヲ。……行クゾ!私ハ『生』ヲ司ル魔族!生ノ力ヲ思イ知ルガ良イ!」


 そう叫び、向かってくる女性に対し、俺たちは武器を構える。

 今、戦いの火ぶたが切って落とされた。

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