コミュ症たちは、初めてダンジョンボスと戦う。②
「それにしても、本当に凄かったです!まさかガスケルトンを一瞬で倒しちゃうなんて!」
「中級冒険者なら、誰でもできるよ。お前らだって、少し経てばそれくらい強くなれるさ!」
師匠はああ言っているが、中級冒険者でもあそこまでは強くないだろう。
依頼をこなす際中、何度か他の冒険者の戦いを見てきたが、ガスケルトンを一瞬で倒せるような冒険者はほとんどいなかったはずだ。
師匠は、他の冒険者とは少し違う気がする。
一体師匠はどうしてそこまで強いんだろうか。
「……コウキ 一つ 良い?」
「え、あ、うん。……ど、どうしたのキキョウさん」
「ワタシは親に捨てられた それも小さい頃」
「……え?」
突然の告白に、思わず声を漏らしてしまった。
親に捨てられたって、急すぎるだろ。
今はダンジョン攻略の最中だぞ。
そんな状況で、何を言い出すかと思えば、想定外の話すぎる。
いや、というか、俺に何でそんな事を言うんだ。
そこまで仲良く話した事もないし。
出会ってから数日間しか立っていない。
そんな俺に、どうしてそんな重い話を切り出してくるんだ。
「ワタシはとあるおばさんに拾われた 孤児院をしているおばさんだった ワタシは孤児院に入った」
「そ、そうだったんだ。……そ、それは何と言うか……大変だっ……」
「それから数年後 孤児院は燃えた 孤児院は跡形もなく消えた」
「……え。それは……何と言うか……」
「そんな時だった」
……いや、俺の話聞いてくれる?
こう見えて、突然の重い話に戸惑いながら、言葉を上手く選んで何とか励まそうとしてるんだよ。
それを無視して話を続けないでくれよ。
意外と精神ダメージ凄いんだぞ。
「途方に暮れていたワタシの前 師匠が突然現れた」
「え、師匠が……」
「師匠はワタシを家族と言ってくれた それからワタシに戦い方を教えてくれた 人との接し方を教えてくれた 生き方を教えてくれた」
「そうだったんだ……」
師匠とキキョウの話す様子からして、ただの師弟の関係だけではないと感じてはいた。
しかし、まさか実質的な家族だったとは。
それなら、キキョウがあそこまで師匠を尊敬しているのにも納得だ。
師匠は良い人だとは思っていたが、想像以上だ。
一人だった自らを拾い、家族として招き入れ、生き方を教える。
文字通り命を救ってくれたようなものだ。
普通なら、見知らぬ子供にそんなことは出来ない。
途轍もなく強いだけでなく、信じられないほど優しい心を持っている。
「あれ、けど……どうしてそんな話を俺に?」
「……師匠はワタシの家族 ワタシは師匠の一番弟子 一番師匠が大切なのはワタシ いくらコウキが凄くても それは変わらない ワタシは師匠の一番弟子 分かった?」
「あー……えっと……もしかして、俺が弟子になって、師匠と少し仲良くしてたのを嫉妬した……ってこと?」
俺が尋ねると、キキョウはそっぽを向き、黙り込んでしまった。
どうやら、俺の考えは当たっていたようだ。
突然現れた俺が師匠と仲良くなり、弟子となった。
その様子を見て、俺に嫉妬をしてしまったのだろう。
もしくは、大切な師匠が取られると勘違いしてしまったのだろう。
師匠の一番弟子は自分で、一番大切にしてもらっているのは自分であると言って、自分の方が上だと優位関係をハッキリさせたかったのだと思う。
何と言うか……可愛いかよ。
心配しなくとも師匠は取らないし、師匠もキキョウを一番大切に思っているに決まっている。
ああ見えて、キキョウは意外と子供っぽい?のかもしれないな。
そんな事を考えている時。
先頭を歩いていたカンナが突如足を止めた。
どうしたのかと前方に目をやると、そこには禍々しい雰囲気を放つ巨大な扉があった。
扉には巨大な竜の様な物が描かれており、どこか神秘的にも見える。
「……これは一体?」
「これは……恐らくだが、これはボス部屋だな」
「ボス部屋?」
「ああ、お前らも知っての通り、ダンジョンはモンスターが住処にしている所を指す。今回の場合、大昔の人が作った建造物にモンスターが集まって来た感じだな。そんなモンスターの中にも、上下関係が存在してな。ダンジョンの中で最も強いモンスターはボスモンスターと呼ばれ、ダンジョン内で最も権力を得るんだ。モンスターが付近にいないのと、部屋の大きさから考えるに、ここにそのボスがいる部屋だろう」
なるほど。
ダンジョンに集まったモンスターの中で、最も強いモンスターがいる部屋という訳か。
ダンジョンの中で最も強いという事は、それなりの強さを持っているはずだ。
準備をせず、真正面から挑めば、返り討ちに会う可能性が高そうだ。
今回は一度帰り、準備を整えてから挑戦した方が良さそうだが……。
ハッキリ言って行きたい。
だって、ボスだぞ。ボス部屋だぞ
ゲームで言うボスが待っている部屋だぞ。
落ち着くべきだと分かってはいるが、ワクワクし過ぎて、落ち着くことが出来ない。
見るだけでも良いから、一度部屋に入ってみたい。
「……さて、俺は今すぐ入ることはお勧めできないな。ボスモンスターは基本的に強力だし、準備を整えてから行くべきだとは思う。けどまあ、どうするかはお前らに任せるぞ。今回の攻略の中心はお前らだからな。どうしようが、俺はついて行くから安心しろ!」
「んー……危険だし、行かない方が良いんだとは思う。だけど……だけどうちは行ってみたいな!だってワクワクするし!楽しそうだし!」
「……私も今回はカンナさんに賛成。いい経験になるだろうし、もし危険な目にあっても、リュウガさんがいるなら、大丈夫だろうし」
グリシアがカンナに賛成すると、アリウムもすぐさま二人に賛成した。
もちろん俺も賛成し、残すはユリのみとなった。
ユリは少し考えたのち、自分の実力を試してみたいとのことで、賛成した。
これで、全員の意見が一致した。
「まあ、いい経験になるだろうしな。もしもの時は俺が居るから、心配すんな!お前ら、頑張れよ!」
俺たちは同時に頷くと、それぞれ戦闘準備を整え始める。
俺はベルトとローブの状態を確認すると、部屋が暗いことを考慮し、石球電気を発動しておく。
そして、以前マリーから貰ったパワーキャンディーを一つ口に含むと、一度落ち着き、覚悟を決めた。
全員の準備が終わった事を確認すると、カンナはみんなの前に立ち、大きく口を開いた。
「よーし、みんな準備は整ったみたいだね!それじゃあ……ボス部屋攻略開始ー!」
カンナはそう叫びながら、大きく扉を開いた。
部屋で待ち受けるボスとは一体!?




