コミュ症たちは、初めてダンジョンボスと戦う。①
「よーし、それじゃあ、ダンジョン攻略二日目……開始ー!」
カンナの掛け声と同時に、俺たちは二日目のダンジョン攻略を開始した。
昨日と同じ荷物を持ち、昨日と同じ道筋をたどり、昨日と同じようにダンジョンを進んで行く。
ほとんどが昨日と同じだが、一つだけ違う点がある。
それは、昨日と違い二人仲間が増えているという点だ。
俺たちは昨日の失敗を考慮し、知識がある冒険者を助っ人して呼ぶことにした。
知識があり、強く、俺たちの話を聞いてくれる。
全てに当てはまっている冒険者。
そう、リュウガさんを、師匠を呼ぶことに決めたのだ。
優しい師匠はすぐに俺たちの願いを聞き留め、キキョウと一緒にダンジョン攻略に同行してくれることとなったのだ。
昨日のダンジョン攻略もよかったが、今日は今日で安心して良い。
昨日の様な罠があっても、師匠が居れば最悪の事態に陥ることはないだろうし、もしもの時は助けてくれるだろうしな。
そんな事を考えながら進んでいると、いつの間にか昨日罠に引っかかった場所に到着した。
よく見てみると、崩れ落ちたはずの床は治り、罠だった宝箱も元通りになっている。
これも制作者の生呪の力なのだろうか。
「昨日はあの宝箱に引っかかったからな。今度は開けずに進んで行くか」
「そうだね、今日は絶体に罠には引っかからないぞ!……あ、そう言えばさ、結局昨日のお姉さんはいったい何者だったんだろうね」
「あー、お前らを助けてくれたっていう地面を操る人の事か?」
昨日のお姉さんか。
あの後、何やかんやで結局気になって、師匠やギルドの人たちにそれとなく、女性の事を知らないか質問してみた。
しかし、誰に聞いても見たことない、聞いたことないとしか答えてもらえなかった。
あれだけ凄い生呪の力を持っているんだし、有名人だと思っていたが、そうでもなかったようだ。
結局の所、あの女性はいったい何者だったのだろうか。
「お前らからその女性の事を調べてみたんだがな、どれだけ調べてもその女性の事は出てこなかったんだ。それだけ強いなら、俺たちが知らないわけないし、恐らくはいろんな町を転々としている冒険者だと思うぜ。それならその強さも、俺たちが知らないってのも納得だからな!」
「旅をする冒険者ですか。確かにそれなら、全てに納得がいきますね。だけど、もう一回くらいは会いたいな。昨日はいきなりすぎてちゃんとお礼も出来なかったし」
「まあ、お前らが冒険者として、立派に仕事をこなして有名になれば、いつかはきっと出会えるさ。世界ってのはそうできてるからな!」
「……そうですね。冒険者として頑張っていれば、きっとまた出会えますよね!」
また出会えたらいいな。
いろいろと聞きたいことだってあるし、お礼だってまだだしな。
まあ、きっとまた出会えるよな!
「おっと、そんなことを話していたら、モンスターのお出ましみたいだ!」
そう言う師匠の視線の先を見ると、数体のガスケルトンが俺たちへ近づいて来てるのが見えた。
ガスケルトンは警戒しながらも、一歩ずつ俺たちへと近づいている。
その様子を見るに、俺たちと戦う気みたいだ。
一度顔を見合わせると、俺たちも武器を取り出し、戦闘態勢へと入る。
昨日倒したとはいえ、モンスターはモンスター。
警戒して、確実に戦わなければならない。
影でハンマーを作り出し、いつでも攻撃を繰り出せるよう、姿勢を取る。
そんな時だった。
「あ、お前らちょっと待て!ここは俺にやらせてくれないか?」
「良いですけど、どうしたんですか?」
「いやよ、よく考えたら俺はお前らの前でちゃんと戦った事がなかったと思ってよ。もしもの時のための助っ人なんだろ。それなら、俺の実力も知っといた方が何かと安心するだろ」
「確かにそうですね。……それなら、よろしくお願いします!」
そう言うと、ユリは剣を鞘にしまい、戦闘態勢を解いた。
それに続いて、俺たちも武器をしまって行く。
逆に師匠は大きめのハンマーを取り出し、戦闘態勢へと入る。
その表情は真剣そのもので、見ているだけの俺たちにも緊張が走る。
師匠の戦闘。
よくよく考えたら、俺たちはしっかり見たことはないんだよな。
強いのは知っているし、鍛錬で戦い方も何となくは理解できた。
しかし、戦闘に関しては一度も見たことがないし、モンスターとはどんな風に戦うのかも知らない。
一体どんな戦闘を行うのか、気になってくる。
そう考えていると、すぐに戦闘は始まった。
ガスケルトンたちは一斉に剣を掲げ、師匠へと駆け出した。
師匠はそれに動じることなく、落ち着きながら動き始めた。
左足を前に出し、右足を少しずつ引く。
それと同時にハンマーに角度をつけ、両手で握りしめる。
その動きを終える頃には、ガスケルトンたちは師匠の目の前まで迫り、剣を振り下ろそうとしていた。
そして、ガスケルトンの剣が振り下ろされた直後。
師匠の左足に力が入ったかと思うと、爆音と爆風とともに、ガスケルトンたちが一瞬で消え去った。
よく見てみると、師匠の姿勢が変わっており、数秒前まで構えていたハンマーは既に振り切っているように見える。
まさかと思い、師匠の前方をよく見てみると、そこには至る所に骸骨の骨が散らばり、所々に古びた武器の様な物が落ちていた。
そこで、俺たちはようやく理解できた。
師匠はガスケルトンの攻撃が当たる直前、ハンマーを振ったのだ。
俺たちが目で追えないほどの速度でハンマーを振り、一瞬にして全てのガスケルトンを倒したのだ。
「よし、終わったな!どうだお前ら、これで少しは俺の実力を分かってもらえたかな?」
「いや……分かったも何も……す、す、す、凄すぎます!」
「コウキの言う通りですよ!なんか凄い音が鳴ったと思ったら、一瞬でガスケルトンが倒れてて、なんかもう……凄かったです!」
「そうか?まあ、これで少しは安心できただろ!先を急ごうぜ!」
『はい!』
俺たちは全員でそう答えると、数分前と同じようにダンジョン攻略を再開した。




